2024年9月26日(木)号

ジェトロ・バンコク事務所=設立70周年記念式典

 日本貿易振興機構(ジェトロ)のバンコク事務所が設立70周年を迎えた。9月24日に開いた記念式典には石黒憲彦理事長、大鷹正人・駐タイ日本大使、ピチャイ・ナリプッタパン商業相、ピパット・ラチャキットプラカン労相、チャッチャート・シティパン都知事が出席した。ピチャイ商業相は石黒理事長と会談し、プリント基板(PCB)や半導体分野での投資誘致で協力を求めた。

左から黒田バンコク事務所長、チャッチャート都知事、石黒理事長、ピチャイ商業相、ピパット労相、大鷹大使


 石黒理事長によれば、バンコク事務所は1954年10月に設立された2番目に古い海外事務所。70年にわたって日本とタイのビジネス、貿易・投資関係の強化に貢献してきた。記念式典の開催にあたり、過去の成功を祝うだけでなく、将来への基礎を築くことも重要だと指摘し、企業が直面している問題や課題を解決するため日タイの連携を強化していきたいと語った。
 黒田淳一郎バンコク事務所長によれば、日タイの投資分野協力は、温室効果ガス削減技術、食品、バイオ、健康、ウェルネス、宇宙技術関連産業などのポテンシャルを秘めた新産業に加え、すでに投資が多くなされている自動車部品や電子部品などの既存産業への投資拡大に焦点を当てる方向性が見えている。新たな投資を呼び込む、または企業が投資を拡張する重要な要因はタイ経済の成長だと指摘した。経済成長率が低いままでは投資に障害になるとし、日本企業の多くはタイ経済が2%を超える成長率で着実に拡大すると見ていることを明らかにした。
 日系企業は投資を円滑に進めることができるよう、タイ政府に対しサービス業における外国人事業に対する規制緩和、通関手続きの改善、物流インフラの開発などを求めている。
 ピチャイ商業相はジェトロ・バンコク事務所がタイと日本の貿易・投資関係の強化に尽力し、タイの経済と社会の発展に貢献してきたことを称えた。タイ国民にとって長年の友人のような存在だと述べた。石黒理事長との会談では、特にプリント基板産業で日本企業の投資を呼びかけた。将来性がある産業で、タイにポテンシャルがあることから日本企業の投資を誘致したい意向を伝えた。

8月の物品輸出は7.0%増=農産物/アグロが牽引

 商業省が9月26日に発表した8月の物品輸出額は261億8230万㌦で、前年同月比7.0%増となった。プラス成長は2か月連続。石油・金地金・武器を除いた輸出額は6.6%増。プーンポン・ナイヤナパコン商業政策戦略事務局長[=写真]によれば、特に農産物/アグロインダストリーの輸出が大幅増となった。工業製品の輸出も順調に拡大している。1~8月の輸出額は前年同期比4.2%増で、石油・金地金・武器を除けば4.3%増となった。
 8月の物品輸入額は259億1740万㌦で、前年同月比8.9%増。貿易収支は2億6490万㌦の黒字となった。1~8月合計の輸出額は1971億9280万㌦で、前年同期比4.2%増、輸入額は2035億4380万㌦で、同5.0%増だった。貿易収支は63億5100万㌦の赤字。
 8月の農産物/アグロインダストリー製品の輸出額は17.4%増。2か月連続で増加した。農産物は17.5%増、アグロインダストリー製品は17.1%増だった。
 生鮮・冷蔵・冷凍・乾燥野菜は1.0%増で、3か月ぶりに増加に転じた。ベトナム、インドネシア、米国、韓国、日本向けが伸びた。米の輸出は46.6%増で、プラス成長は3か月連続となった。イラク、米国、南アフリカ、ベニン、セネガル向けが増加した。
 天然ゴムの輸出額は64.8%増で、10か月連続で増えた。中国、米国、日本、インド、マレーシア市場が拡大した。水産缶詰・同加工品は20.5%増で、プラス成長は2か月連続となった。米国、オーストラリア、サウジアラビア、南アフリカ、リビア向けが伸びた。ペットフードは25.0%増で、11か月連続で増加した。米国、オーストラリア、イタリア、マレーシア、インドネシア市場が拡大した。動植物油脂は233.6%増で、プラス成長は4か月連続。インド、ミャンマー、マレーシア、中国、ベトナム向けが伸びた。
 一方で、タピオカ製品の輸出は11.5%減だった。マイナス成長は10か月連続。中国、日本、韓国、インド、オーストラリア市場が収縮したが、マレーシア、台湾、インドネシア、米国、フィリピン市場は拡大した。砂糖は14.2%減、8か月連続で収縮した。フィリピン、インドネシア、ラオス、マレーシア、ベトナム市場が収縮した一方、カンボジア、韓国、ケニア、日本、タンザニア市場は拡大した。生鮮・冷蔵・冷凍鶏肉は0.7%減で、前月のプラス成長からマイナスに転じた。中国、マレーシア、韓国、ミャンマー、クウェート市場が収縮した一方、日本、アラブ首長国連邦、香港、シンガポール、オランダ市場は拡大した。野菜缶詰・同加工品は10.8%減。減少は7か月連続で、日本、米国、中国、韓国、台湾市場が収縮した一方、オーストラリア、マレーシア、英国、イスラエル、ラオス市場は拡大した。
 1~8月の農産物/アグロインダストリーの輸出は5.6%増となった。
 8月の工業製品の輸出額は5.2%増、5か月連続で増加した。自動車・同部品は0.4%増で、前月のマイナス成長から上向いた。日本、ベトナム、米国、メキシコ、サウジアラビア市場が拡大した。コンピュータ/同構成部品は74.7%増。5か月連続で増加した。米国、中国、オランダ、ドイツ、シンガポール市場が拡大した。ゴム製品の輸出は14.9%増で、プラス成長は2か月連続。米国、中国、マレーシア、韓国、インドネシア市場が拡大した。機械・同部品は23.1%増で、プラス成長は6か月連続となった。米国、インドネシア、中国、英国、インド向けが伸びた。
 化学薬品の輸出は12.5%増で、2か月連続で増加した。中国、インド、日本、ベトナム、インドネシア向けが伸びた。電話機・同構成部品は19.8%増。15か月連続の伸びとなった。米国、香港、日本、オランダ、チェコ市場が拡大した。エアコン/同部品は15.2%増。2か月連続の増加で、オーストラリア、米国、インド、日本、アラブ首長国連邦市場が拡大した。
 一方でエンジン/同部品は11.2%減となり、5か月連続で収縮した。南アフリカ、日本、米国、中国、ブラジル市場が収縮した一方、インド、インドネシア、アルゼンチン、マレーシア、フィリピン市場は増加した。集積回路の輸出は8か月連続で収縮し、33.2%減となった。シンガポール、日本、中国、台湾、米国市場が収縮したが、香港、マレーシア、フィリピン、ラオス、ブラジル市場は伸びた。半導体/トランジスタ/ダイオードは6か月連続で減少し、34.3%減となった。米国、中国、シンガポール、インド、インドネシア向けが収縮したが、香港、日本、韓国、台湾、チェコ向けは伸びた。
 1~8月の工業製品の輸出は4.0%増となった。
 仕向け地別に見ると、8月の主力市場向け輸出は5.7%増だった。米国(3.0%増)、中国(6.7%増)、EU(26.4%増)、アセアン(5)(4.5%増)、CLMV(13.7%増)向けが引き続き増えた一方、日本向けは11.3%減だった。
 プーンポン事務局長によれば、世界的な気候変動が多くの国の食糧安全保障に影響を及ぼしているため、農産物や食品の輸出増が期待できる。通年の物品輸出額は商業省予測の2%を上回る可能性があるとしている。ただし地政学的対立、バーツの上昇、農産物生産への洪水被害の影響などのリスクも指摘している。

30か月ぶりのバーツ高=財務相は中銀に利下げ要求

 9月25日の外為市場でバーツは反発し、中銀参照レートで1ドル=32.652バーツまで上昇した。30か月ぶりのバーツ高水準。ピムパン・ジャルンクワン中銀総裁補[=写真]によれば、中銀は実体経済への影響を緩和するため、バーツ相場の動きを監視している。不規則な動きがあれば介入する用意があると述べた。
 ピムパン総裁補はバーツの上昇が対外要因によるもので、米国の利下げによるドル安がバーツの価値を高めているとした。中国政府が景気刺激策を打ち出したことで人民元相場が上昇したこともバーツを含む域内通貨の上昇をもたらしている。
 最近のバーツ高は米ドル安の裏返しだが、対円、対ユーロでもバーツは上昇している。米国の9月の消費者信頼感指数が98.7ポイントに低下し、市場が予想した104ポイントを大きく下回ったほか、8月の105.6ポイントの水準も下回った。このため米連邦準備制度理事会(FRB)が次回の政策決定会合でも0.5%幅で金利を引き下げるとの観測を受け、米ドルは下落した。外為ディーラーはバーツが目先、さらに上昇する可能性は高いと分析している。
 バーツは年初時点と比べると対ドルで3.8%上昇している。これはマレーシア・リンギットの11%に次ぐ上昇率。シンガポール・ドル、インドネシア・ルピア、中国人民元も年初時点との比較で上昇しているが、インド・ルピー、フィリピン・ペソ、ベトナム・ドン、日本円、台湾ドルなどは下落している。カシコン・リサーチ・センターによれば、バーツはアジア通貨では円に次いで2番目に不安定になっている。変動率は円の9.6%に次ぐ7.5%。
 ピチャイ・チュンハワチラ副首相兼財務相はバーツの急伸が輸出に大きな影響を及ぼすと述べている。米国から新興市場国へのマネーの流れが最大の理由だが、輸出で競合する国の通貨以上に上昇していることを示し、通貨当局はこの点を考慮する必要があると指摘した。
 ピチャイ財務相はインフレ・ターゲットの枠組の見直しで中銀総裁と話し合う考えを示している。金融政策目標であるインフレ率の誘導目標範囲は中銀が財務大臣と協議して決める規定になっている。現在の枠組は一般インフレ率で1~3%。タイのインフレ率は中銀が予想するほどに上昇する見通しにないと指摘した。2015年以降の8年間のうち6年間でインフレ率が誘導目標範囲を外れていることは注目すべき事実だと主張した。
 経済を刺激するため、政府は財政規律枠組が許す限りの財政出動に取り組む。中銀が金利を高止まりさせていることで財政政策と金融政策が逆方向を向いていることを示し、高すぎる政策金利は経済成長をもたらさないことを理解しなければならないと述べた。
 パオプーム・ローチャナサクン財務副大臣は、金融政策と政策金利が適切かどうかの判断基準に、①インフレ率、②外国為替、③財政政策、④世界の金利動向があると述べている。
 インフレ率は誘導目標範囲を下回り、近い将来に目標水準まで上昇する可能性が低い。バーツ相場は1ドル=36バーツ台から32バーツ台まで上昇し、近隣諸国通貨よりも強くなっており、この状況を受け入れることができるのかどうかを考えなければならないとした。政府は財政政策によって経済システムに資金を注入しており、金融政策が同じ方向に進むことを期待している。金融政策の方向は、多くの国で政策金利の引き下げに向かっている。貿易相手国の金融政策と整合することが望ましいと指摘した。

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