2024年11月15日(金)号

スワンナプーム=世界のトップ20空港に

 タイ空港社(AOT)はスワンナプーム空港を向こう5年以内に世界の空港ランキングでトップ20入りさせる目標を定めた。第3期拡張工事に1700億バーツを投入して新ターミナルなどを建設、旅客処理能力を年間1億5000万人に引き上げる。


 東南アジアの中心に位置するタイは地域航空ハブになるポテンシャルがある。運輸省とAOTの代表がこのほどシンガポールのチャンギ国際空港を視察し、同空港の運営会社チャンギ・エアポート・グループとの間で技術交流の推進で合意した。空港の運営能力の改善に着手する。チャヤタム・プロムソーン運輸省次官[=写真左から1人目]は目標達成に向けて、旅客の待ち時間の短縮、旅客処理能力・航空機発着処理能力の向上、航空機補修設備の拡充などを課題に掲げた。
 世界の航空産業は新型コロナ危機から回復し、世界90か国以上の空港で旅客数はコロナ前水準に戻している。AOTのキラティ・キットマナワット社長[=写真左から4人目]はサービスの質に焦点を当てることが重要になると述べた。ハブ空港の性質上、トランジットのための乗り継ぎ便を増やすことが課題。現在、スワンナプーム空港の乗り継ぎ便は全体の4%、来年には5%に増えると予想されているが、チャンギ空港の40%と比べて低い。ハブ空港を目指すには少なくとも20%に高める必要がある。AOTは25社を超える航空会社が加盟するスターアライアンスとトランジット便の追加について協議する考えだ。
 AOTはスワンナプーム空港の新たな開発マスタープランを策定中。床面積40万平米、搭乗口周辺の旅客機駐機スペース60万平米、20万平米の商業スペースと1万台収容可能な15万平米の駐車場スペースで構成される南側ターミナルの建設が最大の目玉になる。
 またチャンギ国際空港の「ジュウェル・チャンギ・エアポート」型の商業施設の開発も想定し、旅客以外の一般市民もアクセス可能な施設にする。旅客を見送ったり出迎えたりすることも可能で、チェックインや搭乗を待つ間に見送りに来た家族・知人らと過ごすスペースとしても活用できる。同社長はこのスペースには免税店はなく、免税店キングパワーとの契約に抵触することはないという。プランではこのほか第4滑走路の建設も盛り込んでおり、総額で1700億バーツを投じる予定。
 第3滑走路はすでに供用を開始しており、発着能力は1時間あたり68便から94便に増強されている。第4滑走ができれば、1時間あたり最高で120便に対応できるようになる。
 第3期工事完成後は旅客処理能力が年間7000万人増える。これに先立つ第2期工事計画案は現在、閣議提出待ちの状態で、早ければ25年に着工予定。8万1000平米の東側ターミナルを建設することで年間8000万人の旅客処理能力を確保する。第2、3期工事が完成すれば、空港の旅客処理能力は1億5000万人に達する。
 新マスタープランではドンムアン空港も年間5000万人規模に拡張する計画で、両空港合わせて2億人規模の処理能力を確保する。
 空港内の設備改善も進めている。テクノロジーとイノベーションの導入で、利便性と迅速性を備えた旅客サービスを提供する。セルフチェックイン機は250台に増強された。預け荷物自動受け取り機は40台配備されている。現在80か所ある自動出入国審査ゲートも120か所に増やす予定で、将来的には全ての旅客が自動でチェックインできるようにしていく。待ち時間を短縮し、ピーク時の混雑を緩和する。顔認識技術を使った自動生体認証システムも稼働を開始した。このほか空港内休憩スペース、子供向け遊戯施設の拡充やコ・ワーキング・スペースの新設も進める。
 持続可能性も重視し、環境に優しいグリーン空港を目指す。20年間のプロジェクト期間にわたってクリーン・エネルギーを使用して37.81メガ㍗の電力を生産する。空港内の車両すべてをEVにし、空港に乗り入れる電動バス用の充電スタンドも設ける。航空機には持続可能な航空燃料(SAF)を供給し、東南アジアにおけるSAFの生産と流通の中心地を目指す。

サテライト1(SAT1)
「世界で最も美しいターミナル」

 スワンナプーム空港第1サテライト・ターミナル(SAT1)が今年のベルサイユ賞で「世界で最も美しい空港ターミナル6選」の一つに選出された。スリヤ・ジュンルンルアンキット副首相兼運輸相が11月14日に明らかにした。パリの国連教育科学文化機関(ユネスコ)本部で毎年表彰式が催される世界的な建築賞。2015年以降、スポーツ競技場や駅、大学のキャンパス、空港、百貨店、博物館、ホテル、レストランなどの分野の世界で最も美しい建築物を表彰している。12月2日に表彰式が開かれる。タイの空港ターミナルが表彰されるのは初めて。
 スリヤ大臣は、SAT1ターミナルが設計の美しさに加え、各所にタイの文化的特徴を醸し出す彫刻品や彫塑、絵画などの芸術作品を配備したことが評価されたと語っている。3階に展示されている国獣である象の像、仏教における護法善神の一尊である緊那羅(きんなら、タイ語で男神ギンノーン、女神ギンナリー)や伝説上の架空の動物たちの像、伝統仮面劇「コーン」で使用される仮面類などがある。
 スワンナプーム空港のサテライト1以外で選出された残り5空港のターミナルは、米国のジェネラル・エドワード・ローレンス・ローガン国際空港Eターミナル、シンガポールのチャンギ国際空港第2ターミナル、UAEのザイード国際空港、メキシコのフェリペ・アンヘレス国際空港、米国のカンザスシティ国際空港。

1万バーツ現金給付第2弾=高齢者向けに年末実施

 政府は11月19日に開く経済対策委員会(委員長:ペートンターン首相)の会合で、1万バーツ現金給付プログラム第2弾の実施を決定する。60歳以上の高齢者が対象で、新年を迎える前に給付する。これより前に給付を受けた脆弱な層以外の高齢者が対象であるため、ピチャイ・チュンハワチラ副首相兼財務相は給付対象者はそう多くはなく、数百万人になると述べている。

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