2024年10月29日(火)号

9月の物品輸出は1.1%増=通年で過去最高更新の見込み

 商業省が10月28日に発表した9月の物品輸出額は259億8320万㌦で、前年同月比1.1%増となった。石油・金地金・武器を除いた輸出額は3.1%増。物品輸出の前年同月比での増加は3か月連続となった。プーンポン・ナイヤナパコン商業政策戦略事務局長は貿易収支が2か月連続で黒字になったことを強調した。タイの輸出セクターの強さを反映するもので、経済の安定に肯定的な兆しが見えるとした。1~9月の物品輸出額は前年同期比3.9%増で、石油・金地金・武器を除いた輸出額は4.2%増となった。
 プーンポン事務局長によれば、世界市場における需要が拡大している農産物と食品の輸出が牽引している。エレクトロニクス・電機の輸出も引き続き増えている。半導体サイクルが上向いたことに加え、タイの同製品は質と価格の両面で競争できている。また主力市場である米国やEUの経済はインフレ状況が緩和したことで回復を始め、需要が伸びている。このほかに主要航路の海上運賃が下落し、コスト低減と価格競争力の上昇につながっている。
 9月の物品輸入額は255億8900万㌦で、前年同月比9.9%増。貿易収支は3億9420万㌦の黒字となった。1~9月合計の輸出額は2231億7600万㌦で、前年同期比3.9%増、輸入額は2291億3280万㌦で、同5.5%増だった。貿易収支は59億5680万㌦の赤字。
 プーンポン事務局長によれば、第4四半期(10~12月)の輸出が月間平均225億3300万㌦に達すれば、商業省目標の前年比2%増を達成できる。輸出額は2900億㌦に達し、前年の2870億㌦を抜いて過去最高を更新する。
 9月の農産物/アグロインダストリー製品の輸出額は3.5%増。3か月連続で増加した。農産物は0.2%増、アグロインダストリー製品は7.8%増だった。
 米は15.2%増で、4か月連続で増加した。イラク、米国、セネガル、トーゴ、フィリピン向けが伸びている。
 天然ゴムの輸出額は47.4%増で、11か月連続で増えた。日本、米国、マレーシア、インド、韓国市場が拡大した。
 水産缶詰・同加工品は15.6%増で、プラス成長は3か月連続となった。米国、オーストラリア、サウジアラビア、カナダ、アラブ首長国連邦(UAE)向けが伸びた。
 ペットフードは21.5%増で、12か月連続で増加した。米国、オーストラリア、イタリア、マレーシア、インドネシア市場が拡大した。
 鶏肉調製品は0.8%増で、プラス成長は7か月連続。英国、シンガポール、アイルランド、フィリピン、フランス向けが伸びた。
 動植物油脂は27.4%増で、プラス成長は5か月連続。インド、マレーシア、ミャンマー、ベトナム、中国向けが伸びた。
 一方で、生鮮・冷蔵・冷凍・乾燥野菜は20.9%減となり、前月のプラス成長から減少に転じた。中国、米国、ベトナム、マレーシア、香港向けが減少した一方で、インドネシア、韓国、UAE、ミャンマー、オーストラリア向けは伸びた。
 タピオカ製品の輸出は29.2%減だった。マイナス成長は11か月連続。中国、日本、台湾、マレーシア、フィリピン向けが減少した一方、インドネシア、韓国、米国、南ア、シンガポール向けは伸びた。
 砂糖は10.4%減、9か月連続で収縮した。ベトナム、ラオス、台湾、シンガポール、インドネシア向けが減少した一方、カンボジア、フィリピン、韓国、マレーシア、日本向けは増えた。
 生鮮・冷蔵・冷凍鶏肉は3.0%減で、減少は2か月連続となった。中国、マレーシア、韓国、香港、ミャンマー市場が収縮した一方、日本、オランダ、シンガポール、UAE、英国向けは伸びた。
 野菜缶詰・同加工品は6.4%減。減少は8か月連続で、日本、米国、中国、オーストラリア、台湾市場が収縮した一方、マレーシア、インドネシア、サウジアラビア、英国、オランダ市場は拡大した。
 1~9月の農産物/アグロインダストリーの輸出は5.4%増となった。
 9月の工業製品の輸出額は2.0%増え、6か月連続で増加した。
 コンピュータ/同構成部品は25.5%増。6か月連続で増加した。米国、中国、オランダ、ドイツ、日本市場が拡大した。
 ゴム製品は15.7%増で、プラス成長は3か月連続。米国、中国、韓国、マレーシア、インドネシア市場が拡大した。
 機械・同部品は8.7%増で、プラス成長は7か月連続となった。米国、英国、日本、インド、フィリピン向けが伸びた。
 化学薬品は4.4%増で、3か月連続で増加した。中国、ベトナム、インドネシア、マレーシア、米国向けが伸びた。エアコン/同部品は22.5%増。3か月連続の増加で、米国、オーストラリア、UAE、インドネシア、インド市場が拡大した。
 一方で自動車・同部品は9.9%減となり、前月のプラス成長から減少に転じた。オーストラリア、フィリピン、日本、マレーシア、サウジアラビア向けが減少した一方、ベトナム、米国、インドネシア、ニュージーランド、アルゼンチン向けは増えた。
 宝石・宝飾品は6.5%減となり、5か月連続で収縮した。香港、スイス、インド、英国、日本市場が収縮した一方、カンボジア、米国、シンガポール、ドイツ、UAE市場は拡大した。
 合成樹脂の輸出は5.2%減。2か月連続で減った。中国、マレーシア、ミャンマー、韓国、カンボジア市場が収縮したが、インド、インドネシア、日本、ベトナム、オーストラリア市場は拡大した。
 鉄鋼・同製品は7.6%減で、減少は5か月連続となった。米国、インド、日本、オーストラリア、ミャンマー向けが減少した一方、マレーシア、インドネシア、中国、ベトナム、ラオス向けは伸びた。
 エンジンの輸出は20.6%減となり、6か月連続で減少した。南ア、インドネシア、マレーシア、インド、米国向けが減少したが、アルゼンチン、カンボジア、フィリピン、中国、ブラジル市場は拡大した。
 1~9月の工業製品輸出は3.8%増。
 仕向け地別に見ると、9月の主力市場向け輸出は2.6%増だった。米国(18.1%増)、EU(4.1%増)、CLMV(8.3%増)が拡大した一方、中国(7.8%減)、日本(5.5%減)、アセアン(5)(6.7%減)は減少した。タイにとって最大の市場である米国向け輸出の大幅な伸びが9月の物品輸出全体のプラス成長を支えた。主力市場以外では、オーストラリア(12.0%増)、中東(3.5%増)、アフリカ(3.5%増)、ラテンアメリカ(15.0%増)、英国(29.3%増)向けが伸びた。
 プーンポン事務局長によれば、第4四半期も輸出は拡大を続ける見通し。ただし米国の大統領選挙、地政学的対立、バーツ高、洪水の農産物生産への影響、インドの米輸出政策の変化がタイの米輸出に及ぼす影響などはリスク要因になる。

9月の新車市場=3万9048台、37.1%減

 タイ国トヨタ自動車が10月28日に発表した9月の新車販売台数は3万9048台にとどまり、前年同月比37.1%減となった。乗用車の販売台数は1万5668台で、同38.4%減。商用車は2万3380台で、同36.2%減。商用車のうち1トン・ピックアップ・トラック(PPVを含む)は1万3972台(40.1%減)。
 スパコン・ラタナワラハ副社長によれば、xEVの販売台数は1万3102台で、新車販売台数全体の34%を占めたが、前年同月比では21%減となった。ハイブリッド車の販売台数は11%減となったが、販売台数は7355台で、xEV市場の56%を占めている。バッテリーEVの販売台数は4982台で、前年同月比32%減となった。バッテリーEVは今年に入ってからも中国勢の進出が相次いでいるが、市場は期待されたように拡大していない。昨年のBEVの販売台数は約7.6万台。年初時点では、今年は13万~15万台に拡大すると予想されていたが、前年並みにとどまりそう。
 1~9月の新車販売台数は43万8659台で、前年同期比25.3%減となった。年初時点の予測では今年通年の新車市場は82万~85万台を見込んでいたが、せいぜい60万台にとどまる見通し。60万台達成には残り3か月で16.1万台を販売しなければならず、月間平均で5.37万台が必要となる。第4四半期は自動車が最も売れるシーズンだが、9月の販売台数が4万台を切っていることからも容易でないことがわかる。月間販売台数が4万台を切るのは新型コロナ流行の初期で、ロックダウンが実施された2020年4月以来。
 スパコン氏は10月の販売台数が前月からで改善するものの、前年同月比では引き続き収縮すると見ている。足元の景気が低迷していることに加え、洪水の影響で購買力が低下している。タイ中央銀行による利下げ、自動車各社による新モデルの投入、各社の販促キャンペーンなど、いくつかのポジティブな要因もあるが、金融機関が自動車ローンの審査を厳格にしていることもあり、市場が上向く気配はない。

破綻危機の社会保険基金=ピパット労相が対策案

 ピパット・ラチャキットプラカーン労相[=写真]は、約30年後に破綻すると懸念されている社会保険基金について、抜本的改革案を打ち出している。同基金に積み立てる社会保険の被保険者は2482万人。うち外国人は150万人となっている。基金の資産価値は2兆6000億バーツあるものの、高齢者の増加と就労人口の減少から資産規模の漸減が確実な情勢になっている。エコノミストの試算では、基金は2042年に6兆バーツ規模で頂点に達した後、減少に転じて2054年に枯渇するという。


 10月24日にムアントンタニで社会保険基金の将来に関するシンポジウムが開催され、ピパット労相が基金の改革構想を明らかにした。第1に基金の積立金収入を増やすため、被保険者の裾野を広げる。自営業者やインフォーマル・セクターの就労者、農家、タクシー運転手などの加入を促し、被保険者を4000万人に増やす。
 医療費の補助では私立病院から社会保険基金による補助金額が少な過ぎるとの苦情が出ている問題について、社会保険基金による民間の保険加入を検討する。社会保険の被保険者の治療費の補助金額は患者1人あたり最高1万2000バーツだったが、現在は7000~8000バーツに減額されており、私立病院が社会保険指定病院から脱退する動きを見せている。ピパット労相は民間の保険に加入することでこの問題を解決したい考えだが、それには社会保険法の改正が必要になる。
 現在の社会保険基金の運用利回りは年2.7~2.8%。来年は5%への倍増を目標に掲げている。現行法では投資先について、非リスク資産での運用を60%以上、低リスク資産での運用を最大40%と定めている。現在の運用状況は70%対30%となっている。社会保険基金理事会では外国証券への投資を増やすことで利回りの改善につなげるべきだとの意見が出ており、検討を進めている。
 養老年金支給開始年齢の55歳から65歳への引き上げ、積み立て率の引き上げ(雇用者と被雇用者各2%、政府2.25%の計6.25%上乗せ)、移民労働者の積立義務の強化(一次産業従事者の積み立てを義務化)を検討する。正規の移民労働者は現在約300万人だが、33条被保険者になっている者は150万人しかいない。農林水産業や家事労働、屋台手伝いなどで働く150万人は加入義務がない。省令で積み立てを義務化することで正規の移民労働者全員を加入させる。
 ピパット労相によれば、毎年移民労働者の医療費のうち、病院が徴収できずに保健省が負担している経費が20億~30億バーツに達している。社会保険加入により、この問題も解消できるとしている。

その他のニュース

[経済ニュース]

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[社会ニュース]
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[論調]
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[データ]
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製品別に見た輸出額
仕向け地別に見た輸出額

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