最低賃金の改定=10月1日実施は見送りも
プアタイ党政府が望んでいる10月1日からの最低賃金の改定は見送りになる可能性が出てきた。官労使の代表で構成する賃金委員会は9月20日に会合を開いたが、定足数不足のため決議できなかった。委員長を務めるパイロート・チョーティカサティアン労働省次官は24日にもう一度会合を持ち、最低賃金改定を決定して10月1日に開かれる閣議に提出するとしているが、24日の会合が定足数に達するかどうかは不透明。仮に決定しても10月1日からの実施は日程的に困難になっている。
賃金委は16日にも会合を持ったが、使用側委員5人全員が欠席したため、定足数不足で散開していた。20日の会合に使用側委員は全員出席したが、労働側代表委員2人が欠席、官代表はパイロート次官が出席したものの、プーンポン・ナイヤナパコン商業政策戦略事務局長をはじめとする4人の委員が欠席し、会議出席者は9人だけだった。少なくとも3分の2の委員が出席しないと議案の採決を取ることはできない。
パイロート次官は24日にもう一度会合を持つと話している。同次官は9月30日で定年退官し、ブンソン・タップチャイユット社会保険事務局長が10月1日付けで労働省次官に就任する。
プアタイ党政府は全国一律で1日あたり400バーツへの改定を求めているが、使用側は強く反対している。タイ工業連盟(FTI)のクリアンクライ・ティアンヌクン会長は、最低賃金の大幅な引き上げが中小企業の大量倒産につながるおそれがあるほか、工業事業者の信頼感にも影響を及ぼすと指摘。各県賃金委員会の提案を尊重して、これまで通り都県ごとに適正レートを設けるよう求めている。
一方、ピパット・ラチャキットプラカン労相は、従業員数200人以上の事業所に限って400バーツに引き上げる案を示している。1日あたり400バーツの最低賃金は今年4月13日から、プーケット県とその他9都県の一部地区にある従業員50人以上の4つ星ホテルに限って実施されている。
全国一律での最低賃金の大幅引き上げは、2013年にインラック政権が実施した。同年1月1日から全国一律300バーツに改定した。しかしその後の改定は、都県ごとに設ける旧制度が復活して現在に至っている。今年1月1日付けで施行になった最低賃金はプーケット県が最も高い370バーツ、首都圏(バンコク、ノンタブリ、パトゥムタニ、サムットプラカン、サムットサーコン)が363バーツで、南部国境3県(ヤラー、ナラティワート、パッタニ)が最も低い330バーツ。セーター首相が今年1月からの改定幅の少なさに不満を表明し、再度の改定を求めた経緯がある。
セータプット中銀総裁=講演で独立性を強調
タイ中央銀行のセータプット・スティワートナルプット総裁[=写真]は9月20日、中銀開催の年次シンポジウムで「The Economics of Balancing Today and Tomorrow」と題して講演し、政策金利は米連邦準備制度理事会(FRB)に追随するのではなく、①経済成長②インフレ率③金融システム安定という3つの主要な国内要因に基づいて決定すると述べた。米連邦公開市場委員会(FOMC)は9月19日(タイ時間)に政策金利を0.5%幅で引き下げている。米国の利下げ決定を受け、セーター前政権時から中銀に利下げを迫ってきたプアタイ党政府は中銀への圧力を強めている。
ピチャイ・チュンハワチラ副首相兼財務相は18日、中銀の独立性を尊重するとしつつ、米国のような大国が利下げを発表した場合、タイは金融政策の修正を検討しなければならないと指摘した。タイ経済が回復を始めたことで資本の流れが変わり、海外投資マネーは流入に転じ、バーツ高をもたらしている。セーター前政府は経済が危機的状況にあるとして中銀に利下げを求めたが、最近はバーツ高を理由に利下げを迫っている。
ピチャイ・ナリプッタパン商業相は17日、記者団の質問に答え、バーツが高くなりすぎないよう、中銀が政策金利を引き下げることを望んでいると語った。1ドル=33バーツは高すぎる水準で、輸出業者に大きな影響を及ぼしているとした。
これに対しセータプット総裁は20日の講演で、中銀の独立性を保たなければならないと強調した。独立性は信頼関係の構築に寄与し、安定性の維持にもつながるとし、独立性に欠けると長期的な視点で動くことができなくなると語った。
また、金利の引き下げにより経済を活性化できても、多くの場合、インフレという代償を伴うと指摘。さらに経済システムに脆弱性が蓄積され、企業が過剰な負債を抱えたり、投機的な行動が長期的な成長を阻害したり、深刻な危機を引き起こしたりする可能性があるとした。
タイの経済成長率とインフレ率は中銀の見積もりに沿ったものになっていると見ている一方、債権の質の低下による信用リスクの高まりを背景に、金融システム全体の信用収縮が予想以上のペースで加速していると指摘した。FRBによる利下げについては、市場の観測に沿ったもので、金融市場と資本市場はすでに織り込み済みだとした。ドル安の裏返しでバーツは強基調にあるが、タイ経済が米国の利下げによって大きな影響を受けることはないと考えている。
9月20日の中銀参照レートは1ドル=33.077バーツで、19か月ぶりのバーツ高となった。バーツの動きは他の地域通貨と一致しているが、相対的にドルに対してより不安定になっていることは認めている。またバーツ相場は、かつてのようにマレーシア・リンギットやインドネシア・ルピアと連動するのではなく、韓国ウォンとの連関性が強くなっているという。
アジア域内通貨の対ドルレートの変動(ボラティリティ)を見ると、バーツのボラティリティ率は7.5%で、ウォン(7.2%)、リンギット(5.8%)、ルピア(5.5%)、フィリピン・ペソ(4.7%)を上回っている。バーツはまた他の域内通貨よりも金相場との相関性が高い。金の国際相場が史上最高値をつけたこともバーツ相場に大きな影響を及ぼしている。
中銀は世界の金融市場と資本市場の不確実性が高まっているため、ホットマネーの流入による為替投機を警戒しているが、今のところ大きなリスクは見られないとしている。
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24年9月17日の
[市況]
先週の為替・株式相場(9月16~20日)
商品市場(バンコク首都圏の燃油小売価格、天然ゴム)
金融市場(外為相場、銀行預金・貸出金利)
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