米国との関税交渉延期=首相は国益最優先を強調
ペートンターン首相は4月22日の閣議後の会見で、米国の関税引き上げに関する交渉の延期に言及した。米国側から交渉におけるいくつかの主要項目を再検討するよう要請があった。首相は、タイ側では関係するすべての省庁が米国による関税措置について協議を進めており、事前交渉チームの派遣も行なってきたが、交渉内容について一部見直す必要がある項目が出てきたため、再調整のうえで改めて協議の場を設けることになったと説明した。交渉項目の詳細については、ピチャイ・チュンハワチラ副首相兼財務相から後日説明が行なわれるとしている。

首相によれば、米国に駐在するタイ側代表チームから、米国がいくつかの項目について再検討を求めているとの連絡があったという。交渉団は、ピチャイ・チュンハワチラ副首相兼財務相[=写真右]を団長とし、当初は22日にワシントンへ向けて出発する予定だったが、延期した。新たな交渉日程は後日設定される予定だが、再検討を求められている具体的な項目については明らかにしていない。これまでの報道によると、タイは米国からのエネルギー、航空機、農産物の輸入拡大や一部輸入関税の引き下げなどを提案している。
昨年のタイの対米貿易黒字は456億㌦。トランプ大統領はタイ製品に36%の相互関税を課すと発表。当初は4月9日に発効予定だったが、90日間の猶予期間を設け、交渉の機会を与えている。
ペートンターン首相は、野党が2026年度予算案の見直しや、米国の関税措置への対応策を提案していることについて、あらゆる意見に耳を傾けつつ、長期的な影響も含めて慎重に検討すると述べた。自身が米国に渡航して直接交渉する可能性について問われた首相は、協議のレベルや必要性を見極めたうえで対応するとし、必要とあれば自身が交渉に臨む用意はあると明言した。
タイ政府の対応が遅れをとっているのではという懸念には、米国が相互関税の発動まで90日の猶予を設けていることから、現時点では遅すぎるとは考えていないと述べた。また、非公式ながら交渉チームが常時動いていることを強調し、非公式の協議を通じて、どのような論点を交渉に盛り込むべきかを整理している段階だとした。米国がタイに払う関税が不当に高いと見なされている点については、他国同様に調整を進める考えを示した。
◆経済政策と外交方針の見通し
タイ経済全体については、世界的な経済環境が依然として厳しい中、慎重かつ継続的に対処していく必要があると述べた。アセアンとの連携については、今年のアセアン議長国であるマレーシアのアンワル・イブラヒム首相と非公式な対話を行なっており、協力の可能性について言及があったことを明らかにした。4月23、24日に予定しているカンボジア訪問中にも改めて意見交換を行なう予定だと述べた。
米国の関税引き上げが、政府のデジタルウォレット政策に影響を及ぼすかとの質問には、現時点では特に変更はなく、今後調整が必要な点が出てきた際に検討していくと述べた。また、輸出入における影響を分析しながら、農業従事者や事業者に最大限の利益をもたらすよう調整していくと語った。
米中間の緊張に関連し、中国はタイに対し「米国に傾きすぎれば報復措置があり得る」と警告している。首相は、「タイは米国とも中国とも良好な関係を築いており、その関係を維持していきたい。両国とのバランスを保つ必要がある」と語った。対米交渉は双方に利益をもたらす形になるべきだと強調し、一方的に譲歩する姿勢はとらないと明言した。
ピチャイ副首相兼財務相は、「米国との交渉に臨む前に十分な情報が必要」と語り、他国と米国との交渉の結果を見守ったうえで、自国の対応を判断すべきとの見解を示している。現時点で相互関税の発動まで約70日が残されており、米国側が懸念している通貨政策や原産地表示などを中心に検討を進めるという。外交チームは在米タイ大使館を拠点に情報収集を行なっており、国内の経済・通商チームは国家経済社会開発評議会(NESDC)と連携して、関税措置が発動された場合の経済への影響を評価し、必要な支援や改革策の準備を進めていると説明した。
ピチャイ副首相は、第1四半期の経済は持ちこたえているが、第2四半期に深刻化する可能性があるため、輸出、製造業、雇用への影響に備える必要があると述べ、必要であれば財政支出や公的債務上限の見直しも視野に入れて対応するとした。
ピチャイ・ナリプッタパン商業相は、米国との交渉は継続中で、米通商代表部(USTR)のジェミソン・グリア氏とは連絡をとり続けていることを明らかにした。また、2024年末に米国大使館からタイに対して関税関連の要望事項のリストが提出されており、商業省が検討を進めてきたと述べた。ピチャイ商業相は「焦って交渉する必要はない。他国が交渉を進め、その結果を見てから対応する方が望ましい」と語り、190か国以上が交渉を待っている状況にあると説明した。
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