タイのフード・バンク事業

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イオンも22年から参加

 国内で流通している生鮮品や食料品の規格外品や売れ残りなどの食品残渣は、推定で年間400万㌧に達するとされる。従来、これらはほとんどが廃棄され、ゴミとして処理されていたが、回収して恵まれない人々の食事に充てる「フードバンク」の活動がタイでも拡大しつつある。
 5月15日、科学技術開発機構(NSTDA)は、官民の協賛団体と共同で「タイ・フード・バンク・プロジェクト」の壮行式を開催した。貧困層や高齢者、障害者など社会的に弱者とされる人々の食糧を確保する社会的メカニズムを構築することで、草の根からの食糧安全保障を実現することが目的。

「タイ・フード・バンク・プロジェクト」


 都内ラートプラオ区にあるクロンソンクラティアム校を拠点とし、農業研究開発所から財政支援を受けてパイロット事業を開始した。社会における食糧の適正配分と廃棄物削減を同時に実現する事業になるものと期待されている。 
 NSTDAのパタマーポン・プラチュムラット研究員によれば、余剰食品の処理を望む流通業者などと食料品を必要としている層をつなぐアプリとプラットフォーム「クラウド・フード・バンク(CFB)」を開発済みで、食品の回収と分配は民間団体「SOSタイランド財団」が担う。同財団はこの種の事業を2016年から手掛けており、活動地域はバンコク都だけでなく、チェンマイ、プーケット、フアヒンにも広がっている。
 NSDTAではプロジェクトで回収・分配される食品のデータを集積・分析することで、将来的には自動的に分配先を手配できるシステムを構築、寄付者となる工場などが食品残渣の管理効率を引き上げることで、二酸化炭素排出量削減にもつながるような形にしていく考え。
 取り扱う食品には安全基準を設け、寄付者に遵守を求めている。寄付を受け付ける食料品は缶詰食品、精米、乾麺類、ドライ食品、野菜・果物、ベーカリー類、乳製品、飲料水、果汁飲料、調味料類、スナック菓子類などで、いずれも未開封で賞味期限が切れておらず、カビ・腐敗・傷み、悪臭など品質の劣化が見られないもの。缶詰類は錆びたり、膨張しているものは受け付けない。また調理後に余った野菜類の切れ端や食べ残しなども不可。温度管理が必要な食品には冷蔵・冷凍管理を行ない、物流も低温での輸送を行なっている。
 SOSタイランド財団フード・バンク・プログラム推進事業部のタウィ・イムプーンサップ事業部長によれば、16年以降、これまでに財団が回収した食料品は830万㌔㌘、3500万食分に相当する。活動地域内の3600か所に分配し、食品残渣の埋立処理によって派生する二酸化炭素排出を2万1166㌧削減したという。寄付者は食品工場、飲食店、ホテル、その他食品関連事業所。一方、分配先は要望が出された住民組織、市民団体、学校、公営社会福祉施設など。財団が回収した食料は1日以内に分配されている。


 食品スーパーマーの「マックス・バリュー」を展開するイオン(タイランド)も、SOS財団のプログラムに22年から参加、現在では24店が野菜・果物類などを寄付している。財団に通知すれば、午後3時頃までにはエンドユーザーまで届く仕組みが出来上がっている。マックス・バリューのほかにもバンコク・マリオット・ホテル・ザ・スリウォンも参加している。同ホテルのアッタポン・タントーン・シェフによれば、これまで捨てていた食品残渣の約3分の1が寄付に回されるようになったという。

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