マツダがマイルドHEV生産=年間10万台の投資計画を発表
マツダ本社の毛籠勝弘社長兼CEO[=写真左]は2月13日、首相官邸にペートンターン首相を表敬訪問し、タイでのマイルド・ハイブリッド車(MHEV)生産の投資計画を発表した。投資額は50億バーツ。首相が委員長を務める国家EV政策委員会が承認したHEV/MHEV生産への投資奨励政策に呼応して、タイをマイルド・ハイブリッド仕様の小型SUVの生産拠点とする方針を示した。年間10万台の生産を予定し、世界市場への輸出を進める計画。
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マイルド・ハイブリッド車は、エンジンと電動モーターを組み合わせたハイブリッド車で、従来のエンジン車に比べて燃費性能が向上し、より環境に優しい技術が採用される。今回のマツダの投資計画は昨年12月に国家EV政策委員会が承認した「EV産業への移行支援策」に基づくもので、マイルド・ハイブリッド車の物品税は26年から7年間にわたって10~12%に引き下げになる。
投資委員会(BOI)のナリット・トゥードサティラサック事務局長[=写真右]は、BOIが自動車産業の高度化を促すため、自動化システム、ロボット、先端技術の導入を進める自動車メーカーに対し、特別な優遇措置を提供しており、マツダの投資はこの政策とも連携していることを明らかにした。今回のマツダの投資拡張は、タイの自動車工業の競争力に対する強い信頼を示していると述べている。
タイ政府は以前、EVの生産拠点化を目指し、バッテリーEV(BEV)生産を厚遇する政策を導入したが、現政権はすべての自動車技術の発展を支援し、より環境に優しい技術への移行を推進するため、ハイブリッド車の生産も優遇する方向に転じている。部品メーカーを含むサプライチェーン全体を強化し、産業の競争力を向上させたい考え。ナリット氏は、マツダによるマイルド・ハイブリッド車生産拠点の開設は、タイの製造業にとって重要な意味を持ち、タイがアジア地域の自動車工業のリーダーとしての地位を確立する大きな一歩になると語った。今後、他の自動車メーカーもこの政策に追随し、タイへの投資をさらに拡大する可能性が高いと期待している。
毛籠社長兼CEOは、マツダがタイで70年以上の歴史を持つことを強調し、今後さらなる投資の拡大を行なうと述べた。マツダ・セールスとディーラー・ネットワークの展開に加え、継続的な生産拠点の強化を行なってきた。1995年にはラヨン県にオートアライアンス・タイランド(AAT)の工場を開設し、乗用車とピックアップ車の生産を開始。2015年にはチョンブリ県にマツダ・パワートレイン・マニュファクチャリング(MPMT)の工場を開設し、エンジン、オートマチック・トランスミッションの生産を本格化させた。これらの生産拠点は、マツダのタイ国内外市場への輸出拠点としての基盤を確立し、タイはマツダの生産ハブになっている。
毛籠氏はペートンターン首相に、マツダがさらなる一歩を踏み出し、タイが電動車(xEV)のハブになることを支援するため、50億バーツの追加投資を決定したと伝えた。タイを小型SUVの主要な生産拠点とし、電動モーターを活用した省エネ、低排出、高い安全性を備えた車両を年間10万台生産すると説明した。タイ国内市場のほか、日本、アセアン諸国、その他の世界市場へ向けて輸出する。
投資計画は、組立ラインの拡張、エンジン/ギア/バッテリーの製造、生産技術の近代化と自動化、タイ国内の部品サプライヤーの強化と技術移転を含む。27年までに生産を開始し、急増するハイブリッド車の需要に応える。毛籠氏は「マツダにとってタイでのEV生産を本格化させる大規模な投資の始まり。マルチソリューション戦略の一環として、タイ政府と連携しながらEV産業とタイ経済の発展に貢献していく」と語った。
国家EV政策委が決めたマイルド・ハイブリッド車生産での投資支援策の主な条件は、①CO2排出量の環境基準、②タイ国内での追加投資、③国内生産部品の使用義務、④高度運転支援システム(ADAS)の搭載の大きく4項目。二酸化炭素排出量が100㌘/㌔㍍以下の場合、物品税は10%、排出量が100㌘超120㌘以下の場合は12%に厚遇される。24~26年に最低10億バーツ、24~30年に最低50億バーツの追加投資が必要。26年以降は国内生産のバッテリーを搭載し、28年以降は駆動用モーター(Traction Motor)または駆動補助部品を国内で調達・組み立てることが義務付けられる。ADASは6種類の機能のうち、最低4つを搭載しなければならない。
FTIエクスポ2025開幕=「4GO」戦略で工業を強化
ペートンターン首相は2月13日、シリキット会議場でのFTIエクスポ2025開幕式に出席し、「タイの工業の活性化とニューエコノミーの創出による持続可能な国の実現」と題して特別講演した。タイの工業界の最先端技術が集結した展示会は「4GO」戦略を軸に、デジタル、イノベーション、海外市場拡大、持続可能な組織開発の4分野に焦点を当てた。
エキスポのテーマは「Empowering Thai Industry, Elevating Thailand’s Future(タイの工業を強化し、タイの未来を発展させる)」。
首相はタイ経済と産業の構造改革を推進し、従来型の産業から未来志向の産業へと転換することの重要性を強調。競争力の向上と持続可能な経済、社会、環境の発展を両立させる必要があると訴えた。工業部門がタイ経済を支える重要な原動力で、GDPの3分の1を占めていることを示し、民間セクターが生産や人材育成に多くの投資と努力をしていると強調した。政府は、タイの工業をさらに成長させ、世界に向けて発信する準備が整っていると述べた。新型コロナの危機を乗り越えた今、タイの工業は強固で、今後も高品質な製品と優秀な人材を生み出し続けると期待した。
民間と政府の協力により、タイの工業部門をより強く発展させることができると述べた。未来産業への移行、経済成長の新たなエンジンの開発、投資環境の整備、大規模インフラ投資、人材育成を進める。生産基盤を強化し、世界標準の品質を確立し、商品やサービスの付加価値を高め、競争力を強化するとした。
中小企業が全企業数の4分の3を以上を占めていることから政府は中小企業の発展を支援するため、法律の見直しや規制緩和を進め、投資機会の拡大と能力の強化を図ると述べた。この取り組みの一環として、支援チームを設け、支援を強化するとした。
首相は各国との協力を通じて研究開発への投資を強化しなければならないと指摘した。FTIが高等教育・科学・研究・技術革新省と連携し、研究開発の強固な基盤を築くことを期待した。首相は「タイには多くの優秀な人材がいる。政府は民間と協力し、タイ人の価値を向上させるとともに、産業を発展させていく。民間と政府が協力することで、持続可能な工業の発展と経済成長を実現し、国民の生活を豊かにする」と強調した。
開幕式には、プームタム・ウェーチャヤチャイ副首相兼国防相、ヂラポン・シントゥプライ総理府相、マリット・サギアムポン外相、ピチャイ・ナリプッタパン商業相、エカナット・プロムパン工業相、チュラパン・アモンウィワット財務副大臣、パオプーム・ローチャナサクン財務副大臣をはじめ、各国大使、政府関係者、民間企業の経営者ら多数が出席した。
◆4GO
FTIのクリアンクライ・ティアンヌクン会長は、世界経済が直面している課題により、現代社会がますます不安定かつ複雑になっていると指摘した。工業界は、技術の進化、地政学的な対立、貿易戦争と技術競争、さらには気候変動の影響など、予測困難で年々深刻化する課題に常に適応し続ける必要があると主張した。
同会長は「これらの挑戦に対し、タイは一丸となって乗り越え、課題を国の発展の機会へと変えなければならない。産業構造の改革を急ぎ、新たな経済への移行を進めるとともに、技術とイノベーションを活用して製造業の発展を促すことで、タイの製品やサービスの付加価値を高めることが重要」と語った。また未来産業を支える人材を育成するため、教育開発にも注力し、タイをこの地域の生産拠点として確立する戦略を推進していく必要があると訴えた。
FTIエキスポは、タイの企業の競争力を強化し、国内外の投資家や産業界の信頼を高めることが目的。47の産業部会、全国76県の工業連盟、FTI傘下の研究機関、政府機関、民間セクター、国際機関、教育機関の協力のもとで実現した。「ONE FTI(ONE Vision, ONE Team, ONE Goal)」のスローガンのもと、タイの産業発展の基盤を築く。
FTIは中小企業を「スマートSME」に成長させるため、「4GO」と呼ぶメカニズムを導入し、工業部門のトランスフォーメーションに取り組んでいる。「GO Digital & AI」「GO Innovation」「GO Green」「GO Global」の4つの柱で構成されている。
1.GO Digital & AI
デジタルインフラの強化により、データセンターへの投資を促進し、中小企業やスタートアップの成長を支援する。
AI分野の開発を進め、関連法規を整備する。
2.GO Innovation
半導体などの未来産業への投資を促進する。昨年10月には首相を委員長とする国家半導体産業政策委員会が設置されている。
3.GO Green
環境に配慮した産業開発を推進し、新技術と環境保護を両立させる。
「Low Carbon Rice(低炭素米)」の栽培を奨励し、持続可能な農業を推進する。
4.GO Global
自由貿易協定を重視し、タイの工業の国際競争力を強化する。今年1月23日にはEFTAとの自由貿易協定(FTA)を締結した。今後、EU、アラブ首長国連邦、ブータンとのFTA締結を目指し、中小企業の海外市場進出を支援する。
◆旅客ドローンの実演
エキスポは、タイ製品、サービス、イノベーションの市場拡大の場となり、「Made in Thailand (MiT)」認証を受けた製品を通じて、国際市場との貿易・投資の架け橋を築くことを目指している
「FTI OUTLET」ゾーン を設置し、全国のFTI会員企業の高品質な製品を特価で提供している。
イベントのハイライトの一つが旅客ドローン「Silver Hawk」の実演。タイ初の 「Made in Thailand 」認証 を受けた旅客ドローンで、タイ企業が開発に成功した次世代の輸送テクノロジー。タイの産業界の未来を象徴するもので、展示会期間中、毎日1回(14:00~15:00)シリキット会議場の「プラサラットワディ広場」(ゲート2)とベンジャキティ公園 で実演が行なわれる。
FTIは15日まで開催するこのイベントで7万人以上の来場者を見込んでおり、1000億バーツ以上の商談機会が出まれると期待している。
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