2025年12月29日(月)号

タイとカンボジアが停戦合意=72時間監視を条件に

 ナッタポン・ナークパーニット国防相は12月27日、タイとカンボジアが同日12時から停戦すると発表した。両軍は現地の兵力を維持し、移動・増派・攻撃・再挑発を行なわないことで合意した。タイは72時間の監視後、拘束しているカンボジア兵18人を釈放する。


 この日午前10時15分、チャンタブリ県バーンパッカード常設国境検問所で開催されたタイ・カンボジア一般国境委員会(GBC)の会合で共同声明に署名した。停戦は同日正午に発効した。カンボジア国防省もこの合意について報告している。
 その後、ナッタポン国防相が記者会見を行なった。これまで国境沿いで続いてきた衝突の期間を通じ、政府とタイ国軍は一貫して、主権の防衛、国民の安全、そして国家の名誉を守るという明確かつ不変の原則のもとで職務を遂行してきたと述べた。
 今回の事態はカンボジア側による武器使用から始まり、その結果、タイ側の兵士に負傷者と死者が出た。国軍は、国際法に基づく自衛権と国際的に認められた軍事原則を厳格に遵守し、必要な反撃を行なわざるを得なかったと説明した。
 停戦の検討に当たり、タイは以下の3つの明確な条件を設定した。第1に、公式かつ誠意ある停戦宣言が必要。カンボジア側は、12月22日、同日22時から無条件で停戦する意向をアセアン特別外相会合で表明していた。しかしタイとしては、停戦は双方の真摯な意思に基づくものでなければならないと判断し、今回のGBC会合の開催と、タイ・カンボジア間の二国間問題解決の重要な原則となる共同声明の作成を求めた。
 第2に、停戦は実際に実行され、かつ継続されなければならない。このため両国は、重要な措置として、27日12時から停戦を実施すること、両軍が現行水準の兵力を維持し、いかなる部隊の移動や増派も行なわず、攻撃や再挑発を行わないことで合意した。さらに、停戦が真に実行され、継続していることを確認するため、72時間の監視期間を設ける。情勢が沈静化し、住民が安全に自宅へ戻れる状況となった後、国際的な原則に従い、敵対行為の終結後に釈放するとの基準に基づき、カンボジア兵18人を釈放する。
 軍事作戦の成果として、国軍は、国民生活に影響を及ぼす重要な場所を計画どおり掌握することができた。ナッタポン大将は、今回の作戦で犠牲となった多くの兵士の血と命は決して無駄にしてはならないとした一方で、経済、国際的イメージ、国際社会における正当性といった戦略レベルの他の要素も考慮する必要があると述べた。指揮官として常に強く意識しているのは、国の主権を守るために犠牲を払う兵士の命と血だとし、元軍人として、兵士一人ひとりが祖国防衛を最高の使命であり名誉と考えていることをよく理解していると語った。
 実際の行動と監視の仕組みとして、アセアンの枠組みに基づく地域安全保障のためのアセアン監視団(AOT)と、両国の国境連絡調整タスクフォースを活用する。
 政策レベルでは、必要に応じて、両国の国防相・軍最高司令官間のホットラインを通じて直接連絡を取り合う。必要が生じた場合には、双方の高官代表が現地に赴き、共同で問題解決に当たる。また、両国の広報・メディアチームが緊密に連携し、偽情報への対処と正確な情報提供を行なうことも定めた。両国で拡散してきた虚偽情報、フェイクニュース、挑発的報道が、あらゆるレベルでの問題解決を困難にしてきた現実を認めたうえでの対応だ。
 第3に、地雷問題の解決に向けた誠実な態度。両国は、緊張緩和の方針に合意し、人道的地雷除去に関する合同作業部会を通じて明確な実施メカニズムを定めた。地雷除去を完了し、地域の安全を確保したうえで、次の段階として国境の測量と境界標設置を行なうことを確認した。
 この3条件に加え、この日の合意は、オタワ条約の遵守、越境犯罪、サイバー犯罪、人身売買の防止・取締りといった、タイ・カンボジア間の二国間合意の内容を引き続き維持し、継続的に実施していくことを確認している。
 ナッタポン国防相は、タイ国民の怒り、痛み、そして祖国を思う気持ちを十分理解していると述べ、政府はこれらの声を決して軽視せず、過去の犠牲から得た教訓を忘れていないと強調した。勇敢さと忍耐、献身をもって任務を遂行したすべての兵士、負傷者・戦死者の家族に最大限の敬意を表すると述べた。これらの犠牲は単なる報告書上の数字ではなく、政府が直接責任をもって、権利と福利厚生、補償、負傷者とその家族への長期的な支援、戦後の部隊ケアを真剣かつ迅速に進めていくべき課題だと指摘した。
 今回の停戦は、外交の場で平和的手段による問題解決へと立ち戻る機会を開くものと強調した。政府と国軍は情勢を綿密に監視し、事実に基づいてすべての判断を下し、国の主権と尊厳、国民の安全、日常生活の維持を最優先に行動していくと述べた。
 タイ・カンボジア国境情勢共同広報センター所長のプラパート・ソンジャイディー空軍中将は、共同声明には挑発行為を抑制するメカニズムが盛り込まれていると述べた。共同広報センターは、在外公館や駐在武官を通じてカンボジア側と緊密に連携し、対立を拡大させるおそれのある事案が生じた場合には、協議と情報交換を行なう方針だと説明した。72時間経過後に何らかの事態が発生した場合には協議する必要があると述べた。共同声明に沿って適切に履行された場合、タイ側はカンボジア兵18人を送還する。ただし、その後に新たな事態が発生した場合には、タイが自国を防衛することは正当な権利だと強調した。
 さらに、国際社会に向けては、タイが紛争を開始した側でも先制攻撃を行なった側でもないことを伝えたいとし、それを裏付ける証拠があると述べた。タイは対立の拡大を望まず、誠意をもって対応している姿勢を国際社会に示す用意があるとした。
 カンボジアは信用できないとして、共同声明署名に反対する国民の声があることを念頭に、プラパート中将は、国軍を信頼してほしいと呼びかけた。国際社会の舞台における正当性を確保するためには、こうしたプロセスが不可欠で、相手がルールを守らない場合であっても、タイは規範を尊重しなければならないと訴えた。
 「国際社会からの信頼を築くことができれば、タイは感情論や挑発で戦っているのではなく、事実で向き合っている国だと示せる。時間はかかり、国民が不満を感じることもあるだろうが、外交がどのように進もうとも、国軍は100%の態勢で備えている。我々は、すでに年末年始の休暇はないと伝えており、常時スタンバイしている」と語った。
 避難住民の帰還については、現地部隊が安全評価を行ない、脅威やリスクがないと判断された地域から帰還できるようにするが、今少し待ってほしいと述べた。すでに一部の住民は帰還を始めており、国軍は引き続き地域の警護と防衛に当たると強調した。

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