プリント基板製造に投資の波=タイの世界市場シェア10%見通し
投資委員会(BOI)事務局のナリット・トゥードサティラサック事務局長は10月18日、2023年以降にプリント基板(PCB)製造への投資が飛躍的に増えていることを明らかにした。21年から22年にかけてPCB関連事業への投資申請は平均で年間150億バーツだったのに対し、23年1月から24年9月までに95件のプロジェクトの申請があり、投資予定額は1620億バーツに達している。
ナリット事務局長はPCB産業への新たな投資の波がスマートシステムやAIの活用をサポートすることを含め、テクノロジーとイノベーションを重視する経済成長を推進する世界規模の変革を起こしていると指摘。タイは世界的にも重要なPCBの生産拠点になりつつあると述べた。世界のPCB産業は急成長し、今後5年間でその規模は1000 億㌦を超えると見込まれていることを紹介した。
世界中の産業が新たなテクノロジー、特にスマートシステムとAIによる変革からの課題とチャンスに直面している。PCBはスマート家電、コンピュータ、スマートフォン、EV、医療機器からデータセンターに至るまで、アプリケーションをサポートする基盤として不可欠。新技術の開発により市場が急速に成長する一方、地政学的対立、貿易戦争、技術戦が激化し、これが投資のトレンドの転換点になっている。世界のPCB産業の主要な生産国である中国と台湾は、生産の分散やサプライチェーンを海外に拡大するリスク管理を求められている。そうした中で東南アジアは新たな生産拠点として脚光を浴び、タイはこの地域のPCB生産地として注目されている。ナリット事務局長はBOIなど政府機関の投資支援、整備されたインフラ、物流システム、人材の質により、タイは世界規模のPCB産業の生産拠点になる機会があると語っている。
タイのPCB産業には新たな投資の波が生じている。メクテック(旧社名・日本メクトロン)、フジクラ 、韓国のハンソル、台湾のデルタ・エレクトロニクス、カルコンプ・エレクトロニクス、タイのKCEなど、すでにタイに生産拠点を持つ既存メーカーからの継続的な投資拡大に加え、タイに生産拠点を設けるための投資を決定した新たなPCBメーカーもある。ZDTグループ、ユニマイクロン、コムペック、WUS、ゴールド・サーキット、チンプーン、ダイナミック・エレクトロニクス、ユニテック、マルチ・ファインライン、ウェルテックなどがタイ進出を決めた。
ナリット事務局長は既存/新規メーカーの投資増により、タイは東南アジアで最大、世界でもトップ5に入るPCB生産拠点として主導権を握ることができるようになると述べている。新規参入メーカーの工場が稼働を始めれば、タイの市場シェアは現在の4%から10%に上昇すると予想されている。
タイ・プリント基板協会(THPCA)によれば、今後2年間に少なくとも8万人の労働者がPCB産業で必要になる。ナリット事務局長はBOIが人材とサプライチェーンという2つの重要分野を支援する考えを明らかにしている。
人材面では高等教育・科学・研究・技術革新省や民間部門と協力し、ジョブマッチング活動やアップスキル/リスキル・プログラムを通じてPCBメーカーに適した人材の育成を急いでいる。
サプライチェーンに関しては投資奨励策を修正した。PCB/PCBA製造事業への投資奨励に加え、ラミネーション、ドリリング、プレーティング、ルーティングなどPCB生産をサポートする事業を奨励している。また銅張積層板(CCL)、フレキシブルCCL(FCCL)、プリプレグなどの原材料の生産事業、ドライフィルム、トランスファーフィルム、バックアップボードなど、その他原材料/資材の生産も投資奨励の対象に加えた。タイの企業がPCBメーカーに供給する部品や原材料を生産するビジネスチャンスを創出するため、業界内のサプライチェーンを接続する活動にも注力している。
オンライン教育のコーセラ=AIカリキュラム拡充
米国のオンライン教育プラットフォーム、コーセラは生成AI関連コースを開設、タイ国内でも受講生を増やす。今年6月30日現在、タイ国内の受講生は98万3000人で、前年同期から21%増えている。世界の受講生は20%増の1億5500万人。同社はタイ国内の受講生を今後3年で倍増させる計画を明らかにした。
タイはデジタル・スキルを備えた人材が決定的に不足している。高等教育・科学・研究・技術革新省はAIスキルを含むデジタル・スキルの底上げを政策課題に掲げている。グーグルの調べではコーセラのプラットフォームの活用を含め、国内の大学が学生のスキルアップに力を入れれば、2030年までに300億㌦の経済効果を生むことができる。
コーセラ・アジア太平洋支社のラガフ・グプタ支社長は「タイが目指すデジタル経済ハブの実現にはデジタル・スキルを身に付けた労働者の育成とデジタル・スキルの生涯学習機会増に向けた環境づくりは不可欠」と指摘する。コーセラはAI教育を含めた自社のカリキュラムを通じて貢献していく。
タイの受講生の平均年齢は32歳で、世界平均の33歳より若干若い。タイ人受講生の47%が移動通信端末を使って受講している。国内の顧客は一般企業が30社、大学が20校。今年第1四半期に人気があったコースはイェール大学の心理学入門講座と北京大学の初心者向け中国語講座だった。生成AI関連コースでは「グーグルAIエッセンシャル」、「皆のための生成AI」、「生成AI手引き」、「チャットGPT入門講座」、「生成AIと大規模言語モデル」などが人気だった。
タイ人雇用者の98%はAIツールの導入を2028年頃までに完了させたいと考えているという。58%がAI導入で生産性が飛躍的に改善されると期待、AIスキルを持った人材に対し、より多くの賃金を払っても良いと考えている雇用者は41%となっている。
AIコース受講生の伸び率は世界の1060%に対しタイは1076%。タイ国内のデジタル・スキルアップ講座としてオクスフォード大学サイード・ビジネス・スクール、国際経営開発研究所(IMD)を含む大学教育機関4校、エアバス、ビヨンド、アマゾン、Xボックスなど民間企業5社と提携し、コンテンツの拡充を図っている。国内で開催した自社イベントでコンテンツやAI関連コースの概要を紹介した。
同社のタイ語版コンテンツ・カタログも昨年は2000種類だったが、今年は4700種類へと大幅に増やした。イベントではグーグル、IBM、マイクロソフトなど世界のトップIT企業が提供するAI関連カリキュラムも紹介している。
国内ではサイアム商業銀行(SCB)、セントラル・リテール、ソンクラーナカリン大学、キングモンクット工科大学トンブリ校、シーナカリンウィロート大学、バンプー社との提携を発表した。
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