2024年11月28日(木)号

サステナビリティ・リンク国債=募集額上回り300億B完売

 財務省公的債務管理事務局は11月27日、サステナビリティ・リンク債(SLB)の発行に成功したと発表した。パチャラ・アナンタシン事務局長によれば、募集予定額の200億バーツに対し、応募額(ブック・ビルド)は2.76倍となる552億8500万バーツを数えた。これを受け、政府は起債額を300億バーツに引き上げることを決定した。
 今回発行したSLBは期間15年で表面利率は年2.7%。気候変動・環境局、物品税局、陸運局が協力し、アジア開発銀行(ADB)、グローバル・グリーン・グロース研究所(GGGI)、国連開発計画(UNDP)が技術支援した。バンコク銀行、クルンタイ銀行、アユタヤ銀行、スタンダード・チャータード銀行がアンダーライターを務めた。27日の会見にはこれら関係者の代表も出席し、成功を祝った[=写真]。


 SLBの国債発行はチリ、ウルグアイに次いで世界で3番目。アジアではタイ政府が初めて。生命保険会社、投資信託、金融機関などの機関投資家から関心を集めた。
 SLBは持続可能な環境および社会開発をサポートするために設計された金融商品の一つ。債券の発行体は重要業績評価指標 (KPI) と持続可能性のパフォーマンス目標(SPT)を遵守しなければならない。同債のKPIは温室効果ガス排出量の削減とゼロエミッション車(乗用車とピックアップ・トラック)の新規登録台数の2つ。2030年までに温室効果ガス排出量を二酸化炭素換算で38万8000㌧削減する目標と、2030年までにゼロエミッション車の新規登録台数を少なくとも年間44万台に増やすという2つのパフォーマンス指標(SPTs)にリンクする。これら目標を達成できない場合、同債の金利は指標ごとに2.5ベーシスポイント上昇するペナルティが課される。2つの目標が達成されない場合、金利は合計で5ベーシスポイント上昇する。例えば利率が2.7%だった場合、2つの目標をいずれも達成できない場合には金利が2.75%に上昇する。逆に目標が達成されれば、金利は指標ごとに2.5ベーシスポイント引き下げられる。
 KPIとSPTが達成されているかどうかは独立した第三者監査機関が確認する仕組みで、DNV(タイランド)社が指名されている。国連の持続可能な開発目標 (SDGs) に準拠し、国際資本市場協会 (ICMA) とアセアン資本市場フォーラム (ACMF) の持続可能性債の発行基準を満たしている。投資家の信頼を保つため、公的債務管理事務局がパフォーマンスを報告し、SPTの進捗状況を追跡する。
 パチャラ事務局長は、SLBが官民の関連する取り組みを奨励し、タイを持続可能な経済と社会に向かわせるとしたコミットメントを国際社会に発信する役割を担うと述べている。国債は民間企業部門の発行する債券のベンチマークとして機能するため、SLB国債の発行が流通市場における流動性を改善し、資本市場の持続可能な発展を支援するとしている。

10月の工業生産は1.63%減=25年は1.5~2.5%増予測

 工業省工業経済事務局(OIE)が11月27日に発表した10月の工業生産指数は93.41ポイントで、前年同月比0.91%減となった。1~10月の指数は1.63%減。通年の工業生産指数は1.6%減と予測され、工業部門のGDPは1.0%減が見込まれている。パーサコン・チャイラット事務局長は25年の指数と総生産は1.5~2.5%増に上向くと予想した。
 10月平均の設備稼働率は57.75%で、1~10月平均は58.72%となった。国内の購買力の欠如、高水準の家計債務と不良債権により金融機関は融資に慎重になっている。また海外からの安価な商品の流入で消費者が輸入品を選んで購入していることや米国の大統領選挙の行方に対する懸念が工業生産を下押しした。脆弱な層への現金給付、工業製品輸出の回復、観光業の成長持続などは明るい材料。
 11月も工業経済には引き続き警戒が必要。工業部門の信頼感指数は小幅改善したが、商用車の登録台数や住宅建設許可面積の減少が気がかり。対外要因でも欧州の生産の低迷、日本の減速、米国の新政権の経済政策と貿易政策に対する懸念がある。
 10月にはその他汎用機械の生産が28.98%増加した。世界の平均気温の上昇を受けてエアコンの生産が増加した。前年に問題になった認証基準も解決している。
 コンピュータ/同周辺機器は39.18%増。ハード・ディスク・ドライブの引き合いが増加したほか、プリンタは米中貿易戦争に直面した一部中国メーカーがタイに生産拠点を再配置したことで生産が拡大した。
 水産缶詰の生産は39.24%増。国内市場と輸出の拡大を受けてツナ缶、イワシ缶の生産が増えた。年末の需要増に備えた在庫投資や米国や中東での備蓄需要もあった。
 一方で自動車の生産は22.19%減となった。国内市場の収縮を受け、ピックアップ・トラックと小型乗用車の生産が減少した。輸出市場も貿易相手国の需要の減退を受けて減速した。
 パーム油の生産は32.60%減。猛暑の影響で例年よりもパーム椰子の完熟時期が早まり、収穫シーズンの終わりが早まった。政府による統制で輸出も減少した。
 電気回路基板・同部品の生産は13.02%減。世界市場の減速で集積回路とPCBAの生産が落ち込んだ。

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