2024年11月22日(金)号

ペートンターン首相が講演=食品、健康、ソフトパワー重視

 ペートンターン首相は11月21日午前、シリキット会議場で開催されたプラチャーチャート・トゥラキット紙主催のセミナー「RACHACHAT OUTLOOK THAILAND 2025: Opportunity, Hope, Truth: Opportunity, Hope, Truth」で講演した。「機会、希望、真実」に自信を持っており、3つとも、この政府で具体化されるとした。「食品、健康、ソフトパワー」が国に収入をもたらし、競争力を身に着け、格差の是正につながると述べた。


 食における機会では、世界の台所として食糧安全保障上の優位を強調した。テクノロジーを利用して食品の品質を維持し、目的地まで鮮度を保つ。また農産物を輸出するだけでなく、タイ料理を世界に発信するためタイ料理が持つ魅力や価値をどう伝えていくかが重要だとした。
 健康/ウェルネス分野では、健康に良いタイ料理、タイのハーブ、30バーツ国民皆健康保険制度、医療サービスの充実ぶりを示した。世界中で人気のあるムエタイなどの運動関連ビジネスの有望で、将来的にはタイをウェルネス・ハブにし、健康を重視する世界中の人々がタイを旅行しるようにしたいと述べた。
 現政権の代表的な政策であるソフトパワーは、タイの文化が持つ「価値」を国民の生活向上のための「価値」にするものと説明した。政府は魅力的で独自性に富んだタイの文化に可能性を見いだしており、これを非常に重視していると語った。
 講演では、タイ人が「具体的な機会」という言葉を好むことから、政府は「具体的な機会」を創出しようとしていると述べた。国民の持つポテンシャルは高いが、アクセスする機会が少ない、あるいは十分なサポートが受けられないでいるため、発揮できずにいるとし、機会の提供が重要なこと、政府がそのプロセスを加速させていることを強調した。一方で、タイには長年にわたる問題が積み重なっており、国と経済を力強く前進させるためにはさまざまな対策が必要なことを指摘。「政府がまずやりたいことは、経済を刺激し、成長させることで、人々がより良く暮らせるようにすることだ」と語った。基本的なニーズが満たされていなければ創造性を持つことや国を前進させる力を持つことは難しいとし、政府は不平等を減らすため、機会を可能な限り広げようとしていると訴えた。
 首相はタイ経済の現状にも言及した。第3四半期の成長率が3.0%に達したことを良い兆候だとした。政府投資と観光業が原動力になったこと、観光客数が前年比で28%以上増加したことを示した。今年の観光客数は3600万人に達し、来年にはコロナ前を上回る4000万人に達する可能性がある。タイの観光業が完全に回復しつつあることを示す良い兆候だとした。ビザ免除措置や、空港サービスの改善、フェスティバル・カントリー政策などセーター前政権から継続的に実施している政府の観光政策の成果を示した。
 首相は一連の外遊で、多くの国がタイへの投資に関心を持っていることを実感したと述べ、「タイの政治がもっと安定すれば、外資に信頼を与えることになる。この政府が任期を満了できると請け負いたい」と語った。外国人投資家は政府の政策が継続され、投資が中断されないという確信を求めているとし、前政権が実施した政策の継続を約束した。その上で政府がまずやらなければならないことは、国営企業の投資予算を含めて9600億バーツ以上ある投資予算を最大限に活用することだと述べた。
 首相は輸出に影響を及ぼす貿易障壁措置などの対外要因にも言及した。タイはGDPの6割を輸出に依存し、最大の輸出先は米国になっている。米国政治の二極化はタイ経済にも影響を及ぼしそうで、新たな成長エンジンを見つけることが重要だと指摘した。また中小企業を支援するため、特にオンラインでの商品売買に関して、法律や規制をより厳格にすると述べた。タイが生き残るための道の一つとして文化や創造性をベースとする産業を挙げ、他国が容易にはまねできない独自のアイデンティティを持ち、誰もが好む独特の魅力があるような商品・サービスを創っていかなければならないと訴えた。

旭化成とPTTGC=アクリロニトリル事業から撤退

 旭化成とPTTグローバル・ケミカル社(PTTGC)はアクリロニトリルを生産する合弁会社、PTT旭ケミカル社の事業の終了と工場設備の撤去を発表した。11月15日に開いた合弁会社の株主総会で決議した。工場での生産は10月末で終了しており、今年末で販売活動も終える。25年から28年にかけて工場設備の撤去を進める。
 旭化成の発表によれば、PTT旭ケミカル社は2006年にプロパン法アクリロニトリル、ACH法メチルメタクリレート(MMA)、硫安の製造・販売の会社として設立された。旭化成とPTTGCが50%ずつを出資している。東南アジア向けの製造拠点として事業を継続してきたが、22年ごろからの経済環境の低迷の長期化と原料コストの上昇による競争力の低下に加え、中国での生産能力の増強を背景とする需給環境の悪化から業績が低迷していた。合弁相手のPTTGC社との協議の結果、事業の継続は困難との見解で一致し、合弁事業を終了することに合意したとしている。
 米国が中国からの製品、特に合成樹脂に高関税を課した後、アジア市場には中国から大量の石化製品が流入し、競争が激化している。PTTGCのナロンサック・チワカナンCEOは、製品価格の下落につながる競争激化からの影響を回避することは困難と説明した。アクリロニトリルは繊維や樹脂の原料となる液体のモノマーで、主にABS樹脂の主成分の一つとして電化製品などに広く使用されている。プロパン法アクリロニトリルは、従来のプロピレン法とは異なり、プロパンから直接製造する旭化成独自の技術で、天然ガス由来のプロパンはPTT社が供給している。メチルメタクリレートは、主にアクリル樹脂の原料として使われるモノマー。アクリロニトリルの製造過程で出る青酸を主な原料として製造していた。ナロンサックCEOによれば、事業撤退プロセスは28年までに完了する予定。
 PTT本社のコンクラパン・インタラチャン社長兼CEOは、これより前、PTTが石化事業を手掛ける子会社の持ち分を減らしていく方針を明らかにしている。PTTGCやIRPC社の保有株の一部を売却する計画とみられ、PTTグループ内での石化事業の位置づけは低くなる。
 PTTの石化事業はタイ湾での天然ガスの生産が始まったことを受けて誕生した国策プロジェクトが原点。PTTが持つ天然ガス分離プラントからエタンやプロパンを原料としてエチレンやプロピレンを生産し、川下のポリエチレンやポリプロピレンのメーカーに供給する国策会社、ナショナル・ペトロケミカル社(NPC)とタイ・オレフィン社(TOC)がPTTを筆頭株主とし川下メーカーが出資する形で設立された。
 PTTGC社はNPCやTOCを統合する形で設立されている。97年の経済危機で事実上倒産したタイ・ペトロケミカル・インダストリー社(TPI)は当時のタクシン政権による政治主導で、PTTが引き継ぐことになり、IRPCに社名を変更した。ちなみにPTTのタイ石油公団から株式会社への転換とタイ証券取引所(SET)への上場もタクシン政権時に実現している。
 PTTGCの第3四半期決算は193億バーツの純損失で、前年同期の14億バーツの黒字から赤字に転落している。競争の激化による売上減と採算の悪化が理由。第3四半期の売上高は1490億バーツで、第2四半期から11%減少している。

その他のニュース
[経済ニュース]
フォーブスCEOカンファレンス=首相がタイの投資ハブ機能を強調

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[社会ニュース]
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[トピックス]
「タイランド・スマートシティ2025」

[企業紹介]
バンプー・グループ

[BOI認可事業]
10月15日認可43事業

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