消費者信頼感指数=6か月連続で悪化
タイ商業会議所大学(UTCC)が9月12日に発表した8月の消費者信頼感指数は56.5ポイントにとどまり、前月の57.7ポイントを下回った。タナワット・ポンウィチャイ学長によれば、指数の前月比での下落は6か月連続で、昨年8月以降の13か月で最低水準に落ち込んだ。景気回復が遅れていることと生活費の上昇を懸念している。ロシア・ウクライナ戦争やイスラエルとハマスの戦闘などの地政学的対立も長期化しており、国内の購買力、観光業、輸出セクター、一般企業や将来の雇用に対して心理的な影響を及ぼしている。
現在の消費者信頼感指数は前月の41.5ポイントから40.4ポイントに低下し、将来の指数も65.4ポイントから64.3ポイントに低下した。
8月前半は、憲法裁判所による前進党の解党判断、セーター首相の大臣資格失効判断が立て続けにあり、政治的不確実性が高まった。しかし月後半には新政権の発足が明確になり、政治情勢は安定へと向かい始めている。消費者の多くは経済情勢を強く懸念し、景気の早期回復への期待を失いつつある。新政権発足の見通しは立ったものの、政府の経済刺激策は具体的な内容が不明なままで、特にデジタルマネー給付政策の先行き不透明が信頼感の悪化につながった。
UTCCはデジタルマネー給付政策が今年第4四半期に実施されれば、通年の経済成長率は2.6~2.8%に上振れし、同政策が先送りになる場合には2.4~2.6%増にとどまると見積もっている。
セーター首相の失職からわずか2日後に、ペートンターン・チナワット氏が首相に指名されたことは消費者の信頼感にプラスに寄与した。また政府によるビザ免除措置や滞在許可期間の延長政策もあって外国人観光客は増え続けている。外国人観光客が支出するマネーの循環が生じ、経済活動は上向いている。セーター政府はTier2に分類される55県の観光を刺激するための税制措置を11月末まで実施中。
国家経済社会開発評議会(NESDC)事務局は、第2四半期の経済成長率が2.3%と、前四半期の1.6%から加速したことを明らかにし、通年の経済成長率を2.3~2.8%と予測している。7月の物品輸出は257億2060万㌦を数え、前年同月比で15.3%増という大幅な伸びを記録した。主要農産物の価格は上昇、または高値圏で安定し、農家の所得が増え、地方県の購買力は改善に向かっている。国内燃油小売価格もガソリン価格が前月比で1㍑あたり2バーツ値下がりした。8月には株価も上昇し、8月末のSET株価指数は1359.07ポイントと、7月末時点から38.21ポイント上昇した。バーツ相場は8月末時点で1ドル=34.755バーツとなり、7月末時点の36.295バーツから上昇している。バーツ高は海外からマネーが流入していることを物語っている。
しかし消費者は景気回復を実感しておらず、むしろ回復が遅れていると感じている。所得の伸びが生活費の上昇に追い付いていない。北部地方は洪水被害に見舞われており、2011年の大洪水の再来を懸念する消費者が増えた。タイ中央銀行は政策金利を年2.5%で据え置いており、金利は下がる気配がない。また地政学的対立も長期化し、輸出とタイ経済に対する影響を懸念している。
景気全般に対する消費者信頼感指数は50.2ポイントで、6か月連続で下落し、直近15か月間で最低水準に落ち込んだ。雇用機会に対する信頼感指数は53.9ポイントで、6か月連続で下落し、直近12か月で最低となった。将来所得に対する信頼感指数は65.6ポイントで、6か月連続で下落し、直近12か月で最低となった。
一方、消費者の幸福感指数は8月に61.3ポイントとなり、6か月連続で下落した。指数は最近の16か月で最低となった。
北部地方の洪水被害拡大=首相が緊急閣議を招集
ペートンターン首相は9月12日午前中に国会での所信表明演説を終えた後、与野党による質疑応答の合間を縫って、午後2時から主要閣僚を呼んで国会議事堂内で緊急閣議を開いた[=写真]。北部地方のチェンライ県とチェンマイ県が深刻な洪水被害を受けているためで、被災者救助を急ぐよう内務省、国防省、警察庁などに指示した。また洪水状況が緩和した後のインフラの損傷調査と復旧計画、現地住民からの要請の聴取、損傷した住宅その他の修繕に対する援助措置を急ぎとりまとめるよう命じた。
緊急閣議にはプームタム・ウェーチャヤチャイ副首相兼国防相、アヌティン・チャーンウィラクン副首相兼内相、ナルモン・ピンヨーシンワット農業・協同組合相、チャルームチャイ・シーオーン天然資源・環境相、ソムサック・テープスティン保健相、プロムミン・ルートスリデート首相秘書官長、スラシー・キティモントン国家水資源事務局長らが出席した。
ペートンターン首相は、内務省と農業・協同組合省には河川の堤防の強化と排水システムの改善、天然資源・資源省には降雨量や河川の水位を監視し、リスクの高い地域についての情報を他の政府機関に警告するシステムの改善作業を急ぐよう指示した。現地の政府機関は、洪水時の安全に関するガイドラインを住民に示し、避難方法などを教える。内務省、農業省、国家水資源事務局には洪水問題に対する長期的な解決策を案出するよう命じた。首相はまた、避難所と避難者の食事確保の重要性を指摘した。
緊急閣議後の会見では、北部、特にチェンライとチェンマイ両県での深刻な洪水について逐一情報を受け取っていると明らかにし、現地住民の苦難を一刻も早く終わらせるため、皆が協力しなければならないと述べた。洪水状況が緩和すれば、被災者に国が補償金を出すことを約束し、早期警報システムも改善していくとした。政府が洪水被災者を支援するため中央予算の緊急予備費から資金を配分する。首相は13日に数人の閣僚を率いてチェンライの洪水被災者を慰問することを明らかにし、「現地の当局者による歓迎の挨拶などは不要、救援活動に専念してほしい」と述べた。
豪雨による洪水被害が広がる北部地方では、12日までに少なくとも9人の死亡が確認されている。チェンマイ県メーアーイ郡で6人、チェンライ県メーファールアン郡で3人がいずれも土砂にのまれ死亡した。被害が深刻なのはチェンライ県ムアン郡とメーサーイ郡。このほかチェンコーン、チェンセーン、メーチャン、メーファールアンの各郡も危険な状態。
タイ観光公団(TAT)は北部洪水の観光業への影響を注視している。洪水が収束すれば被災県の観光を刺激するためのキャンペーンやプロモーションを開始する予定。タパニー・キアットパイブン総裁は観光客の信頼を取り戻すため、水が引けば、冠水した観光地にソーシャルメディアのインフルエンサーを招待する考え。10月上旬にもチェンライへのインフルエンサー・ツアーを実施し、11月16日にメーファールアン郡のメーサロンで開催されるトレイルラン大会を紹介してもらうことにしている。
SCアセットと東京建物=2か所で物流施設開発事業
チナワット家が大株主のSET上場不動産開発会社のSCアセットと東京建物は合弁で賃貸倉庫・工場を開発する。このほど起工式を執り行なった[=写真]。SCアセットの子会社であるSCXコーポレーションと東京建物のタイ現地法人、東京建物タイランドが共同開発する。
東京建物にとって海外における初の物流施設開発事業。メトロキャット・プロジェクト、レムチャバン・プロジェクトの2つの物流施設開発事業を進める。
メトロキャット・プロジェクトはサムットプラカン県バンナー・トラート道路20㌔㍍地点の90ライ超の敷地に開発する。物流や運送事業に最適な立地で、バンコクへの商品の輸送に便利。賃貸建物の床面積は8万平米を予定し、すぐに使用できる標準的な倉庫兼工場を開発する。第1フェーズで床面積2万3000平方メートルの2棟の建物が25年1月に完成予定。
2社はチョンブリ県のレムチャバン港から8㌔㍍の国道3009号線沿いの土地でも倉庫兼工場を開発する。プロジェクトの賃貸スペースは合計4万6000平米で、一般区の1万3000平米、フリーゾーンの3万3000平米に分かれ、25年第1四半期に完成予定。
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