2024年10月8日(火)号

ワユパック・ファンド1=SET上場で株価下支えを期待

 10月7日、官製投資ファンドのワユパック・ファンド1がタイ証券取引所(SET)に上場した[=写真]。上場コードは「VAYU1」。初日は1口10バーツの募集価格を10%上回る10.10バーツで寄り付いた。最高値で10.20バーツあり、10.10バーツで初日の取引を終えた。中東の緊張が高まる中で、タイ株式市場の出来高を増やし、株価の下落を防ぐ役割が期待されている。


 ファンド・マネージャーを務めるクルンタイ・アセット・マネジメント社のチャウィンダー・ハンラタナクン社長は、VAYU1がタイの株式市場に新たな投資マネーを注入すると述べた。個人的な見解と前置いた上で、観光業の回復が続いていることや政府による追加の経済刺激策が見込めることから、SET株価指数は今年末までに1470ポイントに上昇すると予想した。
 VAYU1の資産価値は約1500億バーツ。9月の投資口(ユニットトラスト)募集で、機関投資家から1300億バーツ、個人投資家から200億バーツを集めた。すでに10月1日から運用を開始している。ファンダメンタルズが良好で、コーポレート・ガバナンスがしっかりした長期的に企業価値の増大が見込める銘柄を中心に運用する。チャウィンダー氏によれば、現在の投資ポートフォリオはSET50指数指定銘柄の株式が50%、国債が40%、信用格付「A」以上の社債が10%となっている。
 タイ株式市場は9月下旬に急騰した。SET指数は1400ポイント台を回復し、1450ポイントまで戻しているが、10月に入ってからは中東情勢の緊迫などの外的要因の影響を受けている。外国人投資家は9月最終週に約7億バーツを売り越したのに続き、10月第1週には118億バーツを売り越した。一時1300ポイントを割り込んでいた株価の大幅な上昇に加え、外国人投資家はバーツ高からも為替差益を得たことから、中東情勢悪化を受け利益確定売りを進めている。TISCO証券のアナリストは、海外要因から外国人投資家がポートフォリオの調整を進める中、VAYU1の投資マネーはタイ株式市場の安定に役立つと分析している。
 ピチャイ・チュンハワチラ副首相兼財務相はVAYU1が投資家から強い関心を集めたことは、タイ株式市場に対する信頼回復を物語っていると述べた。また中国が最近、同様のファンド組成で成功していることを示し、官製ファンド組成のアプローチは政府、市場、投資家にとってウィン・ウィンのソリューションであることが示されたと指摘した。

 株式投資家心理は「極度の強気」

 タイ資本市場連合会(FETCO)が10月7日に発表した9月の株式投資家信頼感指数(調査日9月20~30日)は175.64ポイントとなり、投資家心理は「極度の強気」に転じた。指数は調査開始以来の最高値を記録した。投資マネーの流入と政府の経済刺激策への期待、米連邦準備制度理事会(FRB)により利下げが指数の上昇に寄与した。投資家心理の下押し要因に関しては、地政学的対立に対する回答が最も多く、国内政治情勢の不透明、バーツの急騰が続いた。
 FETCOの信頼感指数は、株式投資家に3か月先の株式市場の展望を答えてもらい指数化している。指数が160~200ポイントになれば、投資家心理が「極度の強気」にあることを示す。投資家別に見ると、個人投資家、国内機関投資家の心理は「強気」、証券会社と外国人投資家は「極度の強気」になっている。業種別で最も多くの関心を集めたのは「商業(COMM)」。最も関心が低かったのは「自動車(AUTO)」。

9月のインフレ率は0.61%=通年予想は0.2~0.8%

 商業省が10月7日に発表した9月の一般消費者物価指数上昇率(インフレ率)は0.61%となり、前月の0.35%から加速した。主に洪水の影響による生鮮野菜・果物の物価上昇と軽油価格の上昇による。一方でガソリンの物価は下落した。プーンポン・ナイヤナパコン商業政策戦略事務局長[=写真]によれば、その他商品・サービスは正常な値動き。
 食品・飲料の物価は9月に前年同月比で2.25%上昇した。ネギ、白菜、ケール、トウガラシ、パクチー、ナス、キャベツなどの生鮮野菜の物価が上昇した。ランブータン、バナナ、マンゴー、スイカ、ドリアン、グアバなどの果物も値上がりした。一方、非食品物価は0.55%下落した。ガソホール/ガソリン、衣類、個人ケア製品の物価が下がった。軽油、電気代、家賃、生徒送迎バス料金、航空運賃、理美容などは上昇した。
 消費者物価指数は前月比で0.1%下落した。非食品・飲料物価が0.36%下落した一方、食品・飲料物価は0.25%上昇した。
 1~9月平均のインフレ率は0.20%。第3四半期(7~9月)の指数は前年同期比0.60%、前四半期比0.21%上昇した。
 一般消費者物価から生鮮食品とエネルギーを取り除いた基本消費者物価指数上昇率(コアインフレ率)は0.77%。1~9月平均は0.48%となった。
 プーンポン事務局長は10月も一般インフレ率の上昇が続くと予想した。軽油の小売価格は政府が1㍑あたり33バーツ未満に抑制しているが、前年同月は30バーツ未満に抑制していたため、前年比では上昇している。また洪水の影響で生鮮野菜や果物の価格は上昇している。さらに観光関連の商品やサービスの価格も上昇しており、特に航空運賃は観光ハイ・シーズンを迎えて値上がりしている。
 10月の一般インフレ率は1.25%と予想し、第4四半期平均は1.49%と見積もった。
 物価の上昇を抑制する要因もある。バーツ高で輸入コストは低下している。特に燃料の輸入コストが下がっている。原油の国際相場は前年比で下落している。また政府の経済刺激策の実施に伴う流通業界での販促競争もインフレを緩和する可能性がある。政府は脆弱な層向けに1人あたり1万バーツの現金を給付した。食品や日用品の売上は増加したが、プーンポン事務局長によれば、価格は上昇していないという。今年通年のインフレ率は0.2~0.8%と見積もった。
 一方、商業省の消費者信頼感指数は51.6ポイントとなり、前月の49.5ポイントから上向いた。指数の前月比での上昇は3か月ぶり。現在の指数は41.1ポイントから43.1ポイントに、3か月先の指数は55.1ポイントから57.2ポイントに上昇した。

 生産者物価は0.8%減

 9月の生産者物価指数は0.8%減。前月比でも1.2%下落した。1~9月平均は2.3%増。第3四半期に限れば1.6%増だった。第3四半期の指数は前四半期比では1.4%減となった。
 9月の生産者物価の下落は、工業製品の生産者物価が2.1%下落したことが大きい。石油精製品、コンピュータ/エレクトロニクス、基礎金属の物価が下落した。鉱業製品の生産者物価は4.2%減。原油、天然ガスの物価が下落した。農水産物の生産者物価は11.6%上昇した。
 生産者物価を生産工程別に見ると、最終製品の物価は1.1%上昇した。原材料は3.2%増。半製品の物価は5.7%減だった。

その他のニュース
[経済ニュース]
ペートンターン首相が講演=アセアンのビジョンを表明

ライトハブ/ウィーラボ=仮想銀行免許取得に自信

PTTGCとOR=持続可能な航空燃料開発

APタイランド=中古住宅の再販事業

配車アプリの「ボルト」=ゴミ回収でバンコク都に協力

タイ・オート・ツール&ダイ=8日にmai上場

BDMSグループ=ウェルネス・クリニック

キャッシュレス社会=「タイはアセアンで最速」

[社会ニュース]
バス炎上事故=違法改造行為が発覚

プーケット=観光双胴船炎上事故

オンライン3桁くじ=17日から試験販売を開始へ

[トピックス]
タイ映画「ラーン・マー」=アカデミー賞ノミネート

[セミナー]
持続可能な未来に向けて

[データ]
24年9月の一般消費者物価指数と基本消費者物価指数
24年9月の生産者物価指数

あわせて読みたい
無料トライアル 【無料トライアルのご案内】 タイ経済パブリッシングは毎日(土日祝を除く)、A4サイズのPDF版ニュースレターを定期購読者様にメール配信しております。 購読料金...
よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

コメント

コメントする

目次