経済は低成長期から加速期に=タイ中銀の金融政策フォーラム
タイ中央銀行のピティ・ディサヤタット金融政策担当総裁補は6月26日、「金融政策リポート」最新号を公表した「金融政策フォーラム」で、今年下半期のタイ経済について、観光、輸出、個人消費、政府投資に支えられ回復の兆しを見せると述べた。今年通年の成長率は2.6%と予測した。
ピティ総裁補はタイ経済の状況について、昨年終わり頃から大方の予想を下回る低成長期に入ったものの、今年第2四半期には一定水準まで戻しており、加速期に入ったと述べた。今年第3四半期から来年初めにかけては、潜在成長力を取り戻せるかどうかの重要な時期になるという。経済主体や業種、企業ごとの回復状況は、ばらつきが大きいとはいえ、全体としてタイ経済は加速しており、潜在力の水準に向かって前進していると総括した。ただし成長を妨げる要因は少なくなく、構造的には所得分配が依然として課題で、解決していかなければならないと指摘した。
マクロ経済担当のプラニー・スッタシー・シニアダイレクターは、今年のタイ経済の成長率に関し、主に内需と観光業の成長を原動力として2.6%増が予想されると説明した。収縮を続けてきた製造業も回復の兆しが見え始めているという。観光業では今年の外国人観光客数は3550万人、来年には3950万人に増加すると予測した。また個人消費の拡大も重要な原動力になると述べた。
プラニー氏は、経済成長の原動力がよりバランスのとれたものになってくると見ている。経済成長にブレーキをかけていた政府支出と物品輸出は拡大に転じる見通し。比較ベースとなる前年同期の数値が低いローベース効果からGDP成長率は徐々に改善し、第2四半期に2%台、第3四半期に3%台、第4四半期に4%近くに上向くと予測した。
24年のタイ経済はリスク要因が軽減される。第1四半期の民間消費と民間投資は金融政策委員会(MPC)の予想以上に拡大しており、観光業の拡大傾向が続き、政府支出も加速する。ただし輸出と製造業は構造的問題や対外要因からの課題に直面し、拡大に転じても低成長にとどまる。家計部門では、脆弱な層で所得の回復が遅れ、債務返済で苦しんでいる。
MPCは6月12日の政策決定会合で、政策金利の年2.5%での据え置きを決定している。金融政策リポートでも、現在の金利は潜在成長率に向けた成長軌道にある経済を下支えし、長期的な経済の安定に対するリスクを軽減することができる水準だと主張した。
金融政策担当のスラット・テーンブン・シニアダイレクターは、1~3%増というインフレ目標は機能していると主張した。目標範囲を広げれば物価の安定に影響を及ぼす可能性があるとした。今年第4四半期にインフレ率は誘導目標範囲内に収まり、中期的なインフレ期待は2%で変わらず、タイ経済に適切な水準だとした。
家計債務残高のGDP比が高止まりしていることは中銀も憂慮しているが、金融政策を家計の債務問題を解決する手段とは考えていないと断言。家計債務問題解決のために金利をどの水準に設定すべきかという目標は設けていないと述べた。
自動車ローンの拒否率の上昇が問題になっていることについてスラット氏は、金融機関の融資査定基準に変わりはなく、変わったのは融資を求める借り手のほうで、借り手の信用力低下が拒否率の上昇につながっているとした。
「トゥルーマネー」=三菱UFJ銀行が出資
三菱UFJ銀行と、アユタヤ銀行(クルンシー)のコーポレート・ベンチャー・キャピタルのクルンシー・フィノベートは6月26日、デジタル金融サービスを提供するCPグループ系のアセンドマネー社への1億9500万㌦の出資を決定し、契約を取り交わしたと発表した。
三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)は、タイでデジタル決済が広く普及し、デジタル金融サービスの成長が期待できることに着目。CPグループの金融事業の中核を担うアセンドマネーへの出資を通じて、デジタル金融の成長を取り込む。
アセンドマネーは2013年設立で、タイを主なマーケットとして東南アジア7か国で決済、融資などの金融サービスを提供している。電子財布「トゥルーマネー」は3000万人のアクティブユーザーを抱える金融プラットフォームで、21年にはフィンテック分野でタイ初のユニコーンとの評価を受けた。タイ国内首位の携帯電話キャリアであるトゥルー・コーポレーションや、コンビニ最大手の7イレブンなど、CPグループのエコシステムを活用して消費者の日常決済に広く浸透していることが強みで、その顧客基盤を通じてデジタル貸付事業を拡大している。
MUFGはアジアを第2のマザーマーケットと位置付け、過去10年間で商業銀行プラットフォームを構築してきた。アジアでは銀行が相手にしてこなかった低所得層や中小事業者に金融サービスを提供するデジタル金融サービス事業が隆盛で、MUFGもアジアの成長を取り込むため、20年にGrab(シンガポール)、22年にホームクレジット(フィリピン、インドネシア)、アクラク(インドネシア)、23年にDMIファイナンス(インド)に出資するなど戦略的な投資を実行してきた。23年からは出資企業間の知見共有、バリューアップ活動を目的としたデジタル・エコシステム形成の取り組み「MODE」も開始している。
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