来年の経済成長率は3.5%=経済刺激と金融緩和で実現
ピチャイ・チュンハワチラ副首相兼財務相[=写真]は10月30日、来年のタイ経済が潜在力に応じた成長を遂げ、3.5%の成長率を達成する機会があると述べた。政府の経済刺激策と金融緩和を前提に、タイをデジタル経済、グリーン経済に向けて前進させることで経済成長率を潜在成長率の水準に押し上げることが可能になるとしている。
経済記者協会が商業・工業・銀行経済3団体合同常任委員会(JSCCIB)、タイ商業会議所大学(UTCC)、国営企業政策委員会事務局の協力の下に開催した最優秀民間部門組織リーダー賞の発表イベントに合わせて行われたフォーラム「2025年のタイ経済の機会と課題」で基調講演した。
ピチャイ氏は、インフレ率が低いレベルにとどまっていることが低成長の原因だと指摘した。「消費者の視点からは、物価が安くても、買う金がない。解決策は人々に買うお金を持たせることだ」とした。理想とするインフレ率は2.0~2.5%。「タイのインフレ率は少なくとも2.0%でなければならない。経済成長を促進する政策を持ついくつかの国は2.5%の水準も許容している」と語った。
家計と中小企業の債務の膨張がタイ経済の大きな課題で、政府が支援する必要があったことから公的債務残高のGDP比は65~66%の水準に上昇し、国の財政の余地は狭まっている。現在のタイの政策金利は年2.25%で、他国に比べて高いとは言えないが、債務問題を解決するには金利を下げる必要があると主張した。貸し手側は債務者の信用力の低下で高い金利を望んでいるため市場から流動性が失われ、人々は新たな融資を受けることができないでいると指摘した。
経済成長を促進するためには投資の促進が欠かせない。流動性は投資を支援するのに十分だが、投資のGDP比は近年低下している。「財務は安定しているのに投資は少なく、未来のない裕福な個人に似ている」と指摘した。その上でタイの投資の方向性は、デジタル経済やグリーン経済などの世界的な潮流や人的資本の開発努力と一致させる必要があると述べた。
投資委員会の報告によれば、今年の投資申請額は過去10年間で最高を更新する見通しで、民間企業部門の投資への関心は高まっている。ピチャイ氏はクラウド・ファースト政策を打ち出しクラウド上に政府のデータベースを作成する準備を進めていることや、今後、施行される炭素税に対処するためのグリーン・エネルギーの拡充、南部ランドブリッジなどの物流インフラへの投資、金融ハブを目指す政策など、政府には民間投資を支援する明確な政策が数多くあることを強調した。
またこの政府が推進する投資促進政策の一つとして借地法を改正し、土地の賃貸借契約を現在の最長30年から99年に延長する政策を進める考えを示した。この取り組みは外国人投資家の長期投資への信頼感を醸成し、外国人が借地権を売却したり、金融機関からの融資の担保として使用することを目的としていると述べた。
9月の工業生産は3.51%減=自動車の収縮が響く
工業経済事務局(OIE)が10月30日に発表した9月の工業生産指数は前年同月比3.51%減となった。第3四半期(7~9月)は1.23%減。自動車の生産が14か月連続で減少したことが響いている。自動車は国内市場、輸出市場ともに収縮している。9月の設備稼働率は57.47%、1~9月平均は58.29%となった。
パーサコン・チャイラット事務局長は自動車生産の不振について、経済の減速、購買力の弱体化、家計債務の膨張と不良債権の増加を受け、金融機関が依然として新規融資の審査に厳格で、融資の拒否率が上昇していることが理由だと指摘した。またエネルギー・コストの上昇に加え、タイ製品よりも安い輸入品の氾濫の問題はさらに大きくなりそうな見通しにある。特にオンライン・プラットフォームを通じて商品を購入する消費行動がタイ国内の企業に影響を及ぼしている。輸入品の流入は特に電化製品、家具、衣類で顕著に増えている。一方、工業製品(金・武器を除く)の輸出は前年同月比で2.86%増加し、第3四半期では7.05%増となった。
パーサコン事務局長は10月の工業経済について、「警戒を強めなければならないシグナルがある」と指摘した。国内要因では、民間投資が収縮し、企業の信頼感が悪化している。事業者は洪水被害の影響もあって購買力の脆弱化による景気回復の遅れを懸念している。海外要因ではEUの製造業が収縮し、米国経済は減速の兆しを見せている。米大統領選挙への懸念もある。
OIEは工業事業者に対し、①クリーン・エネルギー技術への適応と省エネ技術の応用、②エネルギー消費量を削減するための生産工程の改善、各工程でのエネルギーロスの削減、コスト削減、生産効率の引き上げ、③循環型経済(サーキュラー・エコノミー)を生産工程に採り入れ、化石エネルギーへの依存度を減らす、④世界市場のニーズを把握し、世界の変化に対応して生産工程を効率的に管理することで、世界市場のニーズを満たす製品を生産する、⑤組織のニーズに合わせて新たなスキルを身につけ、既存のスキルを向上させる労働者のスキル開発の5項目に取り組むよう求めた。
9月に生産指数が前年同月比で上昇した工業業種に石油精製がある。軽油、航空燃料油、ガソリンの生産が増加した。前年同月に製油所のメンテナンスによる休止があったため、指数は前年同月比で7.54%上昇した。水産缶詰の生産指数は同49.96%上昇した。米国、カナダ、オーストラリアからの注文増を受け、ツナ缶の生産が増えた。その他汎用機械の生産は16.73%増。世界的な気温の上昇を受けてエアコンの生産が増えた。
一方で、自動車の生産指数は23.48%減となった。特にピックアップ・トラック、小型乗用車、1800cc以上のハイブリッド車の生産が減少した。電子部品・回路基板の生産は8.54%減。主に受注が細った集積回路の生産が減少した。
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