2025年9月12日(金)号

Kリサーチが成長率予測を上方修正=リセッション懸念は後退

 カシコンリサーチセンター(Kリサーチ)は9月9日、今年の経済成長率予測を従来の1.5%から1.8%に上方修正したと発表した。トランプ関税発動を前に電子機器を中心とした物品輸出が加速したこと、また年後半の景気減速が当初予想より小幅にとどまりそうなことを理由に挙げた。ブリン・アドゥンワタナ社長兼チーフエコノミスト[=写真]は、タイ経済が「テクニカル・リセッション」に陥るリスクは低下したと述べた。


 ブリン氏によれば、世界経済の不確実性は依然として高く、特に米国では大統領が米連邦準備制度理事会(FRB)の独立性に介入したことで、市場は9月から大幅な利下げに動くと予想している。米国の経済政策の不透明さが雇用の減速につながり、ドルへの信認も揺らぎ、今年に入ってドルはすでに約10%下落していると指摘した。
 タイ経済は、米国の通商拡大法232条に基づく関税や、第3国経由輸入品への課税(トランスシップメント防止関税)が発効する前の駆け込み輸出が成長率を押し上げている。年後半の輸出の減速は想定よりも小幅で、景気後退リスクは和らいだが、米関税の直接・間接的影響、観光業の停滞、政治要因など課題も多いとした。
 金融政策については、年内にタイ中央銀行の金融政策委員会(MPC)が追加で0.25%の利下げに踏み切る可能性があると予測。その場合、短期的な景気刺激策と並行して進めることが重要だとした。
 ブリン氏は、米国のトランスシップメント規制により、原材料の国内使用率が50%未満の産業が打撃を受けるリスクがある点を指摘した。対象は機械、電気製品、繊維、化学製品などで、これらはタイの対米輸出全体の約27%を占めている。タイが課される関税率は加重平均(Effective rate)で26%程度と推計され、マレーシアよりは低いが、ベトナムやインドネシアより高い水準になる。タイの輸出品のうち約19%が高関税対象となっており、対米輸出額のほぼ半分に影響が及ぶ可能性があるため、生産部門への支援が急務だと指摘している。
 さらに、米通商拡大法232条に基づく輸入関税の影響が今後一層強まると警告した。現在、対象となるタイ製品は米国のタイからの輸入全体の12.3%にとどまっているが、第4四半期に想定される半導体への課税開始後は19.5%に上昇すると予測した。半導体は100〜300%という極めて高い関税が課されるもようで、初期段階ではハードディスクやコンピュータといった半導体を部品として使用する電子機器は除外されるものの、タイの半導体輸出全体に影響を及ぼすことは避けられない。米国はタイの半導体輸出の16.2%を占める主要市場で、2025年には2桁成長が見込まれるものの、2026年の半導体輸出は4.8%の減少に転じると見積もった。

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