政府歳入はコロナ前水準に届かず=高水準の財政赤字削減が不可避
財務省財政政策局によると、政府の歳入は依然としてコロナ前の水準を下回っており、新興国の平均をも下回っている。同局が4月に発表した2024年度の財政リスク評価によれば、パンデミック前と比較して政府の債務返済能力も低下している。
財務省関係者によると、中期的な見通しにおいて財政リスクは依然として高い。この関係者は、高水準にある財政赤字を削減し、高齢化や構造的変化、将来の危機に対応するための財政余地を回復するためにも、政府は財政健全化に本格的に取り組むべきだと主張している。
2024年度における政府歳入はGDPの15.1%にとどまり、コロナ前を下回っている。リスクの観点からは、自動車市場における構造的な変化や経済成長の鈍化が大きな圧力になるとみられ、GDP比で見た歳入確保能力は中期的にも低水準が続く。一方、歳出面では債務返済の増加、義務的経費の増加、福祉支出の拡大などにより引き続き圧力が大きい。特に利払い、医療費、年金関連の支出が増えている。
財務省によれば、削減が困難な項目への歳出は継続的に増えている。2023年度には2.13兆バーツに達し、政府予算全体の67.2%を占めており、2022年度の65.8%から上昇している。給与や手当、補償金に対する支出は2022年度の26.2%から2023年度には25.7%に減少したが、債務関連のリスクは依然として高く、コロナ前と比べて債務返済能力が弱まっている。2024年度における利払い費は歳入の9.59%に達しており、返済能力の低下を浮き彫りにしている。金利の上昇と債務残高の増加による。
中期的には、債務関連のリスクは以下の2つの要因によりさらに高まると予測されている。
第1に、公的債務残高の対GDP比は今後も上昇を続け、2029年度末には69.3%に達する見込み。毎年平均で3.37%ずつ上昇する計算で、経済成長による改善を上回るペースになっている。
第2に、2024年第3四半期末における「財政早期警戒複合指数(Fiscal Early Warning Composite Index)」は3.36に達し、警戒水準である5に近づいており、政府が財政赤字政策を継続するには注意が必要なことを示している。この指数が高リスク水準を示すのは、14四半期連続だ。
2025年度には、歳入が想定を下回るリスクから、財政の流動性に追加の圧力がかかる可能性がある。政府には支出が歳入を上回る場合に備えて0.17%(49.2億バーツ)の借入枠があるに過ぎない。
予算配分が不十分になる可能性もあり、より多くの財務省準備金を活用する必要が出てくる可能性がある。リスクを軽減するためには、財政赤字を通常の水準となるGDP比3%以下に引き下げる努力が必要だ。2025年度の財政赤字はGDP比4.4%と見込まれている。
付加価値税制度の見直しを検討=税収拡大で財政赤字の圧縮図る
ピチャイ・チュンハワチラ副首相兼財務相[=写真]は5月1日、年商180万バーツ未満の事業所に適用されている付加価値税(VAT)免除措置を見直す方針を示した。年商の下限を150万バーツに引き下げたうえで、150万~180万バーツの事業者に対しては1%のVATを課す構想で、これにより年間2000億バーツの税収増を目指すという。

現行制度では、年商150万バーツ規模の事業者が納めているのは主に個人所得税で、その額は年間1万バーツ程度にとどまっている。ピチャイ財務相は、税収増が実現すれば、現在GDP比4.4%の財政赤字を3.5%まで圧縮できるとの見通しを示した。公務員給与などの固定費が大きく、歳出の削減が困難な状況の中では、歳入増こそが現実的な選択肢となる。
かつて税収のGDP比は17%前後に達していたが、現在は15.5%に落ち込んでいる。財務相は、税収を持続的に増やすためには国民の購買力を高める必要があると強調。所得税やVAT、物品税など主要な税目がいずれも国民の所得水準に連動していることを踏まえ、家計債務の削減が優先課題に挙げた。
現在、家計債務の総額は16兆4000億バーツに達しており、このうち1兆2000億バーツが不良化している。不良債務を抱える国民は540万人にのぼり、うち300万人は10万バーツ未満の少額債務を抱えている。財務相は今後3か月以内に債務整理や再編を進め、小口債務者の救済を完了させたい意向を示した。10万バーツを超える債務についても、債権者である銀行に再編を促すとともに、政府のソフトローン・プログラムの導入を検討する。
また、農民の所得向上にも重点を置く方針で、全国で2800万人にのぼる農業従事者の生産性向上や作物の転換支援を関連省庁と連携して進めていく考えも明らかにした。具体的には、1500万ライ規模のコメの減反を通じた価格支援策の構想も挙がっている。
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