2024年8月21日(水)号

PTTが5か年事業戦略=EV充電事業に注力

 PTT社は事業構造の抜本的な調整を進める計画だ。中核事業の石油精製や石化事業の比重を減らし、EV充電や生命科学事業を強化する。タイ国内のバッテリーEV市場の拡大に合わせてEV充電サービス事業に注力するが、EV組立事業を含む他のEV関連事業は縮小または撤退する。また石油精製や石化事業もグループ会社の株式の一部売却で投資家との協議を進めていく。
 コンクラパン・イントラジェーン社長兼CEOが8月20日に開いた業績発表会見で明らかにしたところによれば、石油精製、石油化学事業の見直しを進める。保有する株式の一部売却を検討中で、対象となるグループ会社にはPTTグローバル・ケミカル、タイオイル、IRPCの3社が含まれる可能性もある。いずれもタイ証券取引所(SET)上場企業で、石化、製油事業のリーディング・カンパニー。石油事業と非石油事業を抜本的に見直す取組の一環だと述べた。

事業戦略を説明するコンクラパン社長兼CEO


 PTTの子会社であるPTTオイル&リテール・ビジネス社(OR)が運営するEV充電事業は堅調で、成長を続けている。同グループの「EV Station PluZ」は年内に600か所に拡充し、2030年までに全国7000か所に増やす目標を定めている。PTTグループはこれとは別に、完全子会社のアルン・プラスが「on-ion」ブランドでEV充電ステーションを運営しているほか、一般家庭向けのEV充電器の販売と設置サービスも手がけている。コンクラパン社長は自社のEV充電事業について、長期的には単一ブランドで運営する予定だと語っている。
 EV事業では、広州を拠点とする中国のEVメーカー 「Xpeng」のEV組立、バッテリー生産事業の合弁パートナーになっているが、充電ステーション以外のEV事業については再検討する考え。
 この日発表した今年上半期の純利益は644億3700万バーツで、前年同期比34.4%増となった。原油相場の上昇を受けた在庫評価益の増加で製油事業の業績が好調だった。石化事業も原料ナフサと合成樹脂価格のスプレッドの拡大を受けて業績が伸長した。石油探査・採掘事業は平均価格が下落したものの、販売量増により業績が拡大した。このほか投資と資産の売却益が増加したが、為替差損とデリバティブの損失も増加した。
 PTTの利益構造は「ハイドロカーボン事業」が92%、それ以外が8%となっている。コンクラパン社長は「Together For Sustainable Thailand, Sustainable World」(持続可能なタイ、持続可能な世界のため一緒に)」というビジョンの下で自社の強みを増やし、競争力を強化するグループの5か年事業戦略を明らかにした。中核事業であるハイドロカーボン事業は自社が得意とするところだが、温室効果ガス排出量の削減が求められるため、急速に変化する環境に適応していかなければならないと述べている。石油川上事業や電力事業は競争力のあるコストを実現するためパートナーと協力して進める必要があるとした。5か年事業戦略に沿った具体的な事業計画や投資計画は今年末までにとりまとめる。
 コンクラパン社長はノン・ハイドロカーボン事業について、2つの観点から事業を評価すると説明した。第1に事業が魅力的であること、第2に自社の強みを活かすことができ、強力なパートナーがいること。EV関連事業はアルンプラス、ホライゾンプラス、EVミー・プラスなどの子会社群を再編し、ブランドを統一して、全国に事業拠点を持つORのエコシステムを活用することで事業の成長を目指す。物流事業は資産の保有を抑えて財務負担を軽くする「アセットライト経営」の原則を守る。パートナーを確保して、グループの中核事業に関連し、需要がある事業に注力する。生命科学事業では子会社のイノビック(アジア)の株式を公開し、自立できるようにする。

クルンシー・フィノベート=テック・スタートアップ支援

 アユタヤ銀行(クルンシー)のコーポレート・ベンチャー・キャピタル(VC)、クルンシー・フィノベート(KFin)はEフラストラクチャー社(EfraStructure)と提携し、アセアン域内のテック・スタートアップに出資するプライベート・エクイティファンド「Finno Efra(フィノEフラ)」を立ち上げる。今年中に募集を開始し、10億~13億バーツのファンド規模を見込んでいる。
 KFinのサム・タンサクン社長によれば、ファンドマネージャーのワン・アセット・マネージメント社を通じて個人投資家からの出資を募る。最低投資額は50万バーツ。またアユタヤ銀行の法人顧客にも最低投資額3800万バーツで出資を呼び掛ける。自社もファンドに2億バーツを投資する。
 「フィノEフラ」はアセアン域内のテック・スタートアップ50社への出資を当面の目標に掲げている。うち60%をタイ国内のスタートアップに割り振る。アユタヤ銀行の事業基盤がベトナム、インドネシア、フィリピンにもあることから、残り40%はこれら3か国が中心になる見込み。金融、教育、医療、農業、通信、小売、人材開発、旅行、電子商取引などの分野のテック・スタートアップをターゲットとし、シリーズAの資金調達を主に支援する。1社あたりの出資額は800万~4000万バーツを想定している。投資期間は4年間で、年15%のリターンを見込む。
 サム社長はシリーズAについて、「スタートアップにとって最初の大規模資金調達となる重要なステップ。市場での認知度確立を通じた事業の足掛かりを得る大事な時期」と述べている。タイのVCは主にシリーズAへの出資を重視するのに対し、他のアセアン諸国のVCは前段階を重視している。KFinとEフラストラクチャーはシリーズAの前段階であるシード・ステージ、プレ・シリーズAステージのスタートアップを支援する「フィノEフラ・アクセラレーター・プログラム」も計画している。
 Eフラストラクチャー社のCEOを務めるパウット・ポンウィタヤパヌ氏も、シリーズA前段階におけるスタートアップ支援の重要性を指摘する。「新たなスタートアップの育成にとってアクセラレーター・プログラムのニーズは急速に高まっている」と述べている。プログラムではスタートアップの成功に必要なあらゆる情報や知識を提供するための包括的なカリキュラムを用意する。受講期間は4か月、1コースあたりの受講者を10社に絞り込むことで内容の充実を図る。

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