仮想銀行免許=最大5グループが申請へ
タイ中央銀行が免許申請を受け付けている仮想銀行(ヴァーチャルバンク)は最大5グループが申請する見通しとなっている。中銀は仮想銀行免許の交付数を限定していないが、競争を生み出す一方で、乱立による過当競争は避けたい意向で、免許の数は3件程度に絞り込む考え。9月19日に申請を締め切る。
仮想銀行は物理的な支店を持たず、デジタルプラットフォームを通じて金融サービスを提供する。伝統的な銀行と同様のサービスを提供できる。金融セクターにおける競争とイノベーションを促進し、消費者により多様な金融サービスを提供することが狙い。
中銀はこれまで銀行が相手にしてこなかった脆弱な層が銀行サービスにアクセスできるよう、金融包摂(ファイナンシャル・インクルージョン)を重視して仮想銀行の免許制度の創設を決めた。仮想銀行の設立によりデジタル技術を活用した新しいサービスが普及することを期待している。
免許は国内外の企業が申請できるが、取得にあたっては厳格な審査が実施される。登録資本金は50億バーツ以上で、技術基盤、顧客保護の仕組みを確立しなければならない。財務の健全性、ビジネスモデル、技術力、リスク管理能力が審査される。
免許申請をいち早く表明したのは、サイアム商業銀行(SCB)を傘下に置く金融持ち株会社のSCB・X。昨年、中銀が概要を発表した直後から韓国の仮想銀行大手のカカオバンクと組むと公表してきた。コンソーシアムには中国のテンセントが設立し、成功を収めているデジタル銀行であるウィーバンクも加わるもよう。
クルンタイ銀行も早い段階で移動通信大手のAISと組んで免許申請すると公言してきた。同連合にはPTTオイル&リテール・ビジネス社(OR)とガルフ・エナジー・デベロップメント社(GULF)も加わる。
電子財布のトゥルーマネーを擁するCPグループも免許取得を目指す。7イレブンのネットワークを活かせる強みがある。中国のアリババ・グループのアント・グループと提携する。
最近になって免許取得に関心を示したのはBTSグループ・ホールディング。グループの金融サービス部門、VGIが免許申請を予定している。パートナーは明らかにしていないが、バンコク銀行、JAYマートと組むものと見られている。
オンライン通販「ショッピー」を経営するシンガポールのシー・グループも、タイでの仮想銀行業務に関心を示している。シンガポールで仮想銀行のマリバンクを設立済み。シー・グループのコンソーシアムにはカシコン銀行が加わる可能性もある。
セータプット中銀総裁=政策金利引き下げ示唆
タイ中央銀行のセータプット・スティワートナルプット総裁[=写真]は8月24日、報道陣をパタヤ旅行に招待した「BOTプレス・トリップ2024」で演説し、政策金利を下げるべきだとする各界の意見に対して中銀がこれまで以上にオープンになっていると語った。金融政策委員会(MPC)の次回会合以降の利下げの可能性を示唆したと受け止められている。中銀が特定の問題で政府と異なる見解を持っていても財務省とは協力すると述べた。
MPCは21日の会合で政策金利を年2.5%に据え置いている。現在のタイ経済の全体像を見ると、第2四半期の経済成長率(2.3%増)は中銀の予想どおりの結果だったと述べている。タイ経済は全体として徐々に潜在成長率に達する見通しにあり、経済情勢の評価に変わりはないが、いくつかの側面でリスクの増大は認められるとした。特に民間投資の収縮を懸念材料と指摘した。
一方、プアタイ党政権による国政運営を影で差配するタクシン元首相は、22日の講演で中銀を強く批判した。元首相は独立性を尊重するとしつつも、財務大臣が中銀やタイ銀行協会と議論するよう提案している。地方経済を活性化するために中銀が貨幣供給量を増やし、商業銀行を指導して中小事業者への融資にもっと積極的に取り組ませるよう求めている。これに対しセータプット総裁は中銀の独立性には説明責任が伴うと述べた上で、誰とも協力する用意があると表明した。
政府からの政策金利の引き下げ要請を頑なに拒否してきた中銀総裁が態度をやや軟化させた背景には、米国の金利動向とタイ国内の信用収縮(クレジットクランチ)への懸念がある。米連邦準備制度理事会(FRB)による政策金利の引き下げは既定路線で、早ければ9月の会合で利下げを開始する。日本を除く主要国の中銀は、米国の利下げを待ってから自国の金利を引き下げる構えで、米国が利下げを開始すれば世界的な金利低下の動きが加速する。一方、国内では商業銀行の融資条件の急激な厳格化がマネー循環の目詰まりをもたらしている。総裁は与信動向を注意深く監視していると述べた。タクシン元首相は、銀行が中小企業の資金繰り難には応えず、リスクの低い国債で運用していると批判している。
同総裁によれば、自動車業界における厳しい価格競争を受け、信用リスクを警戒する金融機関は自動車ローンの実行を抑制している。中小企業向け融資の減少も信用リスクの上昇が理由。中銀は政策金利を決定するにあたって、経済成長、インフレ率、金融の安定という3つの要素を評価している。今後の政策金利の調整はマクロ経済の要因と金融市場との関連性に注意を払うことになると説明している。
銀行は預保機構への保険料のほか、97年金融危機の破綻処理で生じた金融機関再建開発基金(FIDF)の損失穴埋めのため、預金残高の0.46%を減債基金に拠出している。タクシン元首相はこの拠出金を減額することで流動性を高めるべきだと提案しているが、総裁はFIDF債務の返済期間が長引くことになるとして否定的な見解を示している。
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