2024年8月22日(木)号

中銀の金融政策委員会=政策金利2.5%に据え置き

 タイ中央銀行の金融政策委員会(MPC)は、8月21日に開いた政策決定会合で政策金利を年2.5%に据え置いた。6対1の多数決で、1人の委員は0.25%幅での引き下げを主張した。タイ経済は観光業と国内需要が支えており、物品輸出も徐々に回復しているため、従来の見積もりどおりに拡大する可能性が高いと評価した。インフレ率は今年末までに誘導目標範囲に戻すと見ている。
 会見したピティ・ディサヤタット総裁補によれば、大半の委員は現在の金利水準が潜在成長率へと向かい始めた経済状況と整合し、マクロ経済の安定にも寄与すると考えている。このため多くの委員が今会合で政策金利の据え置きを支持したが、金融情勢と経済に負の影響を及ぼす可能性がある債権の質の劣化には目配りが欠かせないとの見解を共有した。1人の委員は、構造的問題により潜在成長率が低下していることを反映させるとともに、借り手の債務返済負担を軽減するため政策金利を0.25パーセント幅で引き下げるべきだと主張した。
 タイ経済は従来予想どおりの成長が見込まれている。主に観光業と国内需要が牽引しているが、これまで力強い成長を見せていた民間消費は今後の減速が見込まれている。一部の輸出品は構造的な問題から競争力が低下しているものの、物品輸出と製造業の生産は徐々に回復しつつある。所得の回復は経済主体間で不均一なままで、製造業と自営業者の所得は他のグループと比べて回復が遅れている。このため会合では今後の民間投資と消費の下振れリスクを注視していくことを確認した。
 物価に関しては、気候条件の改善による収量増を受けて農産物価格が引き続き低迷する見通しで、一般インフレ率は前回会合での評価に比べて低下する。コアインフレ率はエネルギー価格と原材料価格の上昇ペースが緩やかになっていることや、輸入品との価格競争の激化などから引き続き低位にとどまりそう。中期的なインフレ期待は誘導目標に沿っており、一般インフレ率は今年末までに徐々に目標範囲に戻ると予想。ただし政府による各種補助金が延長される可能性もあり、追跡が必要だとした。
 金融環境は全体的にやや引き締まった。主要先進国の経済見通しや金融政策に関する市場の見方が目まぐるしく変わり、金融市場は不安定になっている。バーツは対ドルで上昇し、タイ国債利回りは米国債利回りに連動して低下した。商業銀行や債券市場を通じた民間部門の資金調達コストは比較的安定し、貸出残高は横ばいとなっている。ただし自動車やエレクトロニクス業界向けの融資は構造的な要因もあって減少した。中小企業向け融資は信用リスクの上昇から減少した。家計向け貸付は伸びが鈍化し、債権の質が劣化している。所得の回復が遅れている世帯の債務返済能力は低下している。ピティ氏によれば、債権の質の劣化が借入コストや貸出の伸びに及ぼす影響を注意深く監視することが重要で、経済活動に影響を及ぼしかねないとMPCは考えている。
 MPCは中小企業が融資を受けるにあたって直面している課題を認識し、信用保証制度など、この問題に対処するための措置を支持している。また家計債務問題の解消を促進するため、タイ中央銀行が進めている対象を絞った債務リストラ措置を支持する考えを示した。
 ピティ氏は、ペートンターン新政権の発足を見据え、現在の金融政策の枠組みが物価の安定を維持し、持続可能な成長を支え、金融の安定を保つ上で適切だと強調している。現在の政策金利は経済成長とインフレの見通しと整合し、長期的にマクロ経済と金融の安定を促すと説明した。
 タイ工業連盟(FTI)のクリアンクライ・ティアンヌクン会長は、MPCの金利据え置き決定に失望している。世界経済が減速傾向にあり、多くの国の中央銀行が金利を段階的に引き下げ始めているためで、経済界は利下げを期待していた。MPCはタイ経済が成長軌道にあるとしているが、経済は減速しているというのが経済界の見方。企業部門にとって財務コスト、特に借入金の金利負担は大きな問題になっていると主張している。
 タイ商業会議所(TCC)のサナン・アンウボンクン会頭は、米連邦準備制度理事会(FRB)の利下げを多くの国の中銀が待っており、それまでは金利を維持していると述べ、MPCが今回の会合で金利を据え置いたことに一定の理解を示している。FRBが9月に開く会合での利下げが見込まれていることから、MPCも追って金利を引き下げると見ている。

バーツの対ドルレート=34か月ぶりの高値

 8月21日の外為市場ではバーツが続伸し、タイ中央銀行発表の参照レートで1ドル=34.207バーツをつけた。34か月ぶりのバーツ高水準。米ドル安の裏返しだが、中銀の金融政策委員会が政策金利据え置きを決定したことがバーツ高の要因となった。また米国の9月の利下げを見越して海外投資マネーがタイ株式市場と債券市場に流入している。

WHAコーポレーション=今年の分譲面積2400ライ

 工業団地開発・運営のWHAコーポレーションは、今年第3四半期の分譲額が今年のピークに達するとの見通しを明らかにした。8月中に大口案件が2、3件まとまる見通しになっている。通常は最終四半期がピーク。
 チャリーポン・ジャルコンサクンCEO[=写真]によれば、通年の分譲面積は年初目標の2275ライを上回って2400ライを超える見込み。9月にも新たな目標を明らかにする。すでに売買合意し、引き渡し待ちの工場用地がベトナムの8ライを含め879ライある。
 チャリーポンCEOによれば、EVを含む自動車工業で中国からの生産拠点の移転が進んでいるほか、電子・半導体産業、データセンターなどの先端技術産業への投資が増えている。同社は例年、年1か所の工業団地を開発または拡張しているが、今年は5か所を同時に開発している。分譲価格が上昇していることからも業績は大幅に伸びる見通し。
 倉庫事業は賃貸スペースが20万平米増えた。発電事業は持分発電容量が1000メガ㍗に達している。グリーン・ロジスティック事業ではレンタルEV1000台を配備した。
 6月末時点の手持資金は55億バーツに達し、資金繰りに問題はない。下半期に返済期日を迎える有利子負債は総額で39億バーツで、やり繰りできる。金融機関の信用も厚く、借入で資金を調達することはいつでも可能だと述べている。自社の不動産投資信託(REIT)のWHARTは増資に踏み切らないことが決まった。投資口保持者の総会で増資案が否決されたが、チャリーポンCEOは資金繰りに全く問題はないと強調している。REITはコロナ禍でも年0.7バーツの配当を実施するなど健全な状態を維持しており、増資できないことの直接的な影響はないという。
 セーター首相の失職という国内政治がもたらす事業への影響については、すぐに次期首相が指名されたこと、連立与党の枠組が維持されたことなどから政策の継続が保証されると見ている。自社を含めた事業活動への影響はほとんどないとの見方を示した。

日産が「ナバラ」新モデル

 日産自動車(タイランド)の藤木稔大社長[=写真下・左]は8月15日に開いた新車発表会見で、1トン・ピックアップ・トラック「ナバラ」の最新モデルを披露した。これまで以上に高級感があり、スポーティなインテリア・デザインが特長。小売価格は最もグレードの低い「SL 6 MT」で65万9000バーツ、最上位PROシリーズの「PRO-4X 4WD 7AT」で117万5000バーツ。

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