経済対策委員会が初会合=高齢者に1万バーツ現金給付
ペートンターン首相[=写真]が議長を務める経済対策委員会は11月19日、1万バーツ現金給付プログラムの第2弾として、60歳以上の高齢者への給付を決定した。モバイルアプリの「ターンラット」を通じて登録した者が対象だが、スマートフォンを持たない者の登録がまだのため、年末年始には間に合わず、25年1月終わりの中国正月前の給付になるもよう。給付対象者はすでに給付を受けている脆弱な層の高齢者を除いた約400万人で、政策経費は400億バーツ。この日の会議では家計債務問題の解決に向け、3年間の利払い猶予措置についても実施を確認した。
ペートンターン首相は今年第3四半期の経済成長率が3.0%に達するなど、景気が回復軌道にあることを示した上で、経済成長にはなお制約があり、景気の回復はすべてのセクターにあまねく行き届いた全面的なものではないと指摘した。経済を刺激する措置が必要だとしている。この日の会合にはタイ中央銀行のセータプット・スティワートナルプット総裁、国家経済社会開発評議会(NESDC)のダヌチャー・ピチャヤナン事務局長も出席した。
NESDC事務局の報告によれば、第3四半期のGDPは前年同期比で3.0%拡大した。政府消費の増加が主な支援要因。経済成長率は第1四半期の1.6%、第2四半期の2.2%と回復が続いている。タイ経済はこれ以上に成長するポテンシャルを有すると考えているため、経済対策委員会を設置したと説明した。今後、短期的、長期的に国の競争力を高めるための指針も同委で決定する方針。当面は弱い立場にある人々の所得を増やし、生活費を軽減することを優先する。低所得層や障害者には9月下旬に現金を給付したため、次の段階では高齢者を支援するとした。
高齢者に対しても脆弱な層と同様、国民証番号に紐づけされた銀行口座へのプロムペイを通じた送金という形で給付し、デジタルマネーとはしない。給付金の使途も限定しない。なおピチャイ・チュンハワチラ副首相兼財務相によれば、第3弾となる一般国民への給付は来年4~6月ごろになるもよう。一般国民にはデジタルマネーの形態で給付する方針。開発中の官製アプリは来年第2四半期に使用可能になるとしている。
家計債務は残高のGDP比が3月末時点の90.7%から6月末には89.6%へと低下したが、それでも高水準にあることに変わりない。返済が滞った不良債権は1.2~1.3兆バーツに膨れ上がっている。そこで財務省と中銀は規律を維持しながら国民のニーズに応える債務問題の解決策を立案中。タイ銀行協会(TBA)とは住宅、自動車、商工ローンで不良債権になってから1年以内の債務について、利払いを3年間猶予する措置の実施で大筋合意している。また返済期間を延長することで月々の返済負担も減らす。
ペートンターン首相は、政府が家計と中小企業の債務問題の解決を重視していると表明し、財務省、中銀、商銀が協力する債務リストラを政府が支援すると語った。
第3四半期の成長率は良好だったが、パオプーム・ローチャナサクン財務副大臣は政府が実施する景気対策の効果で第4四半期にはさらに良くなると述べている。財務省の第4四半期の成長率予測は4.3%。
NESDCは25年の成長率を2.3~3.3%の間、中間値で2.8%と予測している。成長率が3%に届かないと予測され、25年も追加の景気対策が必要になる。経済は良い方向に向かっているが、長期的な経済成長を確実にするためには、投資支出を増やして経済を底上げしなければならないと指摘した。
ペートンターン首相はこの日の閣議後の会見で、財務省、商業省、NESDC事務局に民間投資の拡大を支援する措置の取りまとめを急ぐよう指示したことを明らかにした。
タイESGファンド=合計組成数50本視界に
投資運用会社協会(AIMC)は、タイ・サステナブル・ミューチュアルファンド(タイESGファンド)の資産価値が年末には200億バーツ超に達すると期待している。同ファンドの投資口(ユニットトラスト)への投資は個人所得控除の対象となるため、年末にかけての時期に注文が増える。
11月19日に記者会見したチャウィンダー・ハーンラタナクン会長によれば、昨年末時点でタイESGファンドは16社、合計42本が組成され、資産価値は約120億バーツとなっている。今年に入ってから4本が新たに組成されている。政府は低迷する株価対策の一環として、タイESGファンドの所得控除を最大30万バーツに拡充し、投資口の保有義務期間も5年に短縮する措置を打ち出しており、投資家にとってより魅力的なものになっている。チャウィンダー会長は年末時点でファンドの数は50本まで増えると期待している。
タイESGファンドはタイ証券取引所(SET)に上場している800を超える銘柄のうちESG経営を心掛けている約200銘柄が運用対象。保有義務期間が8年から5年に短縮されたこともあって投資家の関心は高まっている。AIMCはタイESGファンドへの新たな投資が年間200億~300億バーツに達すると見積もっている。協会も投資家ベースを増やすため、広報キャンペーンを増やすことにしている。
タイESGファンドと同様、所得控除の対象となるミューチュアル・ファンドにスーパー・セービング・ファンド(SSF)があるが、チャウィンダー会長は今年が最終年になる可能性があると述べている。所得控除の適用期間は今年末までになっており、財務省が延長するかどうかを見守っているところ。SSFは海外の株式や債務性証券でも運用できるファンドで、所得控除を受ける場合の投資口の保有義務期間は8年となっている。
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