2025年1月8日(水)号

自動車の物品税を再編=ハイブリッド車も優遇

 財務省物品税局はエンジン車から代替技術への移行を支援するため、自動車の物品税を再編する。クラヤー・タンティテーミット局長[=写真]は12月24日の記者会見で、税収の確保と経済的成果をバランスよく調整することを主眼とし、エンジン車からEV、プラグインハイブリッド車(PHEV)、ハイブリッド車(HEV)、燃料電池車(FCV)などのモビリティ技術への移行を促進すると語った。政府の「誰も置き去りにしない」政策に沿ったものになるとしている。自動車のほか、バッテリーの物品税を見直すほか、塩分税や炭素税の導入を進める計画だ。


 物品税局は持続可能な経済成長と産業の競争力向上に貢献するため、局内の組織を時代の要求に応えられるものにし、透明性と検査可能性を確保する。また人材の育成にも着手する方針を明らかにした。クラヤー局長は、ESG(環境・社会・ガバナンス)を重視していく考えを表明した。
 「E」(環境)と「S」(社会)への責任についてはバッテリーと自動車の物品税の見直しを進めることでEVへの移行の動きを後押しするほか、地酒産業振興税制の整備、塩化ナトリウム(塩分)税、炭素税の導入を通じて環境と社会に優しい製品の生産と消費の拡大を税制面から支援していく。
 「G」(ガバナンス)については、徴税業務、脱税行為取締業務、監督・管理業務の効率化、関連法の改正を進める。民間企業や市民代表その他の幅広い層とコミュニケーションを密にすることで相互の理解形成に努める。
 クラヤー局長は国の税制面での持続可能性の構築で、物品税局が中心的な役割を担うと認識している。税収と経済効果のバランスを保つことで国の競争力の向上に貢献することが重要になる。自動車の物品税はEV、PHEV、HEV、水素エンジン車などの次世代自動車への移行が進むことを見据えた税構造の見直しを進める。エネルギー効率の高いバッテリーへの移行を支援するため、税額算出基準を見直す。単位重量あたりの蓄電量や耐用年数を勘案した基準を導入することになる。
 炭素税は燃料に課税するもので、温室効果ガス排出量に応じた税率を設定する。燃料消費による環境負荷を可視化することで、温室効果ガスの排出削減につなげる。現時点では消費者の納税負担を増やさず、物品税の一部を炭素税に置き換える。
 地酒産業の振興は地域興しの一環で、地方で小規模に営業する醸造元を支援する適正な税制を導入すべく関連法の改正を進める。国民の健康増進と疾病予防を目的とする塩税は現在、課税対象商品、税率の基準となる塩分含有量について検討を進めている。
 徴税効率向上に向けた改善については、税額算出の基準となる課税対象商品の価格設定について、納税者による販売価格の通知基準を厳格化する。特に生産コストの開示義務や生産・販売量データの信頼性に関する基準を見直す。販売価格設定に関する適正ガイドラインも設ける。違反者に対する追徴課税や違反金徴収の基準を明確化するため公定標準価格表も作成する。先端情報通信技術を利用することで、作業の迅速性と精度を確保する。
 タバコと酒については製品に電子印紙をQRコードとして貼付、消費者が手持ちの端末を使って脱税品ではないことを確認できる仕組みを設ける。製品のブランド名、内容、製造者・輸入者名、納税年月日、納品先、価格などの詳細情報をQRコードをスキャンすることで閲覧できるようにする。
 急激に変化する社会情勢や技術の進歩に局内の人員が対応できるような人材開発と育成も急務。局員のデジタル・スキルアップを推進することで、組織のデジタル化を進める。オンライン講座「Excise School」を開講し、自己啓発を支援する。局内業務のデジタル化では組織風土そのもののデジタル化を進める。納税者登録、納税申告、納税、税制面での優遇措置適用申請などの行政サービスのデジタル化だけでなく、税収予測や税制改革・見直しなどでビッグデータを活用し、解析システムを導入する。

◆EVボード決定

 国家EV政策委員会(EVボード)はハイブリッド車とマイルドハイブリッド車に7年間にわたって低税率を適用することを承認している。従来はエンジン車からバッテリーEVへ一っ飛びに移行させることを想定し、ハイブリッド車の税率は段階的に引き上げる方針でいた。しかし市場ではバッテリーEVだけでなく、ハイブリッド車の需要も大きいことから、2032年までハイブリッド車に対する優遇税率を維持することにした。二酸化炭素の排出量が1㌔㍍走行あたり100グラム以下のハイブリッド車の物品税は32年まで6%に固定される。排出量が100グラムを超えるが120グラム未満のハイブリッド車は9%の税率が適用される。従来の政策では、物品税率が26年から毎年2%ずつ段階的に引き上げることになっていた。
 EVボードはまたマイルドハイブリッド車についてもEVへの移行技術の一つと位置づけ、物品税優遇を適用することを決めている。二酸化炭素排出量が100グラム以下のマイルドハイブリッド車は26年から32年まで10%の税率が適用され、100グラムを超える車両には12%の税率が適用される。いずれもエンジン車の税率よりも低い。
 バッテリーの物品税は効率的な使用を促し、エネルギー・トランジションを支援するために再編する。税の基準はエネルギー密度(単位重量あたりのエネルギー)とライフサイクル(充電・放電サイクル)に基づくと説明した。また石油と石油製品の物品税構造に炭素税のメカニズムを組み込むが、税負担が増えないよう配慮する。
 クラヤー局長によれば、炭素税は内閣に提出する準備が整っている。税率は二酸化炭素換算トンあたり200バーツに排出係数を掛けた金額として算出される。燃料ごとに炭素排出量は異なるため、炭素税負担も各燃料ごとに異なる。

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