債務者援助措置を閣議決定=「あなたは闘い、私たちは助ける」
ペートンターン政府は12月11日の閣議で、個人と中小事業者を対象とする債務者援助措置「あなたは闘い、私たちは助ける」を承認した。対象となる債務は全部で210万口座、債務者は190万人で、債務総額は8900億バーツ。利息の返済を3年間停止して元本の返済を進める内容で、新たな返済条件を履行した債務者は3年間の利子が免除される。このほか残高が5000バーツ以下のカードローンや個人ローンは90%の債権放棄(ヘアカット)に応じる。
家計債務は、国民の幸福とタイ経済の持続可能な成長に影響を与える重要な構造問題の一つ。政府と中銀は問題の解決を重視し、協力して継続的に問題解決に取り組んできた。債務者の問題を解決するための持続可能な解決策の基礎を築くべく、中銀は責任ある公正な融資の原則を2024年初めから適用した。金融機関の厳格な監督を通じて、不良債権になる前と後の両方で債務リストラを促すことで問題に直面した債務者を支援してきた。
しかし経済の回復度合いは依然として各経済主体で異なり、家計や一部の中小企業の収入はいまだ完全には回復していない。一方で債務負担や生活費、事業運営コストは高水準にとどまり、その結果、多くの脆弱な債務者が債務返済で問題に直面している。
財務省、中銀、国家経済社会開発評議会(NESDC)事務局、タイ銀行協会(TBA)、外銀協会、政府系特殊金融機関協会といくつかのノンバンクは協力して、「あなたは闘い、私たちは助ける」と呼ぶプロジェクトの下で一時的な措置の実施を決定した。個人債務者と中小企業の特定のグループを援助するもので、債務返済の規律が失われる問題(モラルハザード)を防ぐとともに、財務規律を促進するメカニズムを設ける。
「あなたは闘い、私たちは助ける」プロジェクトは、脆弱な人々の家計債務問題を解決するため、政府、民間部門、債務者が連携して役割を果たす。プロジェクトに参加する債務者は登録し、条件に従って借金を返済しなければならない。政府と金融機関は支援費用の半分(50%)を拠出してプロジェクトに参加する債務者を支援する。
プロジェクトは2つの措置で構成される。
◆第1の措置「しっかり払って資産は保持」
住宅ローン、自動車ローン、小規模事業の債務者を支援するもので、月々の返済額を減らし、利息の支払いを3年間停止して債務リストラを進める。月々の返済はすべて元本の返済に回り、債務者がこの措置の実施期間を通じて条件(期限内に支払い、プロジェクト開始から最初の12か月間は追加の借入契約を結ばない)を遵守できる場合には3年間の猶予期間中の利息が免除される。このプロジェクトの主な目的は、債務残高のそれほど大きくない債務者が、住宅、車、事業所などの担保資産を保全できるよう支援することにあり、債務者の現在と将来の債務負担を軽減するのに役立つ。月々の返済額が減額されるため、債務者は生活に必要な資金を確保でき、利払いの免除は債務負担の軽減につながる。
対象とするのは今年10月末時点で不良化して1年以内の債務者。住宅ローンは残高が500万バーツ以下、自動車ローン(自動車登録書担保融資を含む)は80万バーツ以下、二輪車ローン(自動車登録書担保融資を含む)は5万バーツ以下、商工ローン(個人と法人)は500万バーツ以下で、今年1月1日より前に融資契約を交わしていることが条件。同措置に参加する金融機関は商業銀行とそのグループ会社と政府系特殊銀行6行(政府貯蓄銀、農業・農協銀、政府住宅銀、タイ・イスラム銀、タイ輸出入銀、タイ中小企業開発銀)。
債務者の参加は任意で、登録が必要。3年間にわたって利子が停止され、月々の返済額も初年度は従来の返済額の50%、2年目は70%、3年目は90%に削減される。参加する債務者は最初の12か月間に新たな借り入れができない(中小事業者の運転資金は除く)。債務者が3年間にわたって返済を履行すれば、停止されていた3年間の利子の支払いは免除される。免除する利息債務は国と金融機関が50%ずつを肩代わりする。返済条件を履行できなかった者はプロジェクトから離脱し、利息債務は加算され、国の支援は受けられない。
◆第2の措置「返して、閉じて、終わり」
不良債権状態にある債務残高が5000バーツを超えない個人債務者の債務負担を軽減する。債務者は債務の一部返済で、債権者と債務リストラの交渉をしなければならない。不良債務者のステータスを閉じて債務から解放することが目的で、より早くやり直すことができる。
今年10月末時点で不良化して1年以内で、残高が5000バーツ以下の債務者が対象で、債権者は商銀と政府系特殊銀行6行。放棄する債権の費用は国と金融機関が50%ずつを肩代わりする。
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「あなたは闘い、私たちは助ける」プロジェクトは、当初、商業銀行、政府系特殊金融機関と商銀系ノンバンクの債務者を対象とするが、追ってその他のノンバンクの債務者にも広げる。ただし条件は異なる。
◆ノンバンクの債務者援助措置
ノンバンクの参加資格は中銀が定める。対象とするのは、①残高80万バーツ以下の自動車登録書担保融資、②5万バーツ以下の二輪車登録書担保融資、③10万バーツ以下の個人ローン、④2万バーツ以下のデジタルローン、⑤5万バーツ以下の事業ローンの債務者。24年1月1日より前に成約したローンで、今年10月31日時点で返済が30日以上延滞しているか、返済は滞っていないが過去に債務リストラを受けたことがある者。
月々の返済額は従来の返済額の70%に削減され、利子は3年間にわたって10%削減される(例えば年25%の利子は15%に削減される)。ノンバンクには国が政府貯蓄銀を通じて利子補給する。政府貯蓄銀は500億バーツの与信枠を設け、年2%の金利でノンバンクに資金を融通する。期間は3年で、債務者の利子の削減で生じる損失に等しい額を融資する。GSBに支払う年2%の利子は国が3年間にわたって補給する。予算枠は30億バーツ。
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ピチャイ・チュンハワチラ副首相兼財務相は、政府が人々の借金問題を解決することの重要性を認識しているとし、この措置が苦しみを軽減し、人々の暮らしをより良くすると信じていると述べた。持続可能な債務問題の解決のためには、債務者のスキルアップ/リスキルによる収入の増加を組み合わせる必要があると指摘した。
セータプット・スティワートナルプット中銀総裁は、家計債務問題の解決について、中銀が重視し、継続的に推進してきた課題だと述べている。問題が解決できれば、人々の生活はより良くなり、経済は持続的に成長する。
総裁によれば、このプロジェクトには、これまでとは異なる重要な点が2つある。1つは債務者の資金流動性を高めるため、元本の削減と3年間の利払い免除による月々の分割払いの負担軽減に焦点を当てた債務再構成であること、もう1つは債務者の支払い負担を軽減するため、政府と金融機関が共同で費用を負担すること。プロジェクト名には、関係者全員の意図が反映されている。「あなたは闘う」は、債務者が借金問題を解決するために闘う準備ができていることを示す。「私たちは助ける」とは、政府と金融機関に債務者を支援する準備ができていることを意味する。このプロジェクトは債務問題を持続的に解決するため、債務者、政府、債権者が協力することを強調した。
タイ銀行協会のパヨン・シーワニット会長は、協会と加盟銀行がこのプロジェクトで政府を支援する準備ができていると述べた。加盟行と子会社のノンバンクを含めて約150万口座、負債額にして4000億バーツ以上を支援できるとの見通しを示した。
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