2025年1月9日(木)号

不動産業界7団体=市場活性化を陳情

 不動産業界の7団体がペートンターン首相とタイ中央銀行に対し、不動産市場の活性化策を陳情する計画を立てている。住宅登記手数料、抵当登記手数料の引き下げなどすでに実施済みの措置のほかにも新たな措置の導入を求めるもので、1月中に打診する。中銀による住宅ローン規制(LTVルール)の緩和もしくは撤廃、土地建物税の減税などを盛り込むことにしている。
 国家経済社会開発評議会(NESDC)による2025年の成長率予測は2.3~3.3%。成長の牽引役は政府支出、民間投資、観光業と輸出の回復などだ。ただし現状、成長が確実に見込まれているのは観光産業のみ。不動産業は厳しい状況に変わりなく、家計債務の膨張により家計の購買力は低下し、金融機関による与信審査は厳しい状態が続く見通し。
 7団体はタイ商業会議所不動産取引・設計・建設業者協会、分譲住宅事業者協会、タイ・コンドミニアム協会、タイ不動産協会、住宅建築請負業者協会、不動産取引協会、タイ不動産ブローカー協会。タイ商業会議所不動産取引・設計・建設業者協会のイサラ・ブンヨン会長によれば、昨年末に失効した住宅登記手数料と抵当登記手数料の0.01%への引き下げ措置の1年間延長を求めるほか、土地建物税の50%減税を要請する。現在の税率は不動産価格100万バーツに対し3000バーツで、1500バーツへの引き下げを求める。
 政府住宅銀行(GHB)や政府貯蓄銀行(GSB)を通じた低中所得層向けのソフトローン・プログラムも提案する。販売価格700万バーツ以下の物件を対象にプログラムを組むことで、低中価格住宅の販売を刺激する。さらに内務省と政府土地区画整理中央委員会が監督する住宅用地と商業用地の区画政策の見直しも求める。一戸建て住宅、ツインハウス、タウンハウスの1戸あたりの法定最低面積はそれぞれ200平米、140平米、64平米になっているが、140平米、112平米、56平米に改めることで住宅の価格を引き下げる。
 中銀にはLTVルールの一時的な緩和もしくは廃止を求める。イサラ会長は「2022年にLTVルールを一時廃止したときも大きな問題は起きなかった。銀行の与信審査は厳しく、不合格率が60~70%に達していたからだ」と話している。全ての提案は目新しいものでなく、過去に実施されたことを強調している。
 不動産市場の活性化措置では、これより前に業界側が借地契約期間の法定上限の30年から90年までの延長やコンドミニアムの外国人によるユニット占有率の49%から75%への引き上げを提言したことがあるが、今回は見合わせる。同会長は「すでに提案済みであり、政府の回答を待っている」と述べている。
 タイ・コンドミニアム協会のプラサート・テードゥラヤサーティット会長[=写真]は、不動産市場が依然として厳しいことを指摘する。家計債務が膨張し、銀行の与信審査の不合格率は70%に達している。消費者の信頼感は悪化し、財布のひもは固くなるばかり。昨年の不動産市場は25~30%も縮小し、名義変更高も7~8%減ったと述べている。不動産業の業況改善は他の経済分野への波及効果が大きいだけに政府が本腰を入れて支援してほしいと訴えた。特に登記料、抵当登記手数料の引き下げ措置の延長とLTVルールの緩和は効果が大きいという。「LTVルールは不動産市場の阻害要因で、少なくとも2年は停止すべきだ」と主張している。
 金融機関がさらなる金利引き下げに踏み切ることができる環境も求めた。「政策金利は年2.25%に下がったが、市中金利は0.12%しか下がっておらず、実効性が乏しい」と指摘した。

TMBタナチャート銀=「自動車ローンは底入れ」

 TMBタナチャート銀行(ttb)は今年も引き続き与信審査を厳しくする。景気の先行き不透明感が広がる中で債権の質の低下が懸念されるためで、ターコン・ピヤパン頭取は「貸したくないわけではないが、債務者の返済能力に懸念がある以上、慎重にならざるを得ない」と述べている。返済能力がある顧客には極力貸し出すようにしているほか、不安がある顧客をモニタリング、フォローして不良化させないようにしているという。


 個人向け貸付は今年も伸び悩む見通し。所得の回復が不均等で、回復が早い顧客もいれば時間がかかる顧客もいる。リテールローンは前年同様、自行が得意とする分野の顧客を重視していく方針だ。ターコン氏は「自動車ローン、住宅ローン、定収のある層向け個人ローンは今年、大幅な伸びを望めないが、昨年終わりのモーターエクスポでの予約状況を見る限り、新車需要は回復する兆しがある」と述べている。最近はEVの価格が値下がりしていることが需要を刺激しそうで、定収のある者が自動車ローンを組める可能性は高まりつつある。ターコン氏は「自動車ローンは底入れした」と分析した。ただし現時点では自動車ローンの新規融資額は低水準で、与信残高を大幅に伸ばすほどの底力はまだない。今年の自動車ローンの伸びは業界全体で横這い、または微増にとどまると予測した。
 住宅ローンは厳しい状況が続く。住宅価格が上昇する一方で消費者の購買力は減退している。特に月収3万バーツ以下の層の債務返済能力の低下が響き、住宅ローンを組むことは難しくなっている。住宅ローンは500万バーツ以上の住宅を購入する余裕がある中高所得層に絞った戦略を展開していく。月収4万~5万バーツ以上の層がターゲットになる。住宅のリファイナンスは伸びが見込めることから、リファイナンス需要に対応していく。
 無担保個人ローンは需要が大きいがリスクも伴うため、今年は5~7%程度の伸びに抑制する。
 不良債権について、ターコン頭取は改善に向かうと期待している。政府による「あなたは闘い、私たちは助ける」プログラムが始動することに加え、債務リストラも奏功しそう。「政府による介入プログラムは債権の質のこれ以上の悪化を抑止する」としている。
 少なくとも自動車ローンに関しては底入れし、これ以上の不良債権の増加は防ぐことができるとした。住宅ローンは「いずれ底を打つときが来る」と述べ、希望的な観測にとどめた。ttbは政府の債務者救済プログラムへの参加を顧客に呼びかけていく方針で、プログラムの詳細を知らなかったり、自身には参入資格がないと考えている債務者が少なくないため、広報活動に力を入れる。「3年間利息の支払いを免除されるこのプログラムがもたらす効果は大きい。顧客は3年間に元本を減らすことができる。銀行の利息収入は減るが、リスクや長期的な負担が減る。参加する債務者が多ければ多いほど、銀行が得るメリットも大きくなる」との見解を示した。

その他のニュース
[経済ニュース]
25年のビジネストレンド=タイ商議所大学が予測

グーグル・クラウド=オンライン詐欺の防止に協力

エンタメのRS株が急落=マージンローンで強制売却

24年の株式市場統計=売買代金は12.7%減

タイ信用保証公社=中小企業の債務再構成

民間医療保険=新オプションを導入

タイ荷主評議会=25年の輸出は1~3%増

税制改革はパッケージで実施=負の所得税も研究を継続

[社会ニュース]
PM2.5濃度=70都県で基準値越え

ハルビン氷祭り氷像コンテスト=タイ・チームが躍動!

沿岸部の海水の状態=最悪はチャオプラヤ河口部

スラナリ工科大学=農業残渣原料に人工宝石

プラチュアップキリカン県=ベンガルトラの棲息を確認

[特集]
ピチャイ商業大臣が日本を訪問

[レポート]
民間化石燃料発電事業の行方

[BOI認可事業]
12月9日認可44事業

あわせて読みたい
無料トライアル 【無料トライアルのご案内】 タイ経済パブリッシングは毎日(土日祝を除く)、A4サイズのPDF版ニュースレターを定期購読者様にメール配信しております。 購読料金...
よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

コメント

コメントする

目次