2025年5月2日(金)号

中銀の金融政策委員会=政策金利を年1.75%に引き下げ

 タイ中央銀行の金融政策委員会(MPC)は4月30日に開いた今年2回目の政策決定会合で、政策金利を0.25%幅で引き下げ、年1.75%とすることを決定した。5対2の多数決。MPCの書記を務めるサッカパポップ・パンヤーヌクン総裁補によれば、2名の委員は現行金利の維持を支持した。
 この日の会合では、米国の貿易政策とそれに対する主要経済国による報復措置が、世界の経済・金融・貿易の構造を大きく変化させる可能性があるとの見解が示された。現在の状況は、不確実性が高い初期段階にあり、世界経済の成長率は下方修正される傾向にある。こうした状況は長期化する可能性があり、貿易と生産構造の変化を通じて、長期的に世界経済の効率性を低下させる可能性がある。サッカポップ氏は、今後の主要国の貿易政策は予測困難で、将来の経済およびインフレ見通しの評価にも影響が及ぶとの見解を示した。
 タイ経済の成長率は下方修正される傾向にあり、世界的な貿易政策に加え、外国人観光客数の減少から下振れリスクが高まっている。一般インフレ率は、主にサプライサイドの要因により、目標レンジを下回る水準へと低下していく見通し。一方で、全体的な金融環境は依然として引き締まっている。
 こうした状況を踏まえ、多数の委員は政策金利を0.25%引き下げることが適当との判断を示した。経済の先行き動向に整合し、増大する下振れリスクに対応するとともに、経済成長とインフレ率の見通しに沿った適切な金融環境を維持することを重視した。一方で、2名の委員は、政策金利を据え置くべきとの見解を示した。限られた金融政策の運用余地(policy space)の中で、最大限の効果が期待できるタイミングで金利操作を活用すべきと考えている。
 タイ経済は、成長の勢いが鈍化する傾向にあり、世界的な貿易政策と外国人観光客数の減少からの下振れリスクが高まっている。今後を見据えると、貿易政策の影響は年後半から本格的に現れ始めると予想されるが、依然として不確実性が極めて高い状況が続いている。
 このため、金融政策委員会は、複数のシナリオに基づいて経済の見通しを評価した。標準的なシナリオは、米国の輸入関税が現在の水準に維持されると仮定したもので、今年のタイ経済の成長率は約2.0%と見込まれる。一方、代替シナリオは、貿易戦争が深刻化し、米国の輸入関税が高水準となるケースで、経済成長率は約1.3%にとどまる可能性がある。
 実際の経済への影響は、各国の政策対応に左右されるため、世界貿易とタイ経済への影響を引き続き注視する必要がある。貿易政策による問題の緩和や影響の軽減には、多方面にわたる政策を組み合わせて実施する必要があり、企業の競争力の強化が重要な鍵になると指摘した。
 一般インフレ率は、世界の原油価格と政府の措置により、目標レンジを下回る水準へと低下する見通し。生活費の軽減と企業のコスト削減に寄与する。一方、コアインフレ率は、今後も安定的に推移する見通しで、中期的なインフレ期待も、依然として目標レンジ内にとどまる。ただし、貿易障壁の強化やグローバルなサプライチェーンの変化は、今後のインフレ動向に影響を及ぼす可能性があり、これらの要素に注目する必要があるとした。
 金融情勢は基調的には引き締まる。与信残高はわずかに減少し、債権の質も引き続き悪化している。特に、住宅ローンや構造的課題を抱える業種向けの事業融資において、その傾向が顕著となっている。加えて、世界的な貿易政策が、企業と家計の財務状況にさらなる圧力を加える可能性があり、経済活動に及ぼす影響を引き続き注視する必要がある。
 世界の金融市場におけるボラティリティは、主要国の貿易政策に対する不確実性の高まりを背景に上昇しており、それに伴ってタイの金融市場におけるボラティリティも増大している。ただし、タイの金融市場の機能は、全体として正常に機能していると強調した。MPCは、世界の金融市場の動向とバーツ相場の変動について、今後も注意深く監視していく方針だ。
 サッカポップ氏は、MPCが「物価の安定」を主な目標としつつ、「持続可能な経済成長」と「金融システムの安定確保」をあわせて目指す金融政策運営の枠組みの下、今後も政策を柔軟に対応させていくと述べた。経済の先行きには依然として高い不確実性があるため、今後の経済とインフレの動向とリスクを踏まえ、適切な金融政策の調整を行なっていくとの方針を示した。 

エナカット工業相=三菱自動車タイ新会長と会談

 エカナット・プロムパン工業大臣は4月24日、三菱自動車(タイランド)の会長に就任した木下稔氏[=写真左から4人目]の表敬訪問を受けた。会談では、同社の事業運営方針や、タイの自動車産業の今後の発展について意見交換が行なわれた。
 会談には、前会長で現取締役相談役の辻昇氏[=左から5人目]をはじめ、三菱自タイの幹部らが出席。工業省からはウィーラポン・イアムチャルーンチャイ監察官ら幹部職員が同席し、工業省本部で行なわれた。


 エカナット大臣は、木下氏の新会長就任を祝福するとともに、同社がタイへの投資に強い信頼を寄せていることに謝意を示した。工業省として民間との連携を強化し、タイの自動車産業の持続的成長に貢献する姿勢を明確にした。
 三菱自タイは、チョンブリ県レムチャバン工業団地に大規模な製造拠点を有する。三菱自にとって、タイ市場および世界各国への輸出の中核工場としての役割を果たしている。現在、xEV生産でも投資を進めており、プラグイン・ハイブリッド車(PHEV)、バッテリーEVの生産拡大を図っている。

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