2025年1月31日(金)号

昨年の新車市場は26.2%減=ハイブリッド車が推進力に

 タイ国トヨタ自動車が1月30日に発表した昨年の新車販売台数は57万2675台にとどまり、前年を26.2%下回った。2年連続で市場が収縮する中、昨年はタイの自動車産業に影響を与えた注目すべき要因もあった。特にハイブリッド車(HEV)の人気が高まり、市場が低迷する時期において重要な推進力となった。ハイブリッド車の販売台数は29%増え、バッテリーEVと合わせて消費者の選択肢が多様化している。トヨタは今年の新車市場を60万台と見積もった。
 昨年の乗用車の販売台数は22万4148台(23.4%減)、商用車は34万8527台(27.9%減)で、商用車のうちPPVを含む1トン・ピックアップ車の販売台数は20万190台(38.4)にとどまった。
 昨年は国内市場の動向に影響を与えたさまざまな要因があった。景気の回復遅れによる購買力の低下、生活費の上昇、高止まりした金利、金融機関の自動車ローンの審査基準の厳格さなどが重なり、国内の自動車市場は収縮した。
 トヨタの販売台数は22万356台で、前年比17.1%減となったが、市場シェアは依然としてトップの地位を維持し、販売台数全体の38.5%を占めている。トヨタのエコカーの人気が市場シェアを支えており、特に乗用車市場においてはエコカーで引き続き市場シェアを維持し、トップの座を確保している。また、ハイブリッド車の販売比率が伸びており、特に「ヤリス・クロス」は、発売以来、好評を得ている。
 商用車市場においてもシェアは引き続きトップを維持し、市場シェアは44%を数える。トヨタは「ハイラックス」をさまざまな用途に対応できるように開発し、消費者から信頼を得ている。特に「ハイラックス・チャンプ」の成功が顕著だった。このモデルは顧客の多様なニーズに応えるため、カスタマイズできる点が特徴的で、1万1743台を販売した。ピックアップトラック市場で7.2%のシェアを占めている。
 トヨタの昨年の乗用車の販売台数は6万6912台(32.6%減)、商用車は15万3444台(7.9%減)、商用車のうちPPVを含む1トン・ピックアップは9万1001台(29.3%減)だった。
 今年のタイの自動車産業は、経済全体の回復とともに緩やかな回復を続けると予測した。需要面では、ビジネス活動や投資が回復し、観光業の成長が進むことで、自動車の需要は高まると期待される。政府の消費刺激策やインフラ投資の拡大が需要を押し上げる要因になる。政府による自動車産業支援策や販売促進戦略、自動車メーカー間での価格競争が一層激化することも予想され、これらの要素が、タイの自動車市場の回復を後押しするとみている。
 ただし世界経済の状況が引き続き輸出に影響を及ぼす可能性があることや、金融機関が依然として自動車ローンの融資基準を厳格に保つ可能性がある点は注意が必要。家計債務は依然として高水準にあり、不良債権比率も上昇しているため、自動車ローンに対する貸し渋り姿勢は続く見通し。トヨタはこのような状況を踏まえ、今年の新車市場を60万台と見積もった。前年比で約5%増と予測した。内訳は乗用車が23万5900台(5.0%増)、商用車が36万4100台(4.0%像)。
 トヨタの販売台数目標は23万1000台で、市場全体の成長率に等しい5%増を見込む。市場シェアは38.5%。乗用車は前年比19%増となる7万9300台を見込む一方、商用車は前年比1.0%減となる15万1700台と見積もった。
 トヨタの昨年の輸出台数は33万8107台で、前年比11%減にとどまった。国内市場向けと輸出向けを合わせた昨年の生産台数は53万6145台で、前年比14%減となった。今年の輸出目標は前年比1.0%減となる33万6184台で、国内市場向けと輸出向けを合わせた生産台数は53万7860台を見込む。
 モビリティ・カンパニーとしての進化を目指すトヨタが顧客に製品・サービスを提供する際に最も重視している原則の一つは、QDRで、「品質」「耐久性」「信頼性」を意味する。同社によれば、品質と信頼性で高い評価を得ており、基準を満たす製品を提供し、顧客の期待に応えることで、トヨタに対する信頼を継続的に築いている。顧客への総合的なサポートを重視し、高品質で耐久性があり、信頼性の高い自動車の生産に加え、全国に広がる部品供給とサービスセンターのネットワークを通じて顧客がトヨタ車を安心して使用できるようにしている。
 同社はアフターサービスの品質と標準も継続的に向上させ、接続技術(Connected)を活用した新たなサービスを提案し、顧客の利便性向上を目指していくとしている。

サイアム・セメント=昨年度の純利益は76%減

 サイアム・セメント・グループが1月30日にタイ証券取引所(SET)を通じて発表した24年度決算は大幅減益となった。24年の純利益は63億4200万バーツで、前年比で76%減少した。特別項目を除いた純利益は前年比で52%減となった。ただし営業キャッシュフローとも前年度からほぼ横ばいとなった。
 昨年度の売上高は約5112億バーツで、前年比2%増。SCGケミカルとSCGパッケージングの販売量の増加が貢献した。今年はタイならびにアセアン経済の改善にともない5%増を見込む。政府の経済刺激策が国内経済を活性化するほか、ベトナムとインドネシアの経済成長も世界平均を上回る見通し。取締役会は年間配当を1株あたり5.00バーツに決定した。配当総額は60億バーツ。昨年度の純利益の95%に相当する。
 昨年の営業キャッシュフローは539億4600万バーツ。コスト管理と高付加価値とイノベーションの推進、運転資金の削減、迅速な利益を生むハイリターンのプロジェクトに投資を絞り込んだことで、前年並みの水準を維持した。借入金は前四半期から減少した。
 タマサック・セータウドム社長兼CEO[=写真]は、石油化学の産業循環の下降、地政学的対立、エネルギーコストの変動、高金利など経営環境は厳しさが増した中で、営業キャッシュフローを維持できたのはグループの適応能力の高さを示していると述べた。昨年はキャッシュフロー管理を経営の中心に据え、強化する施策を進めてきた。運転資金を約62億バーツ圧縮したほか、事業運営と組織構造の見直しに着手し、利益を生まない事業を停止した。投資は高いリターンで迅速な回収が見込まれるプロジェクトに絞り込んだ。これにより第3四半期に負債は前四半期比で167億7700万バーツ減少した。自己資本負債倍率は0.7倍で、財務状況は堅固で強力になっている。24年末時点の現預金は533億3100万バーツに達している。


 タマサック社長兼CEOは、政府支出の拡大が特に外国企業の信頼感を高めると期待している。アセアンの経済が拡大すれば、顧客の購買力が強化され、セメントや建材の売上が増えるとみている。SCGディストリビューション&リテールはインドネシアで「ミトラ10」ブランドのホームセンターを56店展開しており、月間顧客数は100万人を超えている。25年までに100店の展開を目指している。
 また、ベトナムのロンソン石化コンビナート(LSP)のアップグレードに投資する計画を明らかにしている。北米やオーストラリアを含むいくつかの市場で新たなビジネス機会を探していることも付け加えた。
 SCGケミカルは、ロンソン石化コンビナートの基礎母材をナフサから割安なエタンに変更することで長期的な競争力を強化する。エタンの調達は米国のエンタープライズ・プロダクツ・パートナーズの関連会社と長期契約を結んだ。年間約100万㌧を調達する計画で、契約期間は15年間。エタンの貯蔵タンクと受け入れ設備の建設に7億㌦を投資する。2027年末までに完成予定。
 SCGセメント&グリーン・ソリューションズは、低炭素セメントの輸出を進めており、今年は約100万トンの輸出を見込んでいる。SCGデコールは、高強度タイル「X-PORCELAIN」の輸出を拡大し、今年は倍増を目指す。SCGパッケージングはポリマー包装材、食品包装、印刷用紙の輸出を増やす。
 SCGスマート・リビングは「ONNEX by SCG Smart Living」ブランドで空気洗浄やソーラー商品など、住宅の品質向上とエネルギーコスト削減を目指したスマート・ソリューションを提供する。低価格の商品も展開し、限られた予算の消費者の選択肢を増やす。屋根材、合成木材、外壁材などの商品群をラインナップする。
 SCGクリーナジーは24年に太陽光発電容量が548メガ㍗に達し、前年比21.5%増となった。30年までに3500メガ㍗に増やす目標を定めた。

その他のニュース

[経済ニュース]

財務省の最新経済予測=25年の成長率は2.5~3.5%

民間投資に改善の兆し=財務省の月例経済財政報告

EUとのFTA交渉=年内妥結の見通し

ノンケーム・ゴミ処理場=日本大使館の代表団が視察

[社会ニュース]
南部国境和平交渉=代表団選定作業を加速

ナコンパトムの警察官銃殺事件=被告の元区長に終身刑の判決

詐欺・資金洗浄容疑=セレブ弁護士を起訴

カリ鉱山開発に住民が反発=工業省に事業停止を陳情

「トサマラーチャン橋」が開通

[企業紹介]
セントラル・フード・ホールセール=「GOホールセール」でマクロに対抗

[データ]
2024年12月の国内自動車販売台数
財政局の24年12月の経済指標

あわせて読みたい
無料トライアル 【無料トライアルのご案内】 タイ経済パブリッシングは毎日(土日祝を除く)、A4サイズのPDF版ニュースレターを定期購読者様にメール配信しております。 購読料金...
よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

コメント

コメントする

目次