2024年11月14日(木)号

経済刺激のための財政出動=「最大3兆バーツの借入余地」

 ピチャイ・チュンハワチラ副首相兼財務相は11月13日、ザ・スタンダード誌主催のセミナーで基調講演し、政府が今後4年間に景気刺激策のために利用できる借入枠は最大3兆バーツあると述べた。財政の持続可能性の枠組みは公的債務残高のGDP比の上限を70%に定めている。9月末時点の公的債務残高は約12兆バーツで、GDPの65~66%の水準。70%の上限まで3兆バーツの余地がある。


 プアタイ党政権の積極財政による公的債務の膨張は懸念材料の一つだが、ピチャイ大臣は公的債務がコロナのパンデミック期に大幅に増加したことを指摘。10年前はGDPの48%に過ぎなかったことを示している。
 ピチャイ氏は経済成長を促進するためには、投資を増やす必要があると主張している。過去20年間の投資支出はGDPの20~22%を占めるに過ぎない。高度経済成長期に最高で40%に達していたのが半減している。昨年の投資支出はGDPのわずか19%。
 投資の少なさが低成長の原因で、過去10年間の経済成長率は平均で1.9%にとどまっている。低成長は家計債務の膨張にもつながっている。家計債務残高はGDPの89%の水準に達している。国内での投資が少ない結果、タイは未来を見ることができず「過去の蓄えで暮らす裕福な個人のよう」になっているとした。
 ピチャイ氏によれば、国内の投資を増やすため、政府は国家予算を用いて、「時代遅れの投資プラットフォームから高度な技術を活用した新たな投資プラットフォームへの移行を進めている」ところ。海外からの投資を誘致するためには、インフラを強化し、物流コストとエネルギー・コストを削減する必要があると指摘している。
 予算編成に関しては、歳出総額3兆5000億バーツを一つの目安とし、編成時の赤字は8000億バーツを超えない7500億バーツ程度に抑える考えを示した。来年の経済成長率は3.0~3.2%増が見込まれているが、3.5%以上の成長を望んでいるとした。そのためには経済の刺激が必要で、ペートンターン首相がペルーでのAPEC首脳会議を終えて帰国するのを待って、19日にも首相が議長を務める経済対策委員会の会合を開くと明らかにした。デジタルマネー給付の第2フェーズについては、急がない考えを示している。9月最終週に1440万人の脆弱な層に1人1万バーツの現金が給付されたばかりであることから、実施時期を考慮する必要があるとしている。
 タイ経済の成長にはエネルギー資源への投資が重要になると述べ、タイとカンボジアの領海主張重複地域(OCA)での資源共同開発に向けた交渉を支援すると述べた。天然ガスの埋蔵が見込まれ、発電燃料での割高な輸入液化天然ガス(LNG)への依存度を減らし、電気代を削減できるとした。
 このほかにカジノを含む複合娯楽施設開発、鉄道インフラへの投資プロジェクト、70~80年の長期借地契約を可能にする借地法改正などに言及した。

自動化倉庫の「オメガ1バンナー」=商船三井が32.5億バーツ出資

 商船三井のシンガポール法人で、東南アジア・大洋州地域統括会社であるMOL(アジア・オセアニア)は、アジア屈指の大手総合不動産デベロッパー、キャピタルランド・グループの中核企業であるキャピタルランド・インベストメントが主導するファンドを通じて、東南アジア域においてマルチテナント型高度自動化倉庫を中心とした複数の「ロジ・インフラ」を開発・投資する共同事業へ参画した。「キャピタルランドSEAロジスティック・ファンド」に投資する。
 このほどファンドに出資するプルクサー・ホールディング(PSH)、キャピタルランド・インベストメント・グループ(CLI)、台湾の物流倉庫デベロッパーのアリー・ロジスティック・プロパティ(ALP)の3社と合意した。出資額は32.5%に相当する32億5000万バーツ。タイ、シンガポール、マレーシア、ベトナムを対象地域として、ALPが開発するマルチテナント型高度自動化倉庫モデル「オメガ」を中心とした高付加価値物流倉庫など「ロジ・インフラ」を開発する。すでにタイでは1号案件となる「オメガ1バンナー倉庫」を建設中。ファンド出資パートナーは「オメガ1バンナー」に続く形で対象地域の需要に合致する「ロジ・インフラ」への投資を今後拡大していく。
 キャピタルランドはシンガポールの不動産投資会社、ALPは台湾の総合的な倉庫物流ソリューション・サービス・プロバイダーで、プルクサーとアセアン域内の物流関連設備への投資を目的とする同ファンドを67億5000万バーツで立ち上げた。プルクサーのウテーン・ローハチットピタックCEOによれば、当初合意で最大135億バーツまでファンドの規模を拡大できることになっている。商船三井が出資することでファンドの規模は100億バーツに増えた。商船三井の出資後の出資比率はキャピタルランドが33.75%、商船三井が32.5%、プルクサーが27%、ALPが6.75%となる。
 ファンドは総額250億バーツ規模の物流関連資産への投資を構想している。「オメガ1バンナー」は第1号プロジェクトで、今年4月に着工した。ALP設計の総床面積20万平米の総合物流施設で、投資額は84億3000万バーツ。機械化・自動化を極限まで追求した最新型の施設で、第1期工事は2026年に完成予定。常温倉庫2棟、冷蔵冷凍倉庫1棟を建設する。フォークリフトなど構内を走行する車両は全て無人。
 ウテーンCEOは物流系不動産事業への進出が自社のポテンシャルの強化と経営多角化につながると見ている。「オンライン通販の普及で宅配物流業界の成長は著しい」と述べ、今後もファンドを通じてタイだけでなく、シンガポール、マレーシア、ベトナムに進出していく意向を表明している。

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