南部11県の洪水被害=天然ゴム生産減、14万㌧超
南部11県を襲った豪雨は深刻な洪水被害をもたらした。南部は天然ゴム輸出国であるタイにとって最重要の産地で、ゴムの生産への影響が懸念されている。タイ天然ゴム公団のスカタット・ターンウィリヤクン総裁代行によれば、気象局のデータを基に推定した11県のゴム園の被災面積は559万2621ライ。12月の天然ゴム生産量は14万2963.23㌧縮小する見込み。予想収量の24.75%に相当する。
被災したのはチュムポン、ラノーン、スラタニ、クラビー、トラン、ナコンシタマラート、ナラティワート、パッタニ、パッタルン、ヤラー、ソンクラーの各県。降雨時にはゴムの樹液を採取できないが、洪水で農作業機具が損傷して使えなくなったケースも多い。農園が冠水して足を踏み入れることさえできないケースもある。ゴム公団は登録農家の被災状況を調査しているところ。被災したゴムの木が1農園あたり20本を超える場合、規定に基づき天然ゴム開発基金から農家1世帯あたり最大3000バーツを補償するほか、上限5万バーツの無利子緊急融資プログラムを実施する。
ゴムの国際需要には先行き不透明感が漂う。全米供給管理協会(ISM)が発表した11月の製造業景気指数は13か月連続で中間値の50ポイントを割り込んだ。11月の非農業部門雇用数は前月比22.7万人増となったが、失業率は4.2%で市場予想の4.1%を上回っている。米金利の動向にも先行き不透明感が残っており、これらの要素から天然ゴムの国際需要は伸び悩み、価格にも影響を与えている。
中国では製造業の回復がバランスと安定性を欠いている。購買担当者景気指数(PMI)に如実に反映され、サービス業や不動産業は下半期に入って回復の兆しを見せているものの、第3四半期の成長率は鈍化した。国内消費が脆弱なことに加え、欧米が中国製品の輸入関税を引き上げたことが影響している。
欧州中央銀行(ECB)は利下げに動いたが、インフレ率が上昇する兆しを見せており、金利動向に不透明感が出ている。11月のユーロ圏HCOB総合購買担当者指数(PMI)速報値は48.1ポイントとなり、50ポイントを再び下回っている。一方、日本は経済指標の多くで景気の回復を示している。12月の全国企業短期経済観測調査(短観)によると、大企業製造業の景況感は2四半期ぶりに改善した。
タイでは8月以降の多雨でゴムの生産量が落ち込み、ゴムの価格が上昇している。12月18日現在のソンクラー市場でのシート状ゴムRSS3号の価格は1㌔㌘あたり75.59バーツとなっている。米国のウェブサイト「グランド・ビュー・リサーチ」によれば、昨年の世界の天然ゴム需要は469億5000万㌦だった。24~30年にかけては年平均5.08%の伸びを示す見込み。特に米国は自動車産業を中心に建設業や電機などでゴムの需要がある。
スカタット総裁代行は米国の自動車産業がEV生産にシフトしつつあることや、航空需要が急速に回復していることから、自動車や航空機のタイヤ需要が回復傾向を示すと見ている。一方、アジア太平洋地域の天然ゴム需要は23年に世界需要の34%を占めた。需要国は中国を筆頭にインドネシア、インドの人口大国のほか、ベトナム、タイ、日本など。中国とインドで自動車産業からの需要の伸びが著しくなっている。
FRBの利下げペース低下予想=バーツ安と株安が進展
12月19日の外為市場でバーツは急落し、株式市場も下落した。米連邦準備制度理事会(FRB)が18日に開いた連邦公開市場委員会(FOMC)の政策決定会合で、来年の利下げのペースが緩やかになることを明らかにしたためで、世界的なリスク資産売りが生じている。
FRBは0.25%幅の利下げを決定した。利下げは3会合連続で、下げ幅も市場の観測に一致したものだった。米国の政策金利であるFF金利は年4.25~4.50%となった。しかし同時に発表した政策金利の見通し(ドットプロット)によれば、25年末時点における金利水準の中央値は3.9%となり、9月の想定と比べて0.5ポイント上昇している。これは来年の利下げが0.25%幅で4回とした従来の想定が2回に減ることを意味し、利下げのペースが従来の想定よりも遅くなることを示している。
19日のマネーマーケットではアジア域内通貨が下落した。バーツの対ドルレートは16日以降、タイ中央銀行の参照レートで1ドル=34バーツ台前半をつけていたが、この日の参照レートは34.606バーツまで下げている。アジア域内通貨では、特に日本円が大幅に下落しており、アジア通貨安を牽引した。日銀が19日の政策決定会合で金利を年0.25%に据え置くと決定したことが円安の要因になっている。市場は日銀総裁の発言から次回、来年1月の会合でも利上げに動かないと観測した。
タイ中央銀行のサッカポップ・パンヤーヌクン総裁補は、FRBによる3会合連続での利下げについて、市場の想定通りだったが、25年の利下げの機会が2回にとどまるとしたことは予想と異なると述べている。バーツの変動幅が大きくなることを認めたうえで、中銀がバーツの動向を注視していることを明らかにした。同総裁補は19日、「昨夜からバーツの値動きを監視し、すでに最優先事項になっている」と述べている。ただしバーツの変動が外部要因によることも強調した。極端な値動きにならない限り、バーツ安と変動幅の増大を容認する考えを示したものと受け止められている。
19日には世界中の株式市場も下落した。世界中でリスク資産が売られた結果で、タイ株式市場のSET株価指数は前日比21.42ポイント(1.53%)安となる1377.53ポイントで大引けた。この日は最安値で1374.33ポイントまで下げている。売買代金は492億4708万バーツ。証券アナリストは、すでに悪化しているタイ株式市場の地合は一段と悪化し、株価はさらに下げる可能性があると予測している。
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