BOIへの投資申請=過去10年で最高水準
投資委員会(BOI)事務局の10月21日の発表によれば、1~9月の投資申請は2195件で、合計投資予定額は7225億2800万バーツを数えた。件数で前年同期比46%増、金額で同42%増となった。半導体や先端エレクトロニクス、デジタル、EV、再生可能エネルギーなどのターゲット産業への投資が旺盛で、世界中で生産拠点の移転が進む中、投資誘致の成果が表れている。今年通年の投資申請額は直近10年で最高水準に達する見通し。
ナリット・トゥードサティラサック事務局長はタイ経済の良好なファンダメンタルズとポテンシャルを反映して過去10年間で最高の投資額になったと述べている。政府の政策や支援策に対する投資家の信頼感を示すもので、半導体や集積回路、データセンター、EV・同部品、再エネなど多くの産業の大規模投資プロジェクト誘致につながった。政府は世界的な生産拠点再配置の動きにあわせて、新技術を支えるスキルを持つ人材育成、クリーン・エネルギーを適正価格で提供する仕組み、新産業を支援する工業団地や特区の整備、投資を促進する法規の改廃と制定など投資意思決定に好影響を及ぼすエコシステムの整備を加速させている。
1~9月に投資申請額が最も多かったのはエレクトロニクス/電機(1834億4400万バーツ)。デジタル(941億9700万バーツ)、自動車・同部品(678億4900万バーツ)、農業・食品加工(529億9000万バーツ)、石化・化学(343億4100万バーツ)が続く。
データセンター事業は8件、投資予定額は927億6400万バーツを数えた。米国、オーストラリア、中国、香港、インドの大手企業が投資申請した。ウェハ製造、電子設計、半導体・集積回路の組立および検査は15件、投資予定額は198億5600万バーツを数えた。プリント基板(PCB)および原料の生産は55件、613億200万バーツ、スマート電子機器/スマート家電生産は13件、389億7300 万バーツ、機械機器、オートメーションシステム、精密機械生産は117件、305億1500万バーツ、再エネ発電は351件、853億6900万バーツを数えている。
外国人直接投資(FDI)は拡大を続けている。投資申請は1449件で、前年同期比66%増。合計投資予定額は5466億1700 万バーツで、同38%増を記録した。シンガポールからの投資が1808億3800万バーツで最多となり、中国(1140億6700万バーツ)、香港(682億300万バーツ)、台湾(445億8600万バーツ)、日本(354億6900万バーツ)が続いた。シンガポールからの投資の多くはエレクトロニクス、データセンター分野の中国や米国企業のシンガポール法人によるものとなっている。
事業地別では東部が4087億3700万バーツで最多。中部が2207億800万バーツ、北部が354億5200万バーツ、南部が250億3900万バーツ、東北部が237億7700万バーツ、西部が88億1200万バーツだった。
既存のBOI認可企業による生産効率向上を支援する措置の申請は1~9月に287件、投資額は273 億1800万バーツを数えた。多くが省エネと代替エネルギーへの投資で、機械の更新や生産ラインの自動化が続く。
1~9月のBOI証発行ベースの統計では、2072件の投資プロジェクトがあり、前年同期に比べて59%増加した。投資額は6721億6500万バーツで、同101%増加した。
ナリット事務局長は投資の増加傾向は25年まで続くと期待した。その上で、BOIが投資額よりも投資プロジェクトの質とタイ国民が得られるメリットを重視していると述べた。
EECの工業用地不足=42万ライが開発済み
東部経済回廊(EEC)地域の工業用地が不足気味になっている。地政学的対立で、中国から生産拠点を移転する動きがここ数年加速し、移転先としてタイをはじめとするアセアン地域が注目されている。エカナット・プロムパン工業相[=写真]によれば、2019年12月からのEECインフラ整備計画では、829万ライの総面積の5.12%に相当する42万4854ライを工業用地に配分しているが、すでに開発済み。需要増への対応には工業用地の配分枠を増やす必要がある。エカナット大臣は農業/住宅地域207万ライの一部を工業団地の開発地域として配分し直す方向で関係各機関と調整するようタイ工業団地(IEAT)に指示した。2か月以内に結論が出る見通しだという。
増枠する地域は主に国内中小企業の工場用地として配分する予定で、EECに移転してきた外資系企業に部品を供給する生産基地を同じ地域に構築できるよう支援する。ローカル・コンテンツを確保したい外資系企業にとっても有益な選択肢になるとみている。住宅地に工場が入り込むことを避けるため、事前に工業用地として再配分する区域を明確にした上で工業団地として開発する。エカナット工業相は 「EECという特殊な地域だからこそ特別な配慮が必要。メリットを中小企業も享受できる環境を整備したい」という。
EECが重点的に振興する業種に次世代自動車産業がある。バッテリーEV(BEV)、プラグイン・ハイブリット(PHEV)、ハイブリット(HEV)、燃料電池車(FCEV)などで、エンジン車向け部品工場のEV部品への転換支援も視野に入れている。プリント基板などの川上電子産業はOEM生産からODM生産への脱皮を支援する。
高付加価値農産加工業ではバイオテクノロジーや未来食品産業の振興を通じた国産農産物の付加価値創出を支援する。特にパーム油はサトウキビ同様に生産農家と加工場、政府による利益分配制度を構築するための法整備を検討中。パーム油精製過程で生じる派生物の経済利用をより効果的にできるようにする。
防衛・防災産業は将来的には製品の輸出を視野に入れた振興措置を導入する。医療機具産業は輸出依存度を引き下げ、国産化を奨励していく。鉄鋼、セメントなどの基礎産業は国内の生産能力を維持・拡大することで、輸入依存度の引き下げを進める。
エカナット工業相は今後の工業部門のあり方について、①国内垂直一環体制の確立、②ESG(環境・社会・ガバナンス)重視、③地域の特性を勘案した柔軟かつ適切な政策スタンス、の3つを重視すると述べている。「この3つが揃えばタイは再び域内を牽引する工業国になる。生産拠点の移転熱が高いここ2、3年が勝負になる」と述べている。
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