2025年1月17日(金)号

伊藤忠がタイウィワット保険に出資=タイの損害保険事業に進出

 伊藤忠商事は1月16日、SET上場の保険持ち株会社のタイウィワット・ホールディングス(TVH)の子会社で、タイとラオスで損害保険事業を展開するタイウィワット保険に出資すると発表した。タイの保険市場には成長の機会があると判断した。タイウィワット保険が実施する私募発行増資で新株を引き受けることでTVHと合意した。株式取得は関連当局の承認完了を以って、2月14日をメドに実行予定。伊藤忠はタイウィワット保険に約20%を出資する。投資額は約10億3400万バーツ。
 タイにおける保険加入者数は先進国と比べて少ないため、今後の成長余地は大きい。タイウィワット保険(TVI)は伊藤忠との資本提携により事業拡張の資金と機会を得る。
 TVIは40社以上がひしめくタイの損害保険市場で約3%のシェアを持ち、収益ベースで業界11位。UOB銀行やチャルーン・ポーカパン(CP)グループとの提携による保険販売チャネルを持ち、デジタル技術を活用した商品開発力を活かして、成長が著しい保険会社。引受保険料では19~23年の業界の年平均成長率4.2%を大きく上回る11.4%を実現している。特に、主力の自動車保険分野では、自動車エンジンのオン・オフに連動した実運転時間に基づいて保険料の計算を行なう「Pay-Per-Use保険」をタイで初めて開発するなど、革新的な商品を市場に送り出している。
 タイウィワット・ホールディングスのヂラパン・アサワタナクン社長兼CEOがタイ証券取引所(SET)に報告したところによれば、同社の取締役会はTVIが私募発行増資により登録資本金を7575万バーツ増やして3億300万バーツに増やすことを承認した。普通株575万株を発行し、伊藤忠が子会社のGRマネジメント(タイランド)社を通じて1株13.66バーツで引き受ける。伊藤忠の出資が完了した後もTVHはTVIの支配的株主であり続け、発行済み株式の79.15%を保有する。
 伊藤忠は香港やタイを中心に、日系企業では最大規模の保険仲介事業者(ブローカー)としてグローバルネットワークを構築している。タイでは30年以上にわたるブローカーとしての知見を有している。TVIへの出資を通じて東南アジアにおける元受保険分野に進出することで、ブローカーの立場では協業が困難だった日系・非日系企業との取引や、オートローンや消費者金融などの自社の既存事業との協業を実現させる。
 タイの損害保険市場は23年の保険料総額で約2850億バーツ。2018年以降は年率4%超で成長し、今後も自動車保険をはじめとする個人向け保険分野を中心に成長が予想されている。また、電子商取引(EC)などのデジタル市場も年率10%を超える成長が見込まれており、テクノロジーを活用したインシュアテック分野も成長が期待されている。
 伊藤忠は、ほけんの窓口グループ社をはじめとする日本国内のリテール保険分野に強みを有し、海外では東南アジアでのバイク保険の展開や、タイでのペット保険の販売など、海外現地でのリテール保険分野の取組みの強化を進めている。TVIとの資本提携を通じて、海外におけるリテール保険引受分野に進出し、事業領域と収益基盤の拡大を目指す。

第5回アセアン・デジタル相会合=首相がオンライン詐欺対策を提案

 ペートンターン首相は1月16日、バンコク都内のアバニ・プラス・リバーサイドホテルで開催された第5回アセアン・デジタル相会合の開会式に出席した[=写真]。加盟国の代表を歓迎するとともに、基調講演では域内のデジタル経済を安定的かつ持続可能に発展させ、すべての分野を包含するための協力の重要性を強調した。


 首相は東南アジア地域におけるデジタルの未来を築くため、①オンライン詐欺への対応②フェイクニュース対策③AIの活用の3点を課題に挙げた。
 オンライン詐欺は重大な脅威であり、この問題を解決するためには地域レベルでの協力が必要だと述べた。デジタル世界の安全を確保し、人々の信頼を高めるため、共同で対策を講じることが重要だとした。ニュースのねつ造や情報の歪曲が社会の信頼を損ねている問題について、首相はアセアンによるオンライン情報の検証・監視メカニズムの開発を提案した。また人々のデジタル・リテラシーを向上させ、インターネットを安全かつ責任を持って使用できるようにする重要性も訴えた。このほかAI技術を包括的かつ責任を持って活用するよう呼びかけた。タイは25年6月に国連教育科学文化機関(UNESCO)と共同でAI倫理に関する世界フォーラムを開催する予定で、アセアン加盟国の代表に参加を呼びかけた。
 首相はこれより前の15日の記者会見で、自身に詐欺電話がかかってきたことを明らかにしている。外国の指導者の声を模して寄付を要求する音声メッセージだったことを明かし、「コールセンター詐欺に非常に驚いた。手口は実に巧妙だった」と語った。コールセンター詐欺は固定電話や見覚えのない携帯電話番号で行なわれるが、今回の手口は初めて経験するもので、AIを使って外国の指導者の声を偽装するものだったという。
 首相によれば、最初はビデオクリップが送られてきて、一緒に仕事をしたいといった内容だった。返答した後、夜中に電話がかかってきたが、すでに就寝していたため、電話には出なかった。メッセージでは、タイがアセアンで唯一寄付をしていない国だとし、口座情報を送信して寄付を求めたという。首相はこの件をプラサート・チャントラルアントーン副首相兼デジタル経済社会相に報告し、対策を指示したことを付け加えた。

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