輸出と観光が成長を牽引=財務省の月例経済財政報告
財務省財政局が2月27日に発表した月例経済財政報告によれば、2025年1月のタイ経済は、7か月連続で拡大した物品輸出、拡大を続ける観光業、堅調な民間消費に支えられて拡大した。ただし、ポーンチャイ・ティラウェート局長は、製造業の生産状況や主要貿易相手国の経済政策がタイ経済に及ぼす影響については、引き続き注意深く監視する必要があると指摘した。
◇デマンドサイド
民間消費には改善の兆しが見られる。1月の新規二輪車登録台数は前年同月比2.1%増、季節調整後の前月比でも9.5%増となった。農家の実質所得も前年同月比で3.4%増加した。消費者信頼指数は前月の57.9ポイントから59.0ポイントに上昇した。政府の支援策や輸出、観光業の拡大が消費者の信頼感を高めた。しかしながら、乗用車の新規登録台数は前年同月比16.3%減少した。ただし季節調整後の前月比では15.4%増加している。
民間投資は減速傾向にあり、特に設備投資の鈍化が顕著になっている。2025年1月の商用車登録台数は前年同月比14.8%減少し、季節調整後では前月比4.3%減少した。また、不動産取引税収は前年同月比2.4%減少したが、季節調整後の前月比では1.5%増加した。
物品輸出は7か月連続で拡大した。1月の輸出額は252億7700万㌦に達し、前年同月比13.6%増となった。エネルギー・金・武器を除いた輸出は11.4%増を記録した。主要輸出品目は、コンピュータ・同周辺機器が45.0%増加し、エアコン・同部品は33.2%増、機械・同部品は28.1%増加した。天然ゴムは45.5%増、果物缶詰・同加工品は13.4%増、ペットフードは13.0%増、水産缶詰・同加工品は11.8%増となった。一方で、米、タピオカ製品、自動車・同部品の輸出は減少した。仕向け地別では、インド向けが129.8%増、米国向けが22.4%増、中国向けが13.2%増となったが、オセアニア向けは26.9%減少し、中東向けも2.1%減少した。
◇サプライサイド
観光業は回復基調を維持している。1月の外国人観光客数は370万人に達し、前年同月比22.2%増加となった。季節調整後の前月比では6.2%増となった主な外国人観光客市場は中国、マレーシア、ロシア、韓国、インド。国内旅行者数は2430万人で、前年同月比3.6%増加したが、季節調整後の前月比では1.1%減となった。
一方、農業部門については、1月の農産物生産指数の動向をみると、前年同月比で3.8%の成長を記録し、季節調整後の前月比でも0.8%増加した。米やパーム油などの主要作物の生産増加によるもので、キャッサバやトウモロコシの生産は前月比で減少した。
また、工業部門については、1月の工業部門信頼感指数が前月の90.1ポイントから91.6ポイントに上昇した。指数の改善は、米国、中国、EU市場での需要増による輸出の拡大が主な要因となっている。さらに、観光業も引き続き成長を続けている。
◇世界経済情勢
世界経済は引き続き拡大し、景気の回復が続いている。1月の世界総合PMI(購買担当者指数)は51.8ポイントで、前月の52.6ポイントから小幅低下した。製造業PMIは49.6ポイントから50.1ポイントに上昇し、拡大基調を示している。サービス業PMIは53.8ポイントから52.2ポイントに低下したものの、24か月連続で中間値(50ポイント)を超えており、引き続き拡大傾向にある。インフレ率は多くの国で中央銀行の目標に近づいており、各国の金融緩和政策が世界経済の回復を支えている。地政学的リスクについては依然として不確実性が高く、監視が必要となっている。
◇経済安定性
経済安定性は健全な状態を保っている。1月の一般インフレ率は1.32%、コアインフレ率は0.83%だった。公的債務残高は2024年12月末時点でGDPの63.9%に相当し、財政の安定性基準に収まっている。外貨準備高は1月末時点で2421億㌦を維持しており、国際的な経済変動にも対応可能な水準となっている。
タイ航空、経営再建の最終段階へ=純損失269億バーツも業績回復基調
事業更生法の適用を受けて経営再建中のタイ航空(THAI)は2月26日に開いた記者会見で2024年度決算を発表した。特別項目を除いた総収入は1879億8900万バーツで、2023年の1610億6700万バーツから16.7%増加した。特別項目を除いた営業利益(EBIT)は415億1500万バーツで、前年の402億1100万バーツから3.2%増加した。2024年のEBITベースの利益率は22.1%であり、更生計画の予測を上回った。
2024年の連結財務諸表によると、最終損益は269億100万バーツの純損失となった。昨年11月に完了した再建計画に基づく債務株式化による一時的な損失452億7100万バーツを計上したためで、その大部分(405億8200万バーツ)は、更生計画で定めた株式転換価格が公正な価値を下回ったために生じた会計上の損失。また、一部債権者に対する債務を予定よりも早く返済したことによる損失も含まれる。これらは会計上の一時的な損失で、THAIの業務や更生計画の完了に影響を及ぼさないことを強調した。資本リストラ後の株主資本はプラスの状態を維持している。
◆財務状況と再建計画の進捗
2024年末時点でのEBITDA(航空機リース費用控除後)は414億7300万バーツで、更生計画の条件である200億バーツを大幅に上回った。財務諸表における株主資本は、2023年のマイナス433億5200万バーツから、プラス454億9500万バーツに転じた。過去12か月の営業利益と資本リストラの結果であり、THAIは事業更生計画の条件の一つを達成した。THAI株のタイ証券取引所(SET)での取引停止措置は解除されることになり、事業更生の終結を待って、取引は再開される。

更生計画の最後の条件を満たすため、事業更生計画遂行委員会は4月18日に臨時株主総会を開くことを決定した。これに先立ち、株主名簿確定日を2025年3月14日に設定した。この総会では、取締役数を11人または12人とし、現職取締役3名(ピヤサワット・アムラナン氏、チャーンシン・トリヌチャコン氏、アムナート・ヂーラマニー空軍大将)と、新任取締役8~9名が選出される。
新たに指名された取締役候補は、ラワロン・セーンサニット氏、クラヤー・タンティテーミット氏、チャークリー・バムルンウォン氏、タッチャイ・ピタニーラブット警察大将、チャートチャイ・ロートラタナーンクン氏、チャイ・イアムシリ氏と社外取締役候補のナパコン・タナスワンナカセーム氏、ヤンヨン・デートピラタナモンコン氏、サムリット・サムニアン氏。株主総会で承認を得た後、中央破産裁判所の許可を得て、取締役数の変更と新任取締役の登録を行ない、その後、事業更生の終結を正式に裁判所へ申請する。
◆減資と財務健全化
事業更生計画遂行委員会は、THAIの累積損失を一掃するため、株式の額面価格を10.00バーツから1.30バーツに引き下げることを承認した。これにより、登録資本金と払込済み資本金は2830億3300万バーツから367億9400万バーツに減少し、累積損失は1億800万バーツまで減る。
減資は、債権者やTHAIに損失をもたらすものではなく、財務諸表上の株主資本にも影響を与えない。また、株式の価値自体にも影響を及ぼさず、今後の復配の機会を生み出し、投資家により魅力的になると説明した。また今後、新株を発行し、事業資金や債務返済に充てることも容易になる。
◆2024年の業績
THAIと子会社の2024年の総収入(特別項目を除く)は1879億8900万バーツで、前年比16.7%増加した。旅客数は1614万人で、前年から238万人増加した。一方、有償座席占有率は前年の79.7%から78.8%へとわずかに低下した。収入の増加は、航空・観光業の回復と旅客需要の大幅な増加によるもので、THAIは需要増に対応するため、機材の拡充、運航便数の増加、新規就航路線の追加を進めている。
昨年の総費用(特別項目を除く)は1464億7400万バーツで、前年の1208億5600万バーツから21.2%増加した。総費用の34.5%を占めた燃料費の上昇が響いた。営業利益(特別項目を除く)は415億1500万バーツで、前年の402億1100万バーツを上回った。
一方で、会計基準TFRS9に基づく金融費用は187億8100万バーツ、特別項目による費用は492億6000万バーツに達した。大部分は債務リストラによる損失で、会計上の一時的な処理に過ぎない。
2024年の連結純損失は269億100万バーツ。前年は281億2300万バーツの純利益を計上していた。航空機リース費用を控除したEBITDAは418億3900万バーツで、前年から10億3600万バーツ減少した。
2024年12月31日時点での総資産は2925億800万バーツで、前年末比535億1700万バーツ、率にして22.4%増加した。一方、負債は2469億1900万バーツで、前年末比12.5%減少した。株主資本は455億8900万バーツで、前年末比887億3100万バーツ増加した。
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