2024年10月30日(水)号

財務省と中銀がインフレ目標で協議=誘導目標は1~3%に据え置き

 財務省とタイ中央銀行は10月29日、金融政策目標の枠組について協議した。ピチャイ・チュンハワチラ副首相兼財務相とセータプット・スティワートナルプット中銀総裁が協議し、一般インフレ率で1~3%とした誘導目標範囲は変えないことに合意した。誘導目標範囲の下限を2%に引き上げるよう主張していたピチャイ財務相が折れた格好だが、その代わり景気の拡大を支援する措置を求めた。
 インフレターゲットの金融政策は97年の経済危機後、IMFの助言を得て導入された。それまでのタイ中央銀行の金融政策は貨幣供給量(マネーサプライ)を参照していたが、金利操作によりインフレ目標を達成する方式へと転換した。2000年の導入当初はコアインフレ率をターゲットにしていた。2016年からは一般インフレ率に変更され、誘導目標範囲は当初、2.5%プラスマイナス1.5%となる1~4%だった。その後1~3%に改められて現在に至っている。しかし誘導目標を一般インフレ率で1~3%とした過去9年間に実際のインフレ率が目標範囲に収まったのは18年(1.07%)、21年(1.23%)、23年(1.20%)の3年だけ。今年1~9月の平均は0.2%にとどまり、目標を下回りそう。
 経済成長をサポートするためにはインフレ率は少なくとも2%でなければならないというのがピチャイ氏の考えで、金融緩和を求めている。緩和によりインフレ率が上昇しても、制御可能な範囲にとどまり、インフレの高進を招くことはないと考えている。ピチャイ氏は中銀との協議後の会見で、「インフレ目標を1~3%にとどめることに問題はないが、実際のインフレ率が1%を下回ることは容認できない。 インフレ率を引き上げるには、経済成長を支援するための追加的な措置が必要だ」と述べた。インフレ率の上昇と金利の低下を促すことで国内投資は刺激されると主張した。
 ピチャイ氏によれば、タイのインフレ率が平均2%、GDPが3.5%成長すれば、政府が財政赤字をGDP比3.85%に増やしても公的債務残高はGDPの70%以下に抑制できる。
 今年のタイの経済成長率は2.7~2.8%と予測され、前年の1.9%から加速するものの、3%には届かない。ピチャイ氏は経済成長を支援するため、財政政策と金融政策の連携が重要と述べ、それによって来年は3%成長の可能性が出てくるとした。
 ピチャイ氏は政策金利のもう一段の引き下げを直接的には求めなかったもようだが、中銀に求めた「経済成長を支援する措置」が利下げを意味することは明らか。今回の財務省との協議に対する中銀側の反応は明らかになっていない。セータプット総裁は25~27日に開催されたIMF・世界銀行年次総会出席のため米国訪問中に海外メディアの取材に応じた際、利下げ継続を否定する発言を行なっている。10月16日の金融政策委員会(MPC)の政策決定会合で政策金利を0.25%幅で引き下げ、年2.25%とすることを決定したが、MPCの金融政策スタンスは景気に対して中立的なままで、景気配慮への政策シフトを意味するものではないと強調している。MPCは12月18日に今年最後の政策決定会合を開く。
 ピチャイ氏はEV、半導体、クラウド、データセンター、バイオなどのターゲット産業に外国人直接投資(FDI)が流入し始めていることや、タイの経済が輸出に依存していることから中銀は為替レートを競合国と競争できる水準に維持する政策を実施しなければならないと指摘した。金融政策の実施には、インフレ率、金利、投資支援政策、債務処理、為替レートなどあらゆる側面を考慮する必要があると主張した。

大型車乗り入れ規制を強化=年明けから事前登録を義務化

 バンコク都庁はこれからの時期に悪化する首都の大気状態への対策として、都内に乗り入れる大型車両の規制を強化する。チャッチャート・シッティパン都知事[=写真中央]が10月29日にプラサート・シンスックプラサート・エネルギー省次官、天然資源・環境省汚染管理局大気汚染・騒音公害管理課のティラポン・ウィモンジットラーノン課長、タイ陸運連盟のトンユー・コンカン会長らと会合を開き、合意した。


 6輪以上の大型車を対象に排気ガスの濃度が規定の水準を超えないトラックの事前登録(グリーン・リスト)を義務付ける。リストに掲載された車両は原則として規制の対象外。規制は微小粒子状物質PM2.5の大気中の濃度を基準とし、大気1立米あたりのPM2.5の値が75マイクロ㌘を超える区が5区以上出た場合に24時間後から3日間に渡って発動する。指定する9区(ドゥシット、パヤタイ、プラナコン、ポムプラープサトゥルーパーイ、サムパンタウォン、クロンサーン、サートン、パトゥムワン、バンラック)への規制対象車両の乗り入れを禁止する。これに伴い、これらの区に隣接する13区(バンスー、チャトゥチャック、フアイクワン、ディンデーン、ラチャテウィ、ワタナー、クロントイ、ヤナワー、バンコーレム、トンブリ、バンコクヤイ、バンコクノイ、バンパラット)も事実上乗入禁止となる。年明けから実施する。
 チャッチャート知事は「当初は全ての大型車両の乗り入れを禁止するつもりだったが、それではしっかりと整備したトラックに不公平と考えた。車の整備に気を配るきっかけになれば」と述べた。
 都では規制開始までに都内の主要交差点257か所にカメラを設置し、違反車両の取締を強化する。さらにPM2.5対策として、建設現場やバス・ターミナルも巡回し、粉塵の極小化で協力を呼びかけていくほか、昨年も実施した政府機関や民間企業からの協賛を受けての車両整備キャンペーンを展開する。排気ガスによるPM2.5排出量を減らすため、オイル交換やフィルター交換を奨励するもので、昨年は26万5130台が協力、試算ではPM2.5の排出量を13.26%削減するのに成功した。今年は50万台の協力を見込む。
 在宅勤務(WFH)奨励キャンペーンでは、都内いずれか5区で規定値を超えるPM2.5が2日連続で観測された場合、職員・従業員にWFHを奨励するよう事業所に協力してもらう。現在、官民合わせて151事業所が協賛登録し、職員・従業員数は合わせて6万人となっている。都では随時参加申し込みを受け付けている。
 国立天文学研究所と提携した「PM2.5出所トレース・プログラム」、都立学校におけるダストフリー室の設置や都下8病院における大気汚染クリニックを開設する計画がある。

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