2024年7月11日(木)号

上院議員の選出結果を認定=ECが10日に発表

 選挙委員会(EC)は7月10日、上院議員200人と補欠100人のリストを正式認定した。6月26日の最終選考で選ばれた300人全員を認定した。新しい上院議会は20の職業分野を代表する議員で構成され、5月10日に任期が終了した軍事政権任命の250人から上院を引き継ぐ。
 新たな上院議員は首相指名に加わることはできないが、独立機関の委員や憲法裁判所判事、検察庁長官などを承認する人事権を持つ。また憲法改正の提案には200人の上院議員の3分の1、少なくとも67人の支持が必要で、支持がなければ憲法の改正はできない。一般の法令については、上院が否決しても下院に差し戻され、下院で再び可決されれば成立する。
 サウェーン・ブンミー事務局長[=写真]は、上院議員選出に関する憲法付属法第42条に基づく要件を満たしているため、選出結果の認定を委員会が決議したと説明した。
 不正行為の疑いは、①候補者の資格と禁止態様、②郡・県・国レベルでの選出過程、③投票における談合などの3つに分けて収集していることを明らかにした。ECが証拠収集している不正申し立ては47件あり、警察庁から10人、特別事件捜査局(DSI)から10人、資金洗浄防止事務局(AMLO)から3人の応援を得て証拠を集めているという。
 今回の上院議員選出そのものの適法性を疑う申し立ては18件あったが、いずれも最高裁判所が棄却済み。サウェーン事務局長は、係争中の訴訟がもう存在しないことから、選出プロセスそのものは正当とみなされると説明した。不正行為の摘発は優先事項で、証拠収集しているが、現時点では不正行為を認定できるまでには至っておらず、その意味では選出が公正だったとはまだ言えないと述べている。確たる証拠が集まれば最高裁判所に審理を申し立てる。
 新たな上院議員は大半が旧体制と密接な関係にあるとされている。選出された上院議員は11~12日に国会議事堂の上院事務局に出向き、認定証明書を受け取る。なお上院の新議長には、行政・安全保障グループから最多投票で選出されたクリアンクライ・シーラック陸軍大将が有力視されている。同大将はアヌティン・チャーンウィラクン副首相兼内相(プームチャイタイ党党首)とは近しい関係にあるとされる。

デジタルマネー給付政策=BAACからの借入回避へ

 「デジタルウォレットを介した1万バーツ給付プログラム」(デジタルマネー給付政策)を監督する小委員会の会合が7月10日に開かれ、政策の詳細について協議した。財源については、農業・農協銀行(BAAC)からの借入案に批判が出ており、合法性への懸念もあることから最終決定を見送った。会合後に会見したチュラパン・アモンウィワット財務副大臣は、BAACの資金は使わなくても済むと述べている。
 政府はこれより前、同政策の必要経費を5000億バーツと算定。24年度予算から1750億バーツ、25年度予算から1527億バーツ、BAACからの借入1723億バーツで賄う方針を打ち出していた。チュラパン氏は、政策経費が5000億バーツに達しないと予想されることを根拠に、BAACからの借入を取りやめる可能性を示している。
 プラユット政府がコロナ禍で実施した現金給付政策の「コンラクルン」では、給付対象者のうち、登録して、実際に給付を受けた者は全体の9割に満たず、1割超の人が登録をしなかった。この例から、デジタルマネー給付でも1割が登録しない可能性があり、5000万人の対象者のうち実際に給付を受ける者は4500万人にとどまると推測されるため、経費も4500億バーツで済むことになる。今年9月末に期末を迎える24年度予算と同補正予算を活用するために、登録は今年9月末までに締め切る方針。チュラパン氏は、給付対象者をさらに絞り込むのではなく、対象者は5000万人で変わらないことを強調した。

パオプーム財務副大臣(左)とチュラパン財務副大臣


 同政策はプアタイ党の選挙公約で、16歳以上のタイ国民全員に1人1万バーツを給付するとしていた。セーター政府は同政策への批判を受け、高所得者や高額の預金を持つ者を給付対象から外すことを決定している。
 10日の会合で確認した財源は、24年度補正予算が1220億バーツ、24年度中央予算の予備費が430億バーツ、25年度予算が1527億バーツ。経費を4500億バーツとした場合でも、1300億バーツほど足りない。そこで、政府機関に配分しているものの、年度内に消化できそうにない国家予算1323億バーツを付け替えることで対処する構想が浮上した。パオプーム・ローチャナサクン財務副大臣は、同案を15日にセーター首相が議長を務めるデジタルマネー政策委員会の会議に提案すると語っている。
 パオプーム財務副大臣によれば、この日の会合では、デジタルマネーで購入できない商品のリスト(ネガティブリスト)も検討した。携帯電話のほか、輸入品が多いことを理由に電化製品も不可とする方針を示した。
 パオプーム氏は、デジタルマネーが最初、給付を受けた消費者と商店の間で、消費者の登録する郡内での決済に使用されるが、その後は全国での商店と商店との取引に使用されることで、経済システムを循環し、最終的に現金化されると説明した。警察庁からは追跡を容易にするため、現金化ができる商店は月極めの携帯電話SIM登録を義務付けるとした追加条件を設ける提案があったことを明らかにしている。
 なお同政策の経済効果については、今年の経済には大きな効果を及ぼしそうになく、効果が目に見えて現れるのは25年になると述べている。

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