2024年9月20日(金)号

米国の利下げでバーツ上昇=タイ中銀の金融政策に圧力

 米連邦公開市場委員会(FOMC)が10月19日(タイ時間)に 政策金利を0.5%幅で引き下げたことを受け、タイ中央銀行に追随を求める声が高まっている。中銀の金融政策委員会(MPC)の次回会合は10月16日に予定されており、難しい判断を迫られる。
 米連邦準備制度理事会(FRB)は声明で、インフレ率が2%の水準に向かうとの確信を強める一方、雇用の目標達成にはリスクがあると、大幅利下げの理由を説明した。同時に示したドットプロットからは今年残り2回の会合で少なくとも0.5%の追加利下げを多くの委員が支持していることが分かる。
 米国の大幅利下げ決定は多くの国の金融政策に圧力をかけている。直近にはインドネシア中銀が0.25%幅での利下げを決定したほか、香港金融管理局は19日に0.5%幅で政策金利を引き下げた。
 8月のMPC会合、その後のセータプット・スティワートナルプット総裁や中銀幹部の発言から総合的に判断すると、タイ中銀は利下げを急ぐ考えを持っていないもよう。第2四半期(4~6月)の経済成長率は中銀の予測を上回り、すでに景気は底入れしていて、今年第3、第4四半期には上向く見通しにある。特に第4四半期はデジタルマネー給付を含む政府の経済刺激策により、経済成長率は4%台に上昇する可能性もある。経済を刺激するために金利を引き下げる必要性は低い。
 インフレ率は低い水準にとどまっているものの、経済刺激策により上昇するリスクがある。現在の政策金利は年2.5%の水準で、米国の金利を下回るほか、アジア域内で比較しても低いため、米国や域内諸国に歩調を合わせて利下げを急ぐ必要もない。
 こうした状況からエコノミストの多くは、中銀が10月会合で金利を据え置くと見ている。この見方に従えば、中銀はFRBの次回会合の下げ幅を見てから、12月のMPC会合で利下げを開始するかどうかを判断することになる。ペートンターン政府は金融機関再建開発基金(FIDF)損失に対する商業銀行の減債基金拠出金について、預金残高の0.46%から0.23%に引き下げたコロナ流行期の特例措置を復活させ、銀行に貸出増や不良債権処理を急がせる構想を持っている。この政策が実行される場合には12月利下げの必要性もなくなる。
 一方でバーツ高への対応から利下げは不可避との予想もある。19日の外為市場でバーツは反発し、中銀参照レートで1ドル=33.325バーツをつけた。年初時点と比べると3.1%の上昇率で、マレーシア・リンギットの8.7%に次いでアジアで2番目に高い上昇率になっている。アセアン域内国通貨ではシンガポール・ドルが2.2%、インドネシア・ルピアが1.0%の上昇率にとどまっている。通貨ディーラーの多くは米国の政治情勢が不透明な中、バーツの強基調は続き、金相場とも連動しながら1ドル=32バーツ台まで上昇する可能性があると見積もっている。
 タイ工業連盟(FTI)のクリアンクライ・ティアンヌクン会長は、米国の大幅利下げがバーツの上昇をもたらすと指摘。輸出競争力を維持するためにも過度なバーツ上昇を阻止する必要があるとの認識を示した。同会長は欧州中央銀行(ECB)がすでに利下げを開始していることに加え、米国が利下げ開始の最初から0.5%幅としたことを「より強い薬を使った」と表現、次回会合でさらに0.5%幅の引き下げも予想されるとした。米国が利下げを急げばバーツの対ドルレートの上昇は顕著になる。物品輸出だけでなく、観光業にも影響が及ぶため、中銀は政策金利を引き下げるべきだと指摘した。
 タイ商業会議所(TCC)のサナン・アンウボンクン会頭も、バーツが強くなり過ぎないよう、MPCは金利を適切な水準まで引き下げるべきだとコメントした。

「オーカジュ」が株式上場へ=ORは20%の保有率維持

 オーガニック・レストラン「オーカジュ」をチェーン展開するプルークパック・プロラックメー社が10月4日にタイ証券取引所(SET)に上場する。上場に先立つIPOでは発行済み株式の26.1%に当たる1億5900万株を1株6.70バーツで募集する。公募価格での株価収益率は24.13倍。


 同社にはPTTオイル&リテール・ビジネス社(OR)が子会社を通じて20%出資している。IPO後の保有率は希薄化するが、旧株を共同創設者から買い取ることで20%の比率を維持する方針。OR側は当初30%の保有を求めていたが、交渉の結果、20%とすることで合意した。
 プルークパック社のチュラコン・エカチャイパタナクン創立者兼CEO[=写真左から3人目]によれば、IPOで調達する資金10億2390万バーツは主に事業拡張に使う。店舗網の拡張に7億5300万~7億5800万バーツ、バンコクでのセントラル・キッチンの新設に1億9000万~2億3000万バーツ、機械設備に3000万~5000万バーツを投じ、余った資金は長期借入金の返済に充てる。
 「オーカジュ」の店舗は現在33か所。28年までに67店に増やす計画。既存店売上は現在1店あたり1500万バーツで、平均で年率9%の伸びを示している。「オーカジュ・ラップ&ロール」、「オー!ジュース」も店舗を増やしていく。28年までに2ブランド合計で90店に増やす。ラップ&ロールは現在1店舗しかないが20店に、オー!ジュースは6店から70店に増やす計画。1店あたりの出店費用は150万バーツを想定している。

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