米国の相互関税90日猶予=タイ政府は交渉の時間確保
ペートンターン首相は4月10日、米国が多くの貿易相手国に対する関税引き上げの実施を90日間延期すると発表したことについて、米国との交渉の時間が確保できると述べた。トランプ米大統領が発表した相互関税制度の下、タイ製品には36%の関税が課されることになっていたが、対抗措置をとらなかった国は90日間猶予すると発表した。
相互関税が発効してわずか1日での方針転換で、スコット・ベッセント米財務長官は、記者団に対して「大統領は他国との交渉で最大の交渉力を自らに与えた」と述べた。大統領は、今後数日以内にベトナム、日本、インド、韓国の当局者と話す予定だという。ペートンターン首相は、政府がすでに米国に会談を要請しているが、いつになるかについては、まだ返答を得ていないと述べた。
首相は、アセアン加盟国としてだけでなく、一国家としても米国と交渉すると述べた。アセアンとして交渉することで、より多くの交渉力を得られる一方、国別に対処しなければならない事項もあるとした。アセアンは10日、トランプ大統領による新たな関税措置に対応するため、緊急の経済閣僚会合をオンラインで開催した。米国の一方的な関税導入に対する深い懸念を表明したが、報復措置は取らず、対話を通じて問題解決を図る方針を確認している。
10日のタイ株式市場は関税猶予のニュースに反応し、SET指数は終値で前日比45.77ポイント高となる1133.95ポイントまで値を戻した。トランプ関税による世界貿易とタイの輸出への打撃に対する懸念が後退し、電子機器、ペットフード、工業団地、エネルギー、石化などを中心に買い戻しの動きが広まった。ただしアナリストの大半は、トランプ氏の態度が急変する不確実性から、市場のボラティリティは依然として高いと見積もっている。先行きは依然としてリスクが高く、来週はソンクランの長期休暇で市場が閉まるため状況が変動しやすくなる。
ピチャイ・チュンハワチラ副首相兼財務相は、90日間の猶予は驚くことではなく、米国の貿易相手国が米国との交渉により多くの時間を必要としているからだと解説した。この猶予が、米国との貿易収支に悪影響を及ぼさないよう関税交渉計画を調整する時間を与えると述べた。
ただし交渉が成功したとしても、タイは米国が貿易相手国に課す10%の基本関税の対象となる。また、交渉後にタイの競合国がより低い関税率を勝ち取った場合、タイの競争力は低下する。米中対立が本格的な貿易戦争へと発展しつつあることも懸念材料だ。トランプ氏は中国に対する関税率を前日の104%から125%に引き上げた。中国政府は10日、米国からの全輸入品に84%の追加関税を課している。ある評論家は、タイは米国との間に約1兆バーツの貿易黒字があり、米国債も数兆バーツ保有しているが、観光、農業、製造業に大きく貢献している中国を貿易相手として失うことはできないと指摘している。
タイ商業会議所大学(UTCC)のタナワット・ポンウィチャイ学長は、90日間の猶予により、対応を準備する時間が増えたと述べている。タイが関税率を10%に下げる交渉に成功すれば、損失は1000億~1500億バーツで済み、成長率を0.7~0.9ポイント押し下げる程度になると述べた。
タイ商業会議所のポット・アラムワタナノン会頭は、首相、経済担当副首相、商業相、その他の主要閣僚を中心とした「チーム・タイランド」を早急に立ち上げる必要があると指摘した。また、商業・工業・銀行の経済3団体合同常任委員会(JSCCIB)を含む利害関係者からの意見収集を提案した。交渉のリーダーは閣僚クラスであるべきで、商業省と外務省が主要機関となり、農業・協同組合省や投資委員会(BOI)などの関連機関の意見も不可欠だと述べた。
タイ工業連盟(FTI)のクリアンクライ・ティアンヌクン会長は、メーカーはこの猶予期間を利用して可能な限り輸出を増やすべく生産を増強すべきだと述べた。猶予期間は短いが、製造業には好影響を与えているという。
文化省がソンクラン広報=伝統行事を全国で実施
ペートンターン首相は4月8日、文化省文化振興局が首相官邸で開催したソンクランの伝統行事に関する広報キャンペーンを視察し、子どもたちによる遊びを見学した[=写真]。スダーワン・ワンスパキットコーソン文化大臣がキャンペーンの概要を説明した。キャンペーンのテーマは「私の故郷のソンクラン、タイの彩り、世界中に幸福を」。
スダーワン大臣によると、文化省による今年のソンクラー行事は、文化・経済・社会・環境の4次元、計17項目のキャンペーン方針に基づいており、地域ごとの文化的背景に配慮しながら、地域経済と国の経済への価値創出に文化資源を活用し、環境保全にも取り組む内容となっている。行事は全国17県とバンコク都内で実施される。
5つのアイデンティティ都市での行事と題し、チェンマイ県(12〜16日)、コンケン県(8〜15日)、チョンブリ県パタヤ旧市街(17〜19日)、サムットプラカン県(12〜13日、25〜27日)、ナコンシタマラート県(11〜15日)で各種のイベントを実施する。チェンマイ城壁周辺パレード、ランナー文化展示、芸術文化公演、伝統的イサーンスタイルのソンクラン、年長者への水掛け、花と音楽の祭典、光と音のパフォーマンス、仏像への水掛け、砂でつくる仏塔、モン族コミュニティの生活様式の紹介などが見もの。
バンコク都内では、サムヤーン・ミットタウン、シーロム通り、ファッションアイランド、ワット・スタット寺院、アイコンサイアム、セントラルワールド、サイアムスクエア、王宮前広場で開催される。
スダーワン大臣はタイの伝統文化を世界に発信し、観光客を迎え入れると述べ、ソンクランを世界的なイベントとして定着させたいと語った。ソンクランは水掛けだけではなく、愛、感謝、家族の温もりの祭典であり、世界に誇れるタイの文化遺産だと説明した。
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