経済3団体、バーツ高と成長鈍化に懸念=中銀に早期利下げと為替是正を要請
商業、工業、銀行の経済3団体合同常任委員会(JSCCIB)は7月2日の月例会見で、外為市場でのバーツの急な上昇に強い懸念を表明した。現在、バーツは1ドル=32.5バーツ台まで上昇しており、ベトナム、インドネシア、中国など域内の他国通貨よりも顕著な上昇幅を示している。また、名目実効為替レート(NEER)で見ると、1997年以前の水準に匹敵するほどのバーツ高となっており、企業の競争力が低下する一因となっている。
JSCCIBは今回のバーツ高は、著しく減速している経済の実情と合致しておらず、貸出残高が収縮し、金利の将来的な低下を市場が予測する「逆イールドカーブ」の状況とも整合していないと指摘。中銀に対しては、政策金利の引き下げと、バーツが経済のファンダメンタルズに沿った水準となるよう早急に対処するよう求めた。
現在、輸出は高い伸びを示しているものの、輸入の増加と並行している。製造業や雇用は依然として新型コロナ感染拡大時からの水準にとどまったままで、構造的な問題が続いていることを反映している。原産地偽装や迂回輸出の問題、品質に劣る輸入品に対する法の執行と規制の不十分さ、国内のサプライチェーン構築や付加価値創出を重視しない投資奨励政策などを批判した。原産地偽装・迂回輸出問題の早期解決には、情報管理体制の構築と、官民協力のもとでの体系的な対応が必要で、政府やタイの民間部門に加え、正規にタイ国内に参入し、国内産業を支援する外国企業の協力も不可欠だと指摘した。こうした連携を通じて、国内産業保護の水準を高めていく必要があるとしている。
タイ工業連盟(FTI)のクリアンクライ・ティアンヌクン会長[=写真右端]は、経済の各分野における見解と認識を共有し、相互理解を深めることを目的に、タイ中央銀行、国家経済社会開発評議会(NESDC)、財務省、商業省に面会を申し入れる方針を明らかにした。産業構造の再編についても協議する予定で、クリアンクライ会長は、政府と連携したうえで、金融部門と産業部門の協力が不可欠と指摘。限られた資源のなかで、タイの競争力の向上を効果的に支援するため、対象産業の選定と優先順位の整理が求められると述べている。

今年下半期の世界経済は、引き続き高い不確実性に直面する見通し。米国と各国、特に中国、英国との間での通商交渉は進展しているものの、7月9日より前に具体的な合意に至る可能性は低く、期限が延長されなければ高率の関税が課される事態につながる。一方で、主要国経済は減速傾向を示している。また、中東における地政学的対立はさらに激化する可能性がある。
タイの下半期の輸出は減少する見通しにある。1~5月の輸出額は前年同期比14.9%増となったが、これは米国の関税措置に関する猶予期間終了前の駆け込み輸出によるもので、すでに勢いが鈍化する兆しがみられ、下半期の輸出額は前年同期比で10%以上の減少となる可能性がある。その結果、通年の輸出の成長率は0%に近づく見込みで、製造業、雇用、関連するサプライチェーンにおける労働者の所得に影響を与えることになる。
下半期のタイ経済は減速する傾向にあり、JSCCIBは通年の経済成長率が1.5〜2.0%の水準にとどまると見積もった。米国の関税率が10%に据え置かれた場合は約2.0%の成長となるが、関税率が36%の相互関税の半分の18%の水準まで引き上げられた場合は、成長率は1.5%近くまで低下する。
内需の減速傾向、中国人観光客数が予想を下回っていること、長距離からの観光客による穴埋めが進んでいないこと、さらに政局の不確実性が残るなか、2025年度の残り期間における予算執行や、2026年度歳出予算法案の審議にも影響が及び、これらが第4四半期の経済に影響を及ぼすことを警戒している。JSCCIBは中銀が今年の経済成長率見通しを2.0%から2.3%に上方修正したことついて、従来予測より改善するとの見方には同意しないとしている。
個人債務者援助プログラム「あなたは闘い、私たちは助ける」は、家計債務問題の持続的かつ具体的な解決に向けた出発点になると評価した。このプロジェクトは、金融の規律に反することなく、モラルハザードを生じさせない形で、家計債務問題を解決するという政府の方針に基づき昨年12月から実施されている。これまでに登録した債務者は140万人に上り、そのうち63万人がプログラム参加対象に該当し、対象債務額は4600億バーツとなっている。
現在は第2フェーズへと拡張されており、既存の措置の条件が見直されるとともに、新たな支援策も追加され、脆弱層の債務者に対する支援がより包括的となっている。クリアンクライ氏は、脆弱層に効果的な債務リストラが図られることを期待していると語った。
一方で、債務問題解決の取り組みは、所得創出の促進、事業者のトランスフォームによる競争力の強化、福祉の強化、ならびにインフォーマル経済と闇金融問題の解決と並行して進める必要があると指摘した。対症療法的な解決にとどまらせず、債務者が真に自立的に更生を果たせることが重要だと指摘した。
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