2025年9月18日(木)号

工業信頼感が6か月連続悪化=政治混迷・国境問題が影響

 タイ工業連盟(FTI)が9月17日に発表した8月の工業部門信頼感指数は86.4ポイントで、7月の86.6ポイントから低下した。指数の前月比での下落は6か月連続となった。


 憲法裁判所によるペートンターン氏の首相の地位失効判決後の政治的不確実性、2025年度最初の11か月間の政府の投資予算の執行額が目標を下回っていることや米国が課す域内付加価値比率(RVC)の税率に関する不透明や米国に対する市場開放品目に関する不確実性が輸出入部門に影響を与えている。また、タイ・カンボジア国境の閉鎖が国境貿易に打撃となっており、8月の貿易額の損失は推定で140億バーツにのぼる。このほか、「カジキ台風」による洪水被害が、北部地域の商業や農業に直接的な影響を及ぼした。さらに、カンボジア人労働者の帰国が続き、労働集約型産業において短期的な労働力不足を引き起こしている。
 8月にはいくつかのプラス要因もあった。タイ中央銀行の金融政策委員会(MPC)が政策金利を0.25%幅で引き下げ、年1.50%としたことにより、事業者の金融コスト負担は緩和した。加えて、ペートンターン政府が185億バーツの経済刺激予算を承認し、そのうち100億バーツを競争力強化基金に配分されることになった。国内の自動車販売は回復傾向を示し、とりわけEVはビッグモーターセールの開催が追い風となった。
 FTIの47業種を網羅する1350 社を対象とした8月の調査によれば、事業者が前月比で懸念を強めている要因は、国内経済(70.1%→72.6%)、政府の政策(57.2%→60.4%)、為替レート(輸出業者の視点)(44.9%→45.7%)。一方、懸念が和らいだ要因は、世界経済(66.7%→61.0%)、資金アクセス(42.3%→35.1%)、エネルギー価格(35.5%→32.4%)、貸出金利(27.1%→26.1%)だった。
 向こう3か月の先行指数も同様に低下し、7 月の89.2ポイントから88.9ポイントに下落した。新政権の発足遅れが主要政策の実施に影響を及ぼす可能性があるためで、米国との関税交渉、タイ・カンボジア国境問題の解決、さらには景気の回復に及ぼす影響が懸念されている。また、米国による相互関税の発効後に取引相手国からの需要が減少傾向にあり、製造業と輸出業者に影響を及ぼしている。電気製品産業などでは、トランスシップメントの条件が不明確なことから、40%の関税が課されるリスクがある。
 もっとも経済を下支えすると期待される要因もある。「コンラクルン(半分ずつ)」プログラムにより消費者の生活費負担が軽減され、購買力を刺激し、経済全体における資金循環を増大させる効果が見込まれる。また、11月から12月にかけてのハイシーズンにおける観光業の回復は、支出や商品の消費に好影響を与えると期待されている。
 FTIは政府に対し、事業者が準備を整えることができるよう相互関税の条件、とりわけRVCの問題や、タイが米国に市場を開放する品目リストについて早急に明らかにするよう求めている。2025年度の残り期間の投資予算の執行を加速させ、資金を経済システムに注入するとともに、2026年度の歳出予算の下での事業実施の準備を進めるよう要請した。あわせてタイ・カンボジア国境閉鎖の影響を受けた事業者を具体的に支援する措置を速やかに導入するよう求めた。例えば、追加で発生した輸送・物流費用を法人税の課税所得計算において2倍の経費として控除できるようにするなどの措置を要望した。このほか、余剰資材や副産物を新たな付加価値製品の製造に活用できるよう、サーキュラーエコノミーの原則に基づき、関連する法律や規則の改善を提案した。

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