2024年6月25日(火)号

BOIが日本で投資説明会=タイの強みアピール

 投資委員会(BOI)事務局は6月19~21日の日程で日本を訪問し、三菱UFJ銀行と共同で「タイ・日本投資フォーラム2024」を東京と大阪で開催した。ナリット・トゥードサティラサック事務局長[=写真中央右]、チャヨーティット・クリダコン・タイ通商代表[=写真中央左]が出席し、日本企業に対し生産拠点のタイへの移転を求め、タイの強みや支援策を説明した。フォーラムには自動車、電子・半導体、デジタル、バイオを中心に様々な業界から400人以上の日本企業の幹部が出席し、業界ごとに分かれての会議も開催した。


 チャヨーティット通商代表は、「変わりつつあるタイの投資状況」をテーマに講演し、タイ政府が日本企業の投資を重視していることを訴えた。日本企業は、50年以上にわたってタイに大規模投資をしてきた最初の外国企業グループで、タイの産業の基礎を築く上で重要な役割を果たしてきた。日本からの投資は過去10年間で8700億バーツ以上にのぼり、国別で最多。チャヨーティット氏は、拡大する傾向にある地政学的問題がビジネス部門にリスクをもたらしていると指摘。日本企業の中にも中立国への生産拠点移転を必要とするところはあるはずで、タイ政府はこの機会に伴う課題を認識し、規制緩和やエコシステムの改善に取り組んできたと述べた。
 タイ政府が各国・地域との自由貿易協定(FTA)交渉を急ぐなど、貿易・投資にとって重要な諸政策を進めていることも示した。現在、タイは19の経済圏をカバーする15件のFTAを結んでおり、さらに5件が交渉中。交渉中のFTAには欧州連合(EU)、欧州自由貿易連合(EFTA)、韓国、アラブ首長国連邦、ブータンがある。
 政府がクリーン・エネルギーの供給増を目指していることも紹介し、将来のビジネスや国際貿易において重要な要素となる二酸化炭素の排出削減を目指す企業をサポートすると述べた。日本の協力のもと、高専の設立などの各種プログラムを通じて新産業を支える人材育成に重点を置いていることも付け加えた。
 ナリット事務局長は「日本の投資家に対するタイの新たな投資優遇とビジネス・チャンス」というテーマで講演した。タイには6000社以上の日本企業が投資し、東南アジアで最多。タイ経済全体の成長にも重要な役割を果たしてきたことを示した上で、超大国間の紛争など、世界が大きな課題に直面し、貿易戦争やサプライチェーンの大規模な再構築につながっていること、地球温暖化の危機により、官民を挙げて二酸化炭素の排出削減に注力するようになっている世界情勢からも、タイは日本企業にとって適切な投資先になっていると述べた。
 同事務局長は、①質の高い物流、工業団地などのインフラ、②5G移動通信のネットワークと世界クラスのデータセンターを含む高度なデジタル技術を利用できるデジタル・インフラ、③自動車や電子部品工業における統合されたサプライチェーン、④FTAを通じた世界市場へのアクセス、⑤新産業のスキル開発の準備ができている人的資源、⑥長期滞在ビザ、スマートビザ、ワンストップ・サービスセンターを通じた海外からの高度な技能を持つ人材の誘致、⑦クリーン・エネルギー分野の高いポテンシャル、⑧中立で紛争がない国際的な立場、⑨事業コストの適正さ、⑩質の高い住宅、インターナショナル・スクール、総合病院が揃う住みやすさ、という10の強みがあると説明した。

外国人の住宅購入=政府が規制緩和を検討

 政府は6月22日、不動産関連7団体の代表を呼んで外国人の住宅購入に便宜を図るための規制緩和について意見交換した。規制緩和はかねてより不動産業界が求めていたもので、コンドミニアムにおける外国人の所有権上限比率の引き上げ、長期借地契約期間の延長を考えている。コンドミニアムの総戸数に占める外国人購入可能枠は49%から75%に引き上げる計画で、プームタム・ウェーチャヤチャイ副首相兼商業相が構想を認めた。アヌティン・チャーンウィラクン副首相兼内相は、セーター首相が内務省に比率引き上げについて検討するよう指示したことを明らかにしている。
 イサラ・ブンヤン分譲住宅協会名誉会長によれば、22日の協議に参加したのは分譲住宅協会、タイ・コンドミニアム協会、タイ不動産協会、住宅建築協会、不動産販売マーケティング協会、タイ不動産ブローカー協会、タイ商業会議所(TCC)不動産開発委員会。不動産関連団体の幹部は規制緩和がより多くの外国人投資を引き付けるとして政府の構想を歓迎した。提案された計画はかねてより不動産業界が提案していた。
 現在、宅地の長期借地は契約期間が最長30年で、双方の合意で30年の延長が可能。外国人はリースホールドの形で住宅を購入することができる。コンドミニアムの場合、外国人は当該コンドミニアムの総戸数の49%まで購入可能。
 政府の計画では、借地契約期間を最長99年に延長する。コンドミニアムは75%までの所有を認める。セーター首相は23日、外国人への最長99年の借地権付与について、外国人に150年の借地を認めている国もあると述べた。コンドミニアムについては、外国人所有者が保有する議決権の割合に関しては49%に制限するとした。49%の枠が満たされた後に、コンドミニアムのユニットを購入する外国人は、ユニットを所有し、住むことができるが、管理組合の決定にあたって投票権は与えられない。
 イサラ氏は、外国人の住宅所有規制の緩和が実施される場合、バンコク、プーケット、パタヤなど外国人に人気の都市で選択的に適用される可能性が高いと見ている。タイ・コンドミニアム協会のピーラポン・ジャルンエーク名誉会長は、改正法案が成立するまでには1年から2年かかる可能性があると指摘した。
 住宅市場は購買力の低下と金融機関による住宅ローン拒否率の上昇を受けて低迷を続けている。外国人所有規制の緩和は住宅市場を刺激するものと期待されている。借地期間が99年に延長されれば、地価が高騰している都心部ではリースホールド住宅を開発することでコスト削減が可能になり、住宅の価格もより手ごろになる。外国人に長期滞在の選択肢を提供することは、外国人投資家の信頼感を高め、投資誘致にも貢献する。
 不動産コンサルタントのCBREタイランドの幹部は、外国人の所有権が48~49%に達しているコンドミニアムはバンコクでも数えるほどしかなく、75%への引き上げがコンドミニアムの市場活性化に寄与する部分は小さいと指摘している。外国人の所有率が高いコンドミニアムは、外資が開発に参加しているプロジェクトで、外国大使館がスタッフのために多数のユニットを購入しているなどの特殊なケース。それ以外で外国人所有率が40%を超えるようなコンドミニアムは見られないという。

株式市場活性化策=タイESGファンドを修正へ

 財務省と証券取引等監視委員会(SEC)事務局、タイ証券取引所(SET)は6月24日に記者会見し、タイ株式市場の活性化に向けた取り組みに関する声明を発表した。タイESGファンドの条件見直しが主な内容。


 ピチャイ・チュンハワチラ副首相兼財務相[=写真中央]は、資本市場への投資を通じた貯蓄促進のため、財務省がタイ持続可能性投資信託(タイESGファンド)の条件調整の準備を進めていると明らかにした。投資家の信頼感を高め、資本市場への資金流入を刺激する。ファンドへの投資に対する個人所得控除は、所得の30%または10万バーツまでとしているが、30万バーツに拡大する。
 投資口の保有期間は、購入から8年とした条件を5年に短縮する。若い世代に株式投資のリスクを受け入れさせるためには、ある程度の流動性が必要で、税制優遇を受けるために保有し続けなければならない期間は短縮する必要があると判断した。
 ファンドが運用対象にできる上場企業株は持続可能な経営を促進し、情報開示している上場企業。ESGのうち「環境」、「ガバナンス」にも焦点を当てることで、運用対象銘柄を増やす。これにより対象銘柄は現在の128銘柄から少なくとも200銘柄が追加され、300銘柄以上になる。
 ピチャイ氏は2週間以内に内閣に提出し、今年1月1日からに遡って適用すると述べている。ピチャイ氏は入閣当初、長期株式投資ファンド(LTF)の復活に言及していたが、この日の会見では、保有期間が長すぎるほか、運用対象銘柄に制限がなく、個々の株式銘柄が持つ固有のリスクにさらされる危険性があるという弱点があることが判明したと述べ、LTF復活に代えて、タイESGファンドの間口を広げることにした経緯を説明した。
 ポンアノン・ブッサラトラクンSEC事務局長[=写真左]は、タイESGファンドに関し、個人所得控除枠や保有期間の調整で、より魅力的な投資商品になると述べている。24年1月1日から26年末までの3年間実施すると述べた。ピチャイ大臣は今年残り期間に300億~400億バーツがタイESGファンドを通じて株式市場に流入すると期待している。SECは新たな条件を備えたタイESGファンドの投資口が7月中にも売り出されると予想している。
 タイ株式市場は先週、SET指数が1300ポイントを割り込むまで下落し、低空飛行を続けている。パコン・ピータワッチャイSET所長[=写真前頁・右]は、一部業種の株価については過去5年平均を下回っているが、消費財、IT、ヘルスケアなど一部業種の1株あたり利益(EPS)は上向きつつあると述べている。
 イノベストX証券のスティチャイ・クムウォラチャイ最高投資戦略責任者は、タイ株式市場を覆っていた多くのマイナス要因は過ぎ去ったと述べている。政府予算の執行加速と製造業や観光業の改善が年後半の経済成長を促すため、SET指数は1300ポイントから24年末までに1500ポイントに回復すると予想した。

その他のニュース

[経済ニュース]

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[社会ニュース]

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[論調]
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[トピックス]
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[データ]
生命保険データ

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