税制改革でVAT増税へ=法人税、個人所得税は引き下げ
ピチャイ・チュンハワチラ副首相兼財務相[=写真]は12月3日、クルンテープ・トゥラキット紙が主催する「サステナビリティ・フォーラム2025」で「持続可能な経済に向けた金融財政政策」をテーマに講演し、税制改革を急ぐ考えを明らかにした。炭素税の新設に加え、付加価値税(VAT)は最高で15%まで引き上げる考えを示した。
ピチャイ氏は、タイ経済は近隣諸国に比べて低成長状態にあるが、タイへの投資が流入する機会は到来していることを示した。地球温暖化や地政学的対立のため、グローバル・サプライチェーンの再編が始まっており、EV、バッテリー、エレクトロニクスなど持続可能性に関連する産業への投資が増えている。半導体やデータセンターへの投資も増え、1~9月の投資委員会(BOI)への投資申請は7000億バーツを超えた。新たなテクノロジーへの投資を奨励することで構造問題の解決を支援すると述べた。
タイには低金利政策を実施する余地がまだ多く残されているとした。インフレを心配する必要がないためで、今年通年のインフレ率は0.6~0.7%にとどまり、金融政策の誘導目標範囲の下限である1%に満たないことを指摘した。また財務省が25年のインフレ目標を2%に設定すべく、中銀と協議していることを明らかにした。
GDPの65~70%を占める輸出部門を支援するため、バーツ安誘導の重要性を示した。バーツ高は多額の外貨準備高に由来するとし、外貨準備を使ったソブリン・ウェルス・ファンドの組成を検討していると述べた。為替レートを安定させ、バーツ安に向かわせるためには明確な長期的措置が必要だと指摘した。
税制改革で、法人所得税の引き下げに言及した。タイが加盟申請している経済協力開発機構(OECD)の第2の柱に基づく最低法人税率は15%。ピチャイ氏は投資誘致で世界と競争していくためには、20%の法人税率を引き下げなければならないと主張した。高度人材を海外から呼び込むため個人所得税も引き下げる。多くの国で個人所得税は17~18%にとどまっていると指摘した。一方で、諸外国に比べて低い間接税であるVATの税率は引き上げる。
世界の消費税や付加価値税の税率は15~25%であるのに対し、タイの現在の税率は7%。10%の税率を7%に引き下げる時限措置が延長に次ぐ延長で半ば恒久化している。ピチャイ氏は、付加価値税の増税は敏感な問題だが、合理的かつ適切な方法で税率を上げれば、所得者を助けるためのツールとして役立つ可能性があるとしている。
付加価値税は97年経済危機当時のチャワリット政権が国際通貨基金(IMF)の指導の下、10%の税率(地方交付税を含めたもので、法定上限を下回る)が一時期適用されたが、97年終わりに後を継いだチュアン政権が7%に戻し、以来、時限減税措置を延長している。最も新しいところでは今年9月17日の閣議で、25年9月末までの延長を決定した。付加価値税の法定上限税率は10%となっているため、ピチャイ氏が示した15%への引き上げには法改正が必要になる。
税金の問題については政府の税制政策の観点から慎重に検討しなければならず、毎晩このことを考えていると述べ、最初の一歩は国民に理解してもらうことでなければならないと述べた。
炭素税は1㌧200バーツ
クラヤー・タンティテーミット物品税局長は「サステナビリティ・フォーラム2025」で講演し、石油製品に対する炭素税徴収のガイドラインを12月11日の閣議に提出する準備を進めていることを明らかにした。炭素1㌧あたり200バーツを基準とし、根拠法ができるまでは、石油の物品税に組み込む形で物品税局が徴収する。炭素税と物品税を合わせた税の総額は従来から変わらないため、燃油の需要家の税負担は増えないとしている。放出される二酸化炭素の量が異なるため、燃油の種類ごとに税率は異なる。
クラヤー局長は、炭素税を徴収するメカニズムを備えた国は二酸化炭素の排出量を2%削減できる一方、強制的なメカニズムを持たない国は排出量が3%増えるとした世界経済フォーラムの調査を紹介した。石油は多くの部門にとってコスト要因になることを物品税局も理解しているため、燃油から徴収する税金の額は据え置いたまま、炭素税を導入することで消費者の意識を高めたいと説明した。
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