中銀がオンライン送金に上限=原則1日5万バーツに制限
タイ中央銀行はコールセンター詐欺による架空口座への送金を抑止するため、新たにデジタル・チャネルでの振込額に上限を設ける。ダラニー・セーチュー総裁補[=写真]は8月19日の記者会見で、被害額が高水準で、手口も巧妙化していることから、早急な対策が必要と判断したと説明した。タイ銀行協会(TBA)と連携し、モバイル・バンキングやインターネット・バンキングを通じた送金に1日当たりの上限額を定める。特に子供や高齢者の口座に制限を設け、被害の最小化と犯罪組織による大口資金移動の抑止を狙う。

ダラニー氏は、政府が公布した「テクノロジー犯罪防止取締措置に関する緊急勅令(第2版)」の施行に合わせた、金融機関に対する新たな基準と措置を発表した。新制度では、金融機関や電子決済事業者、デジタル資産事業者、通信事業者、SNS事業者などが、テクノロジー犯罪による損害に対して責任を負うことが定められている。ただし、監督当局が定める防止基準を順守したことを証明できる場合は免責となる。
中銀は8月8日付で金融機関向けのテクノロジー犯罪防止基準を施行した。ダラニー氏は、1.問題に的確に対応すること、2.実務上の手順を明確にすること、3.タイの状況に適合すること、4.国際水準を下回らないこと、5.国民の危機意識を高めること、という5本柱を重視したと説明した。今回の告示には、すでに中銀が推進してきた架空口座対策などに加え、補強する措置も盛り込んだ。新たな規定では、預金口座から資金が流出した場合の顧客への通知義務などを明記し、犯罪防止の網羅性を高めた。
中銀が新たに定めた基準の具体策は5項目にわたる。
第1は、利用者に成りすました不正送金の防止とモバイルバンキングのアプリケーションの防御。被害を誘発するリンクの添付を禁止し、モバイル端末からのアクセスを制限する。さらに、高リスク取引では顔認証と生体認証偽装検知を組み合わせて確認する。アプリの改変を監視し、危険性のある他のアプリが稼働中の端末上では動作を認めない。
第2は、預金口座開設時の顧客確認(KYC)。中銀と資金洗浄防止取締事務局(AMLO)が定める基準に従い、顧客の本人確認と身元認証を徹底し、架空口座の発生を防ぐ。
第3は、顧客リスクの格付け。架空口座の所有者を「ブラック」「ダークグレー」「ライトグレー」に区分し、高リスク顧客として扱う。これらについては「強化されたデューデリジェンス」(EDD)を実施し、利用開始前に事実確認を義務づける。
第4は、被害拡大の抑制と口座管理。送金発生時には、利用者に即時通知を無償で提供する。不審な取引が確認された場合、取引の停止やデータ共有を行ない、入金・出金を差し止める。さらに、高リスク顧客に対しては新規口座の開設を拒否する。
第5は、デジタル詐欺被害の通報体制。金融機関は、営業時間内外を問わず被害者が直ちに連絡できる専用電話や電子的な緊急窓口を整備する。
金融詐欺の手口や行動様式は変化が続いており、被害額は減少傾向にあるものの依然として高水準にある。中銀は今回、タイ銀行協会と連携し、予防的な枠組みを一段と強化する。個人顧客のデジタルチャネルを通じた一日当たりの送金・決済上限を、取引行動に即した水準(カスタマープロファイリング)にする。これにより、銀行がより積極的に詐欺被害の抑止と損害の限定に取り組める体制を整える狙いだ。
中銀の支払システム・金融消費者保護監督シニアダイレクターのオラモン・チャンタパン氏[=写真]は、措置の目的を2点挙げる。第1に、不正者が一度に多額を送金できないようにすることで、違法に得た資金を迅速に移転するのを阻止し、被害資金の差し止めの可能性を高める。第2に、国民が被害を受けた際の損失を抑える。特に子供や高齢者といった詐欺の主要なターゲットに配慮する。銀行は顧客のリスクや過去の取引行動に応じて、1日当たりの送金・決済上限を設定する。初期設定は1日あたり5万バーツ以下となる。
中銀はまた、顧客に過度な不便が生じないよう銀行に配慮を求める。緊急時に1日あたり上限を超える送金・決済が必要な場合に対応できる仕組みを備えることを義務づけた。今回の新ルールは、モバイルバンキングやインターネットバンキングを新規に利用開始する顧客については2025年8月末までに、既存顧客については同年末までに適用される。
中銀は今回の取り組みにより、特に脆弱層が被害を受けた場合でも損失を最小限に抑え、不正に得られた資金を差し止めることで返還可能性を高めたい考えだ。
個人預金口座の過去の動きを基に検討した結果、原則として1日当たり5万バーツを上限とすることにした。被害件数のうち、1回で5万バーツを超える送金が全体の75%に上ることを重視した。中銀は銀行に対し、口座を「レッド」「M」「L」の3段階に分類するよう指導。「レッド」は架空口座の可能性が高い口座や新規口座で、上限は5万バーツ。新規口座は3~6か月の取引実績を踏まえ、顧客の要望に応じて引き上げを検討できる。「M」は上限20万バーツ、「L」はそれ以上とする。15歳以下と65歳以上の名義口座は被害リスクが高いとして、5000~3万バーツの範囲で上限を個別設定可能とした。高齢者については、必要に応じて銀行の判断で上限超えの送金を認めるなど柔軟性も残した。加えて、5万バーツ超の送金には従来通り顔認証を義務付ける。
新規口座には8月末から適用を開始し、既存口座は年末をめどに適用する。ただし銀行側の体制が整えば前倒しも認める。上限額を制限する場合、銀行は口座名義人へ速やかに通知し、必要に応じて柔軟に対応できる仕組みも残す。
ダラニー総裁補は、今年第2四半期の詐欺被害総額が60億バーツにのぼったと明らかにした。6月単月では2万4500件、総額28億バーツの被害が発生し、1件当たり平均11万4000バーツ、最高で490万バーツに達した。これまでに凍結された架空口座は300万口座近く、名義人は19万7000人に及ぶが、増加は続いている。特に60歳以上の高齢者の平均被害額は40万バーツにのぼる一方、15歳以下の子供の被害件数は少ないが、親名義の口座が狙われるケースが確認されている。
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チャルーン・ポーカパン・フーズ社(CPF)は、今年上半期(1~6月)の純利益が189億バーツとなり、前年同期比134%増を記録したと発表した。海外事業が好調で、全売上高の3分の2を占めた。サプライチェーンの効率化、厳格な家畜疾病予防措置、効果的なコスト管理に加え、飼料原料の大豆ミール価格の下落が寄与した。
プラシット・ブンドゥンプラサートCEOによれば、売上高は2920億バーツに達した。内訳は、国際事業が62%、輸出が5%、国内販売が33%。世界16か国での合弁事業を通じて、50か国以上に食品を輸出している。現地通貨ベースでは売上が6%増加しているが、バーツ高により決算上の売上高は1%減少した。
純利益の大幅な増加は、複数の市場での鶏肉と豚肉の平均価格の上昇によるもので、40か国以上で発生した鳥インフルエンザやアジア地域でのアフリカ豚熱など、世界的な食肉供給の逼迫に起因している。飼料コストの低下と厳格なコスト管理も利益率を押し上げた。
プラシット氏は、グローバルなサプライチェーンにおける食品安全と品質の確保に取り組む姿勢を強調。イノベーションと強固な防疫システムを活用することで、家畜の疾病リスクを抑制し、生産の安定と消費者の信頼を確保してきたと述べ、下半期も好調な流れが続くとの自信を示した。
米国との取引について、エビ輸出は総売上高の0.1%未満に過ぎず、すでに米国内で調理済み食品の生産拠点を運営していると説明。現地生産・販売を進める「ローカライゼーション戦略」に沿って、今後さらに拠点を拡大する計画を示した。
取締役会は8月14日、1株当たり1バーツの中間配当を承認した。権利確定日は9月1日、支払日は9月12日を予定している。
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