商銀の貸出残高が減少=不良債権比率は2.97%に上昇
タイ中央銀行の11月26日の発表によれば、第3四半期に商業銀行の貸出は前年同期比で2.0%減少した。商銀の貸出の61%を占めている法人向け融資が2.6%減(公的部門を除くと1.8%減)、貸出の39%を占める消費者向け貸付が1.0%減となった。中銀は、商銀が融資の早期回収を図る「貸し剥がし」によるものではなく、公的部門と大企業による債務の返済が高水準にあることが理由だとしている。
サービス業、不動産業、商業の大企業向けの新規融資や、個人ローンや住宅ローンなどの消費者向け貸付は鈍化しているが、伸びているとした。石化、エレクトロニクス、自動車など競争力に問題を抱えている業種で企業向けの融資は収縮している。法人向け融資は与信額5億バーツ超の大企業向けが第2四半期の2.0%増から1.1%減へと収縮に転じたほか、与信額5億バーツ以下では5.5%減となり、第2四半期の5.2%減から収縮幅が拡大している。
消費者向け貸付では、全体の45%を占める住宅ローンの伸びが0.4%増(第2四半期は0.8%増)、個人ローンが2.7%増(第2四半期は5.8%増)となり、伸び率が鈍化した。貸付全体の21%を占めるハイヤーパーチェスローンは7.6%減、7%を占めるクレジットカードローンは2.4%減となり、第2四半期のそれぞれ4.9%減、0.2%減から収縮幅が拡大した。
第3四半期に不良債権(NPL/ステージ3)の残高は5534億バーツとなり、貸出残高に対する比率(NPL比率)は2.97%で、第2四半期の2.84%から上昇した。比率計算の分母となる貸出残高の減少がNPL比率上昇の一因だが、不良債権は企業向け融資と消費者向け貸付ともに増えている。ただし商銀が債権の質を管理できており、債務者への援助も継続しているとした。
法人向け融資のNPL比率は2.84%、消費者向け貸付の同比率は3.24%で、第2四半期の2.70%、3.13%から上昇した。法人向け融資では与信額5億バーツ超の大企業向けのNPL比率が前の四半期の1.10%から1.18%に上昇し、与信額5億バーツ以下では6.85%から7.13%に上昇した。消費者向け貸付のNPL比率は、住宅ローンが3.71%から3.82%に、カードローンが3.53%から3.65%に、個人ローンが2.77%から2.89%に、ハイヤーパーチェスローンが2.29%から2.33%に上昇した。
信用リスクが大幅に上昇した債権(SICR/ステージ2)の貸出残高に占める比率は6.86%で、前の四半期から上昇した。契約条件に従って債務を返済しているものの債権の質は低下していると商銀が判断した法人向け融資と住宅ローンが増えた。法人向け融資の同比率は第2四半期の5.98%から6.39%に、消費者向け貸付の同比率は7.60%から7.81%に上昇した。
第3四半期の商銀の業績は前年同期比で上向いた。主に金融商品の評価益の増加によるもので、純金利収入は減少している。前四半期比で純利益は減少した。引当費用は減ったが、季節要因から配当収入が減少した。
第3四半期の引当前営業利益は1340億バーツ、前年同期比5.2%増となったが、前四半期比では4.3%減。純利益は710億バーツで、前年同期比9.2%減、前四半期比では6.9%減だった。引当金は480億バーツで、前四半期の510億バーツから減少した。商銀の純金利マージン(NIM)は3.04%で前の四半期から変わらず。ROA(総資産利益率)は前四半期の1.26%から1.19%に、ROE(自己資本利益率)は9.45%から8.72%に低下した。
中銀によれば、商業銀行システムは第3四半期も健全で、安定性を保っている。自己資本比率(BISレシオ)は20.5%で、前の四半期の19.9%から上昇した。流動性カバレッジ・レシオ(LCR)は第2四半期の194.9%から200.2%に上昇した。NPLカバレッジ・レシオは170.3%(第2四半期は172.4%)。
中銀は、所得が充分には回復しておらず、多額の債務負担を抱えている中小企業と家計、構造的問題に直面し競争力が低下している業種の債務返済能力を追跡する必要があると指摘している。不良債権は増加傾向が続くが、制御可能な水準にとどまり、急激な増加(NPLクリフ)は生じないとした。家計債務残高のGDP比は第2四半期に89.6%となり、前の四半期から低下した。所得に対する債務の比率を引き下げるプロセス(debt deleveraging)に一致して家計向け貸付の伸びが鈍化した。一方、企業部門の負債のGDP比は貸出と債券残高の減少から低下した。特に社債発行による資金調達が、ハイイールド債を中心に減少した。企業の利益確保能力は総じて良好な水準を保っているとした。
クルンシー・コンシューマー=今年のカード利用額8%増
アユタヤ銀行(クルンシー)のクレジットカード事業部門のクルンシー・コンシューマーは、今年の顧客のカード利用額が前年比8%増の3930億バーツに達すると予想している。新規発行カード件数は10%増の61万7000件、与信残高は2%増の1510億バーツ、新規与信額は9%増の1000億バーツに達する見通し。
家計債務の膨張を懸念するタイ中央銀行は今年1月からクレジットカード・ローンの最低返済率をコロナ特例だった5%から8%に引き上げた。最高責任者のアリット・ルチラワット氏[=写真上]はクレジットカード利用環境が厳しさを増す中、AIの活用などでサービスの改善を進めたことが事業の成長につながったと分析した。
現在取り扱うカード商品は「クルンシー・カード」、「クルンシー・ファースト・チョイス」のほか量販店との提携で発行している「ロータス・カード」、「セントラル・ザ・ワン」があり、いずれも伸びている。「セントラル・ザ・ワン」はこのほどセントラル・グループと2032年まで8年間の提携契約の更新で合意したばかり。アリットCEOはどのカードもそれぞれ強みがあり、顧客の異なるニーズに応えていくサービスが肝要だという。ブランドイメージやカード特典の刷新を常に心掛けている。
同社は顧客対応にAIを積極活用しており、ソーシャル・メディアを通じたオンライン対応、電話対応などあらゆるチャネルでAIが顧客の相談や問い合わせに応じている。モバイルアプリ「UCHOOSE」の改善も重視し、スマートフォンを通じたオンライン・サービスの利用度が飛躍的に高まっている現代の消費者のライフスタイルへの対応力の強化に努めている。カード顧客の8割がアプリをダウンロードしているという。
今後10年について、アリット氏は「物理的なカードは時代の流れでなくなってしまうかもしれないが、ペイメント・ソリューションの需要は今後も伸び続ける」と語っている。
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