2024年11月8日(金)号

バーツが34バーツ台に軟化=FRBは2会合連続で利下げ

 外為市場ではバーツの対ドル・レートが下落し、1ドル=34バーツ台に入った。ドルが主要国通貨に対して急伸した裏返しで、バーツの対ドル・レートは6日にタイ中央銀行参照レートで1ドル=34.019バーツをつけ、7日には34.363バーツまで下げている。1ドル=34バーツ台に下がるのは約2か月ぶり。米国の大統領選挙で共和党のドナルド・トランプ氏が勝利したことを受け、市場は米連邦準備制度理事会(FRB)が利下げを急がないと観測した。カシコン・リサーチ・センター社(Kリサーチ)は、バーツが短期的に1ドル=34.5バーツを超えて下落する可能性があると見ている。
 Kリサーチによれば、トランプ氏は米国経済を刺激するために財政支出を増やすと予想されている。新政権が大規模な支出を賄うために国債を増発する可能性があることから、米国の債券利回りは上昇し、これがドル高の一因になる。日本円を含むアジア域内通貨が対ドルで下落した。
 タイのマネーマーケットではこれより前から海外投資マネーの流出が続いている。Kリサーチはバーツの下落で投資マネーはタイの債券市場から流出し続けると見ている。FRBは7日の公開市場委員会(FOMC)の会合で、政策金利であるFF(フェデラル・ファンド)金利の誘導目標を0.25%幅で引き下げ、4.50~4.75%とすることを全員一致で決めている。市場の予想通りの結果で、Kリサーチはバーツが34.70~34.80バーツまで下がる可能性を見ている。
 FRBは今年9月に4年半ぶりの利下げに踏み切っており、利下げは2会合連続となった。9月の会合では0.5%幅の大幅利下げを実施したが、今回は0.25%という一般的な下げ幅にとどめている。FRBは声明で、経済活動が引き続き堅調に拡大しているとし、インフレ率も2%の目標に向けて低下し続けていると指摘した。
 FRBはトランプ氏による積極財政がインフレ・リスクを再燃させることを警戒して利下げのペースを遅らせるというのが市場の見方。パウエルFRB議長は今後の金融政策について、12月17、18日の会合での利下げの休止を示唆しなかった。次回会合でも0.25%幅で利下げを実施するとの見方が広がっている。
 バーツの弱基調が続くかどうかは不明。あるエコノミストはトランプ氏勝利の興奮で短期的にドルは上昇しているが、市場が落ち着きを取り戻せば、投資家は米国の経済が減速し、FRBによる利下げが継続されている事実に目を向けて米国経済のファンダメンタルズに焦点を当てると予測。バーツが反発する可能性に言及している。
 アナリストの多くはトランプ氏が中国との貿易戦争を開始する明確なシグナルを送っているため、投資家にポートフォリオのリスク資産を削減するよう助言している。またトランプ氏が輸入関税を引き上げれば、輸入コスト増から米国のインフレ率は低下せず、金利の低下は市場が予想するよりも緩やかになると指摘している。
 一方、米中貿易戦争によりタイは対米輸出で利益を得るとの見方があるが、タイ輸出入銀行の調査部は中国製品にとって代わってタイ製品の輸出が増える可能性は低いと指摘している。米中貿易戦争でターゲットになっている中国製品のいくつかはタイで製造されているが、相対的な競争力は低い。中国製品に対する米国の関税引き上げの多くは、スマートフォン、タブレット、衣類、靴、家具などの消費財が対象。タイはこれら製品の主要な生産拠点ではなく、ベトナムやメキシコと比べた輸出競争力は低いと指摘した。むしろトランプ氏の政策は、行き場を失った中国製消費財のタイへの流入を増加させる可能性があるとした。

GMS首脳会議=繁栄のための3C原則を提案

 11月7日に中国の昆明で開催された第8回拡大メコンサブリージョン首脳会議に出席したペートンターン首相はリトリート・セッションで、「タイのイノベーションによる発展」をテーマに講演した。講演では、より強く、より繁栄した拡大メコンサブリージョン(GMS)を構築するための3C(接続性、競争力、コミュニティ)アプローチを提案した。


 首相は今回の会議で、環境に害を与えずイノベーションを活用する「包括的で環境に優しいイノベーション」の原則に基づいたサブリージョンの発展のためのガイドラインを示した。誰も置き去りにすることなく安定した平等な社会を築き、すべての人にとって持続可能な世界を創造する。
 首相はイノベーションを活用したタイの国家開発への重要な取り組みとして、テクノロジーによる伝統的な農業の近代化を第1に挙げた。テクノロジー・ベースの農業慣行を開発し、「市場をリードし、イノベーションで補強し、収入を増やす」というコンセプトを通じて農産物の価値を高め、農産物価格を安定させて農家の収入を増やすと説明した。
 第2に消費者と投資家の利便性を高めるため、タイが金融サービスの向上にテクノロジーを応用する金融のイノベーションを進めていることを示した。QRコードを使った国際決済システムを構築するアセアン決済コネクティビティ・プロジェクトの下、近隣諸国とのシームレスな金融テクノロジーの開発を進めている。タイをデジタル・エコノミーに引き上げ、金融取引の手数料負担が軽減されることで最終的にGMSコミュニティに利益をもたらすと述べた。
 タイ政府が税制と非税制措置を通じて研究開発を支援していることも示した。研究開発が、より良い経済社会につながるイノベーションを生み出す基盤になると考えていると説明した。
 首相はイノベーションとテクノロジーを活用することで、GMSの人々の生活を改善し、成長と繁栄のための新たな機会を開くことができると訴えた。3CはGMSに住む人々の利益のため、接続性、競争力、コミュニティを強化することを指している。
 接続性(Connectivity)は地域統合のベースで、タイはバンコクとビエンチャンを結ぶ国際列車サービスの開始、レムチャバン港開発第3フェーズ、北部のランナー空港と南部のアンダマン空港の建設計画など、サブリージョンとそれ以外の地域を結ぶインフラ開発で重要な進展を遂げていると説明した。
 加盟国がコロナのパンデミックで停止していたGMSにおける国境を越えた輸送に関する協定(CBTA)の第1段階の履行を再開したことを嬉しく思うと述べ、次の段階では規制の整備と加盟国間の協力を通じた共同の取り組みが必要になると指摘した。
 第2のCは競争力(Competitiveness)。タイはイノベーション主導の開発を重視しており、経済的にも社会的にも持続可能なキャッシュレス社会に突入していることをアピールした。QRコードによる決済は現在、広く普及している。この金融テクノロジーは産業の近代化と密接に関係しており、国の競争力を高め、新たなイノベーションを促進する環境を促進するのに役立つとした。
 第3のCはコミュニティ(Community)。コミュニティを強化することは、あらゆる分野で統合的な協力を生み出すとした。タイはGMS諸国の男女平等戦略を支持しており、タイの包括的開発政策にも沿うと主張した。質の高い教育への平等なアクセスを促進する重要性も指摘した。タイが保健政策を強化していることを示し、国民皆健康保険制度を「30バーツであらゆる病気を治す」から「どこででも30バーツで治療」に発展させたことを紹介した。
 GMSコミュニティの繁栄を持続させるため、タイは国連の持続可能な開発アジェンダに対するコミットメントをGMS諸国と共有する用意があると表明した。
 首脳会議では首脳による共同声明案と「メコン地域開発のためのイノベーション戦略2030」を採択した。

プームタム副首相兼国防相=9日にクード島を視察へ

 プームタム・ウェーチャヤチャイ副首相兼国防相は11月7日、トラート県のクード島を9日に訪問する予定でいることを明らかにした。代表団を率いて島を視察し、タイとカンボジアの国境を守るため、島に駐屯している兵士の士気を高めたいと述べた。国防省次官だけでなく海軍軍令部長も代表団に参加すると述べた。クード島に対するタイの主権を再確認し、地元住民の信頼を高めることが目的。
 プームタム氏は両国が主張する領海問題について交渉するための合同技術委員会(JTC)の設立についての記者団の質問に対し、外務省が処理すると述べた。外務省が近く名簿を提案する予定だと語った。ペートンターン首相はこれより前、2週間以内に発足させるとしている。委員会は両国が署名した01年覚書(MOU44)に基づいて、領海主張重複地域(OCA)に関するカンボジアとの交渉を再開する。タイとカンボジアはタイ湾の約2万6000平方㌔㍍について自国の領海と主張している。カンボジアは1972年にクード島の半分は自国領と主張したが、タイ側はこれを認めていない。
 JTCは国家安全保障を担当する副首相が率い、国防、エネルギー、外務、財務、国家安全保障会議その他の関連機関の代表で構成される。小委員会を2つ設けることも明らかにした。
 MOU44でクード島の主権を失ったという一部勢力による主張について、プームタム氏は政治的動機による虚偽の情報だと一蹴した。覚書の破棄を求める声についても、過去の政権が破棄しないと決めているとした。

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