BOIが25年の投資奨励戦略=5分野でハブを目指す
投資委員会(BOI)は1月29日にピチャイ・チュンハワチラ副首相兼財務相を議長に開いた今年最初の本会議で、25年の投資奨励戦略計画を承認した。タイを東南アジア地域の投資の中心へと高めるため、タイが持つ潜在能力を活かして、①BCG(Bio-Circular-Green Industries Hub)②テクノロジーとイノベーション(Tech Hub)③世界中から集まる高度な技能を持つ人材(Talent Hub)④物流および国際ビジネス(Logistics & International Business Hub)⑤クリエイティブ産業(Soft Power and Creative Hub)の5つの重要分野でハブを目指す。これら戦略的なハブを通じて、地域の経済的な中心としての地位を確立し、世界的な大企業の投資を呼び込む。
ナリット・トゥードサティラサック事務局長は、世界の不安定な状況をチャンスと捉えてタイの投資拠点化を目指すと述べている。世界の地政学的問題や、ますます深刻化する気候変動の危機による世界の不安定な状況は、タイにとって投資拠点になるための機会であり、同時に挑戦でもあると指摘した。投資奨励の戦略計画を立てることで、タイを世界の先進産業の生産拠点に進化させ、国際的な投資シフトに対応できるようにする。
1.競争力の強化とターゲット産業への投資誘致
25年の投資戦略では、競争力を強化し、特定のターゲット産業への投資の誘致を目指す。具体的には①BCG②電気自動車(xEV)③半導体および高度電子産業④デジタル産業⑤ビジネスハブへの投資を促す。これを実現するため、国家EV政策委員会、国家半導体政策委員会、国家ソフトパワー政策委員会などを通じて産業間の統合を進め、投資を引き寄せるさまざまな活動を展開する。
このほか、中国の成都とシンガポールにBOI事務所を新たに開設する計画もある。
2.タイの企業育成とグローバル・サプライチェーンへの連携支援
タイの企業、特に中小企業(SME)の能力向上に重点を置き、xEVや電子回路分野への進出の機会を創出する。これを実現するため、生産効率の改善支援、国内製造業者からの部品調達を推進する支援策の強化、産業間の連携を強化する活動に取り組む。これらの取り組みを通じてタイの企業が新たな産業に参入し、世界的なサプライチェーンと連携する機会を提供する。
3.高度な技能を持つ人材の育成
関係機関と連携し、半導体、プリント基板、デジタル、AI分野のターゲット産業に向けた人材を準備する。明確なロードマップを作成し、支援措置を設ける。また、海外の高度人材を引き寄せるため、LTRビザ(長期滞在ビザ)やスマートビザを活用し、ビザと労働許可証のワンストップサービスセンターの機能も充実させる。
4.インフラと投資のエコシステムの強化
重要な物理的およびデジタル・インフラの開発への投資を促進し、投資を受け入れるための基盤を整える。産業の拡大に対応するため、工業用地の確保と整備を関連機関と連携して進める。また、投資に対する障壁となっている規制の見直しで関連機関と協力し、グローバル最低税率(GMT)による影響を緩和するためのツールの開発に財務省と連携して取り組む。
5.グリーン経済と持続可能な産業の発展
環境に優しい投資プロジェクトの奨励を進め、再生可能エネルギーによる発電、リサイクル、環境に優しい製品の生産などを支援する。また、エネルギー使用の削減や再エネ利用、温室効果ガス排出削減を目指した機械の改良を支援する。さらに、BOIはエネルギー省、エネルギー事業監督委員会(ERC)と協力し、ユーティリティ・グリーン・タリフ(UGT)のメカニズムや直接電力購入契約(ダイレクトPPA)など、ターゲット産業向けのクリーンエネルギーの供給メカニズムを設ける。
◆1700億バーツ超の事業を認可
この日の本会議では1700億バーツを超える大規模投資プロジェクトを認可した。TikTokとサイアムAIがデジタル、AIインフラの基盤構築に投資する。また、この日の会議では、バイオ・エコノミーの開発戦略の一環として、持続可能な航空燃料(SAF)の生産やバイオ工業団地の開発事業に対する投資優遇を手厚くする政策を決定した。
ナリット事務局長によれば、デジタル・インフラ事業では、2件の大規模事業を認可した。TikTokが手がけるデータ・ホスティング・プロジェクトは高性能なデータセンターにサーバーや各種機器を設置して、ビッグデータを処理する。事業地は、バンコク、サムットプラカン、チャチュンサオの3都県で、投資額は1267億9000万バーツ。
サイアムAIコーポレーションが手がけるAIクラウドサービス事業も認可した。同社は米エヌビディアのクラウドパートナー(NCP)に選ばれた最初のタイ企業。クラウドサービス事業はチョンブリ県とパトゥムタニ県を事業地とし、投資額は32億5000万バーツ。
アジア・パシフィック・ポタシュ・コーポレーションが手がける塩化カリウムの製造事業も認可した。肥料の主要原料となるもので、工場はウドンタニ県に設ける。投資額は404億バーツ。
ナリット事務局長は、昨年にデジタル産業、特にデータセンターやクラウドサービスといった重要インフラ分野で、米国、中国、香港、日本、インド、オーストラリア、タイの16の企業から総額2400億バーツ以上の投資があったことを示し、25年も世界的なテック企業がタイに投資を続けると期待した。タイ国内と東南アジア地域全体でデジタル技術に対する需要が急速に伸びているためで、特にAIの急成長や、ビッグデータの保存と処理に関するニーズが高まっている。TikTokとサイアムAIによる、これら2つのプロジェクトへの投資は、タイがデジタルハブとして地域の中心となるための重要に一歩になるとしている。
◆バイオ経済ハブ
この日の本会議ではタイをバイオ経済のハブにするための投資奨励策を決定した。国内の農産物に付加価値を生み出す投資を促進することが目的。
1.「持続可能な航空燃料(SAF)生産事業」への投資を奨励する。SAFは農産物や農業廃棄物を原材料に用いる航空機用燃料。現在使用されている航空燃料と比べて二酸化炭素排出量を最大80%削減できることから、国際的な航空燃料の新たな標準になる可能性があると目されている。SAF生産事業には8年間の法人税免除の税制優遇を付与する。
2.「農業および食品工業団地または振興区」を「バイオ工業団地または振興区」に改め、対象事業の範囲を広げ、農業、食品、再生可能エネルギーと支援サービスをカバーする。BCG産業の振興政策に沿ったもので、5年間の法人税免除の税制優遇を提供する。
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