ペートンターン新政権発足=デジタルマネー政策推進
ペートンターン首相[=写真]は9月4日、新政権の閣僚名簿を国王に提出し、国務大臣任命の勅命が同日付けで官報に記載された。これを受け、首相は新政権が様々な差し迫った問題への取り組みを急ぐ考えを明らかにした。ハネムーンを楽しむ余裕はないとし、セーター政権が取り組んだ政策を継続しなければならないと述べた。デジタルマネー政策は現金での給付を含む幾つかの変更が必要なことを認めた上で、新政権の重要政策であることに変わりはないとした。すでに成立している24年度補正予算の1220億バーツと24年度中央予算の予備費を使って、先行して約1400万人の国家福祉カード保持者に現金の形で給付する。
4日に任命された国務大臣は連立各党が推挙した候補の資格を内閣法制委員会事務局が審査し、ペートンターン首相が最終チェックした。新内閣は6日に国王宣誓式に臨む。首相は11日から13日の間に国会で所信表明する。
副首相は6人。プームタム・ウェーチャヤチャイ氏は国防相、スリヤ・ジュンルンルアンキット氏は運輸相、アヌティン・チャーンウィラクン氏は内相、ピーラパン・サリーラットウィパーク氏はエネルギー相、ピチャイ・チュンハワチラ氏は財務相、プラサート・チャンタラルアントーン氏はデジタル経済社会相を兼任する。
外相にはマリット・サギアムポン氏が留任した。観光・スポーツ相にはプアタイ党幹事長のソラウォン・ティアントーン氏が新たに就任した。セーター政権発足後で3人目の観光大臣。農相にはナルモン・ピンヨーシンワット氏が就任し、タマナット・プロムパオ氏は入閣しなかった。新たに与党に加わった民主党からはチャルームチャイ・シーオーン党首が天然資源・環境相に就任するほか、デートイット・カオトーン幹事長が保健副大臣に就任する。社会開発、高等教育、法務相、労相、文化相は留任。商業相にはピチャイ・ナリプッタパン氏が就任する。
プームタム・ウェーチャヤチャイ副首相兼商業相(首相代行)は、新政府が議会で表明する政策の中身は前政権に似たものになると述べた。詳細を調整する可能性はあるが、国民の経済的苦境に対処するという目標に変わりはないとした。
一方、与党第2党のプームチャイタイ党のチャイチャノック・チッチョーブ幹事長は3日、同党の6項目から成る政策をプアタイ党のソラウォン・ティアントーン幹事長に手渡した。地方分権、教育アクセスの平等、治水、クリーン・エネルギーに次ぐ6項目目に大麻の医療・健康目的での使用を含むタイのハーブ製品の研究開発を掲げている。セーター政府は大麻を禁止薬物に再指定する方針を示していたが、プームチャイタイ党の強い反対を受け、7月には同方針を撤回していた。プームチャイタイ党のアヌティン・チャーンウィラクン党首は3日、党の大麻政策が新政府に採用される見通しを明らかにし、所信表明にも盛り込まれると述べている。同党の大麻政策に強く反対している民主党の連立入りについては、執行部が刷新されており、国民のニーズに対するより良い理解を信じているとコメントした。
3日のタイ株式市場は新政権発足までの日程が明確になったことを好感して株価が上昇、SET指数は前日比16.40ポイント高となる1364.60ポイントで取引を終えた。投資アナリスト協会(IAA)のパイブーン・ナリントランクン会長は、主要閣僚の多くが留任し、短期的な経済刺激策が継続されることで投資家の信頼感が改善しているほか、外国人投資家がタイ株式市場に戻り始めていることが株価を支えていると解説した。
北部洪水の経済的損失=商議所大学試算80億バーツ
タイ商業会議所大学(UTCC)は9月2日、北部地方を襲った洪水による経済的損失が80億バーツに達するとの試算を発表した。GDPの0.05%に当たる。農業部門の損失が71億7000万バーツと全体の89.6%を占めた。サービス業は6億9300万バーツ、製造業は1億3900万バーツと見積もった。
県別ではチェンライ県の損失が36億3000万バーツで最多、パヤオ県の20億バーツ、スコータイ県の13億6000万バーツが続く。タイ商業会議所のサナン・アンウボンクン会頭は今後1か月間雨が降り続いた場合、被害がさらに広がることを懸念している。経済的損失はGDPの0.06%に当たる100億バーツに達するおそれがあると見ている。
ペートンターン首相は8月24日のナーン県訪問に続き、30日にはスコータイ県を訪問し、被災状況を視察した[=写真]。
サナン会頭は、北部地方の被害を緩和するため前線基地を設けて、首相が陣頭指揮を執り、洪水に対する包括的な対策を打ち出すよう提言した。9~10月にかけてさらなる降雨が予想されることから、予防措置も重要だと指摘している。被災した住民や事業所に対しては債務の一時凍結、利息カット、ソフトローンで復興支援するよう求めた。
サナン会頭はバンコクと近隣県が2011年のような洪水に見舞われる可能性について、①降雨量が2011年より少ない、②今後の雨量も少ないと予報が出されている、③主要ダムや河川の水位がまだ低いといった理由から、「可能性は極めて低い」と述べた。
2011年の降雨量は例年を24%も上回ったが、今年初めから8月20日までの雨量は例年を4%下回っている。11年は5つの台風が直撃したが、今年はまだ1つもなく、せいぜい1つか2つにとどまる見通し。プミポン、シリキット、クウェーノーイ・バムルンデーン、パーサック・チョラシットの4大ダムの貯水可能な水量は109億6700万立米で、11年当時の46億4700万立米を大幅に上回る。主要河川の水位は制御可能な範囲にある。チャオプラヤ川の現在の流量は毎秒1307立米で、最大でも2860立米にとどまる見通し。11年は平均で毎秒2284立米を数え、最大で4689立米に達した。
北部からの水が中部地方に流下しているため、チャオプラヤ・ダム(チャイナート県)からの放水は今後増量される見通し。治水当局は9月2日、連日の豪雨からスコータイ、ピッサヌローク、ノンカイ、ラヨン、プーケット、スラタニの各県では土砂崩れや鉄砲水などが生じる恐れがあると警告している。
政府は北部と中部地方上部の多くの県で発生している洪水で被害を受けた道路の修復と、灌漑局による治水プロジェクトの経費として、中央予算の緊急予備費より53億600万バーツを配分することを閣議認可した
灌漑局は22億8900万バーツの予算で、1072事業を実施する。水路を妨げる障害物の除去による排水効率の向上、被害を受けた灌漑システムの修復と改善に取り組む。道路補修では国道局と地方道局に30億1739万バーツの予算を配分する。内訳は国道局に18億4955万バーツ、地方道局に11億6784万バーツ。
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