2025年11月18日(火)号

第3四半期の成長率は1.2%に減速=通年予測は2.0%、26年は1.7%

 国家経済社会開発評議会(NESDC)事務局が11月17日に発表した第3四半期(7~9月)の経済成長率は1.2%成長となり、第2四半期の2.8%から減速した。季節調整済みの前四半期比では0.6%減と、マイナス成長となり、景気後退(リセッション)への懸念が高まっている。1〜9月の成長率は2.4%。今年通年の成長率は2.0%増と予測し、2026年は1.7%と見積もった。

会見するオンファー・ウェーチャチーワ事務局長


 支出面では、民間消費と民間投資が引き続き拡大した一方で、物品輸出は減速し、政府消費支出、政府投資、サービス輸出は収縮した。
 民間消費支出は第3四半期に前年同期比2.6%増となり、前四半期の2.6%に引き続き拡大した。非耐久財への支出は3.0%増と前四半期の2.5%増から加速した。耐久財消費は5.5%増で、前四半期の6.1%から鈍化したものの、自動車購入が14.0%増と引き続き高い伸びを示した。サービス支出は2.2%増で、前四半期の2.3%増からほぼ横ばいとなった。半耐久財への支出は0.9%増となり、前四半期の2.0%増から伸びが鈍化した。
 政府消費支出は3.9%減と前四半期の2.2%増から大きく落ち込んだ。第3四半期の経常的経費予算の執行率は20.2%で、前四半期の21.7%より低かったが、前年同期の19.9%を上回った。
 総固定資本形成(投資)は前年比1.1%増となり、第2四半期の5.8%増から大幅に減速した。民間投資は4.2%増と前四半期の4.1%増から拡大が続いた。設備投資が5.5%増と前期の5.9%増からわずかに鈍化した一方、建設投資は0.6%減と前四半期の2.0%減に続いて縮小した。政府投資は5四半期ぶりの減少となり、5.3%減と前四半期の10.1%増から大きく落ち込んだ。政府建設投資が6.6%減と大きく減少した一方で、政府設備投資は1.0%増となった。第3四半期の政府の投資予算の執行率は20.5%で、前期の15.1%を上回ったが、前年同期の37.5%には届かなかった。
 第3四半期の物品輸出額は861億9600万㌦となり、前年同期比11.5%増と前期の15.0%増から伸びが鈍化した。輸入額は792億3100万㌦で、12.2%増と前四半期の16.8%増から伸びが鈍化した。貿易収支は70億㌦(2244億バーツ)の黒字となり、前期の53億㌦(1720億バーツ)から黒字幅が拡大した。
 生産面では卸売・小売業が伸びを強めた一方、農林水産業、宿泊・飲食サービス、運輸・倉庫は前四半期から減速し、製造業と建設業は減少に転じた。
 農林水産業は1.9%増となり、前の四半期の6.4%増から大きく減速した。製造業は6四半期ぶりに減少へ転じ、前年同期比1.6%減となった。前四半期の1.7%増からの悪化は、製油所の定期メンテナンスによる休止や、自動車メーカーが生産効率向上のために工場を中部から東部へ移転するなど、一時的要因の影響が大きい。工業生産指数は2.4%減となった。設備稼働率は57.39%と、前の四半期の59.04%、前年同期の58.77%を下回り、2020年第2四半期以来の最低水準となった。
 宿泊・飲食サービス業は前年同期比0.8%増となり、前の四半期における1.4%増から減速した。建設業は5四半期ぶりに減少に転じ、4.0%減となった(前の四半期は8.0%増)。主因は、政府建設が5四半期ぶりに6.6%減となったことにある。民間建設は6四半期連続で減少し、0.6%減となった(前四半期は2.0%減)。住宅建設が全国的に減少した一方、非住宅建築は工場建設の増加に伴い、プラスに転じた。

◆2025年の経済見通し
 タイ経済は2025年に2.0%成長が見込まれ、2024年の2.5%から減速する見通し。平均インフレ率はマイナス0.2%、経常収支はGDP比2.8%の黒字と予測される。

◆2026年の経済見通し
 2026年のタイ経済の成長率は1.2~2.2%の範囲で推移すると予測され、中央値は1.7%となる。民間消費と民間投資の拡大、政府支出、観光業の回復、農業生産の増加が支えとなる。ただし、米国の通商制限措置、世界経済と貿易の減速、依然として高水準にある家計と民間部門の債務負担、世界経済と金融情勢の変動、選挙前後の経済・政治環境などリスク要因も多い。
 ベースケースでは、民間消費と民間投資はそれぞれ2.1%、0.9%の成長、ドル建て輸出額は0.3%減と見込まれる。平均インフレ率は0.0~1.0%の範囲、経常収支はGDP比2.4%の黒字になると予測されている。
 民間消費支出は、2025年の2.8%に続き2.1%成長が見込まれる。政府消費支出は、2025年の0.3%から加速して1.2%成長が見込まれている。総投資は2025年の3.3%から減速して1.4%成長と予測される。民間投資は、2025年の2.0%増に対し、0.9%増に減速する。政府投資は、2025年の6.8%から減速して2.9%増となる。
 物品輸出額は、2025年の11.2%という高い成長と比べて0.3%減少が見込まれている。貿易措置の影響を受ける世界経済と世界貿易量の減速傾向と一致する。一方で、サービス輸出は改善する傾向にあり、2026年の外国人観光客からの収入は1.65兆バーツとなり、2025年の1.52兆バーツを上回る。これにより、20026年の物品・サービス輸出量は、前年の8.8%増から減速して1.1%増となる見通し。

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