2024年10月1日(火)号

花王とCPグループが協業=ハウスブランド商品を供給

 花王とチャルーン・ポーカパン(CP)グループは9月30日、ハウスブランド商品の提供を柱とする協業で基本合意書を取り交わした。花王の長谷部佳宏社長とCPエクストラ社のタニット・ヂアラワノンCEOが署名した。CPグループがチェーン展開する「7イレブン」や「ロータス」に花王が環境に配慮した商品を提供するほか、ケミカル事業でサステナブルな視点での協業の取り組みを進める。

花王の長谷部佳宏社長とCPエクストラ社のタニット・ヂアラワノンCEO


 花王は「タイ花王の設立60周年という節目に、タイの人々の暮らしや社会をさらに豊かにする取り組みを推進する」と発表した。ESG分野における提携を始め、両社で相乗効果を高める。サステナブルな未来に向けて提携を深めるとしている。
 具体的にはCPグループのハウスブランド商品を共同開発する。環境に配慮して開発された花王グループの商品群の中から、特定の商品をCPグループに独占提供する。花王グループの革新的な商品開発力とCPグループの強い流通網による新たな価値提案を行なうとしている。またケミカル事業において、双方のビジネスを強化する連携の機会を追求するほか、「両社の専門性を活かし、環境問題や社会課題に対処するための取り組みを共同で進める」とした。
 花王は1964年にタイでの事業を開始し、1967年にタイで初めての粉シャンプー「フェザーシャンプー」を発売した。1972年にはケミカル事業を開始。現在は「アタック」や「ビオレ」、「メリーズ」など、11ブランドの日用品を製造販売している。また東南アジアでデング熱の脅威が深刻なことから、花王の独自技術で化学合成の虫よけ成分を使わない蚊の忌避剤を開発し、世界で最初にタイで発売した。
 FMCGと呼ばれる日用消費財のうち洗剤やシャンプー/リンスなどの製品は、ユニリーバ、プロクター&ギャンブルなど欧米資本が圧倒的に強い。市場には花王、ライオンの日本勢のほか、ベルリ・ジュッカー系列のタイ・ブランドなどがひしめく。
 CPグループを代表して花王との協業を発表したCPエクストラ社のタニットCEOは「グループにとって大きなチャンス。花王との協業を通じ、環境への影響を軽減し、廃棄物を減らす革新的な商品を7イレブン、ロータス、マクロなどの小売・卸売店舗網を通じて消費者に届ける」と語った。洗剤やスキンケア、ヘアケア製品をハウスブランドで取り扱う。CPグループの店舗で独占販売する商品向けのシェルフ・レディ・パッケージ(SRP)やパレットの開発も進める計画だ。
 花王インダストリアル(タイランド)の清水裕二社長によれば、タイは花王にとって重要な事業拠点で、製造にとどまらず研究開発拠点も設けている。花王がパートナーと組んで環境に優しいハウスブランド商品を生産するのはこれが初めて。最初の国として、60年にわたって事業を展開してきたタイを選んだ。

バーツ高抑制で=タイ中銀がドル買い介入

 タイ中央銀行のチャヤワディ・チャイアナン企業向け広報(CR)担当総裁補は9月30日の月例経済金融報告会見で、過度なバーツ高を抑制するために中銀が市場介入したことを明らかにした。外貨準備高の増加の一部は中銀によるドル買いバーツ売り介入によると説明した。
 バーツのドルに対する上昇はアジア域内の主要通貨と連動したもので、世界的なドル安の裏返し。ただしバーツの上昇率は域内の多くの通貨を上回っているため、中銀が介入し、バーツの変動が域内通貨と同程度の水準に収まるようにしたという。 中銀は経済全体への悪影響を防ぐため、バーツの動きを注意深く監視していると述べた。
 9月30日のバーツ相場は中銀参照レートで1ドル=32.259バーツとなり、前週末の32.435バーツから上昇している。
 チャヤワディ総裁補はバーツ高で輸出業者の収入が減ることから物品輸出に影響が及んでいると認める一方、サービス輸出(観光)については影響を及ぼす可能性は低いと見ている。中国、マレーシア、日本なども自国通貨が対ドルで上昇しているため。
 バーツは対ドルで急騰しているが、チャヤワディ総裁はマレーシア・リンギットの上昇率のほうが大きく、バーツの値上がりが最高でないことを強調した。最近のバーツ高にはドル安に加えてタイ国内政治の安定、経済刺激策の発表、金相場の上昇、株式市場の地合の回復という要因もあると説明した。
 経済概況では8月に外国人観光客数が季節調整済み前月比で6.7%減少したものの日本やインドなど前月比で増加した市場もある。観光客1人あたりの支出が増えた結果、観光収入は同0.1%減にとどまった。
 民間投資は主に設備投資が減少し、季節調整済み前月比で3.3%減となった。建設投資は建材販売数量の増加などから小幅拡大した。
 金地金を除く物品輸出は季節調整済み前月比で3.6%増加した。主に農産物/アグロインダストリーの輸出が伸びている。民間消費は同0.5%増。非耐久財の消費が拡大した。

グーグルがデータセンター=29年までに10億㌦投資

 グーグルはタイでのデータセンターの建設などで2029年までに10億㌦(約360億バーツ)を投資し、1万4000人以上の雇用を創出する計画を発表した。グーグルの親会社であるアルファベットのルース・ポラット最高投資責任者が9月30日、首相官邸にペートンターン首相を表敬訪問し、投資計画を伝えた。首相は午後6時前にルース氏一行のためのレセプションを主催し、ポラット氏が投資計画を正式に発表した。
 グーグルは昨年11月、タイのデジタル競争力の強化に向け、クラウドに焦点を当ててデジタル・トランスフォーメーションを加速させるための協力覚書をデジタル経済社会省と取り交わしている。
 ペートンターン首相はグーグルがタイのポテンシャルを信頼し、データセンターの開設を決定したことへの謝意を伝えた。デジタル経済の強化は変革を推進する上での重要な目標の一つで、生産性が向上し、イノベーションにより不平等が軽減され、すべての人により多くの機会がもたらされると述べた。政府がクリーン・エネルギー開発の取り組みを強化していくことも伝え、デジタルのエコシステムの開発を促進するための直接電力購入契約(ダイレクトPPA)の導入やクリーン・エネルギーへのアクセスの向上を約束した。ポラット氏は今回のタイ訪問は、タイ政府との協力の進展状況について話し合う機会になると述べた。
 グーグルがタイに設けるデータセンターは独立したリージョンになる。政府機関、大企業やスタートアップ向けに高効率で低遅延のクラウド・サービスを提供する。
 グーグルはこれより前、今年6月にガルフ・エナジー・デベロップメント社(GULF)の子会社のガルフ・エッジとソブリン・クラウド・サービスで提携すると発表している。グーグル・クラウドとガルフが提携し、AIに対応するソブリン・クラウドを立ち上げるとしている。

その他のニュース

[経済ニュース]

タイ中銀の月例経済金融報告=9月30日の発表より

消費者は出費に神経質=ニールセンIQ調べ

エナジー・アブソルート=手形発行で運転資金確保

50歳以上のサラリーマン=BAACが就農資金融資

[社会ニュース]
国民投票法改正法案=上院が30日に修正可決

金販売詐欺の夫妻を逮捕

人身売買被害者保護センター=ドンムアン区に開設

社会保険加盟私立病院=減少傾向に警鐘

フリーランス向け=社会福祉制度を検討

市販のダイエット薬=また「シブトラミン」検出

[論調]
バーツの急騰と金融政策

[データ]
タイ中央銀行発表(9月30日)の主要経済指標

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