2025年3月4日(火)号

住宅市場に回復の兆し=今年は緩やかな成長へ

 不動産情報センター(REIC)のカモンポップ・ウィーラパラ所長代行によると、昨年第4四半期の全国の住宅市場は回復の兆しが見られた。住宅の引き渡し(所有権移転)件数は9万7413件で、前年同期比1.3%増となり、8四半期ぶりにプラス成長となった。金額ベースでは2755億6300万バーツとなり、前年同期比1.5%減少したが、前四半期と比べて減少率は縮小した。
 同所長代行は、不動産業界を活性化させるための政策の効果によるもので、住宅登記と抵当登記手数料を0.01%に引き下げる措置が、価格上限が、従来の300万バーツから700万バーツに引き上げられたことにより、2024年末の同措置終了を前に駆け込みで物件の引き渡しが生じた。特にコンドミニアム市場は活発で、引き渡し件数は3万3361件(前年同期比13.9%増)、総額は844億8100万バーツ(前年同期比5.6%増)となった。
 一方、2024年を通じた引き渡し件数は34万7799件で、前年比5.2%減少した。コンドミニアムの引き渡し件数は11万6439件で、前年比7.7%増加したが、主に700万バーツ以下の物件に対する政策の効果によるもので、同価格帯のコンドミニアムの引き渡し件数は9.1%増加した。一方、一戸建てやタウンハウスなどの低層住宅は23万1360件となり、前年比10.6%減少した。すべての価格帯で減少が見られた。
 2024年の全国の住宅引き渡しの総額は9806億4800万バーツで、前年比6.3%減少した。コンドミニアムは2970億6000万バーツで、前年比2.5%減少した。主に700万バーツ以上の物件の減少によるもので、700万バーツ以下のコンドミニアムの引き渡し総額は前年比4.9%増加した。低層住宅の引き渡し額は6835億8800万バーツで、前年比7.9%減少した。
 昨年第4四半期の住宅ローンの与信額は1675億3200万バーツで、前年同期比5.6%減少し、前年同期の1774億7300万バーツから縮小した。2024年通年の住宅ローン与信額は5873億4400万バーツで、前年比13.4%減少し、2023年の6783億4700万バーツから大幅に減少した。
◇2025年の住宅市場見通し
 今年の住宅市場は、引き続き回復基調が続くと予測される。全国の住宅の引き渡し件数は約35万3389件で、前年比1.6%増加すると見積もった。そのうちコンドミニアムは11万6618件(前年比0.2%増)、低層住宅は23万6770件(前年同期比2.3%増)となる見込み。
 全国の住宅引き渡し総額は9945億4500万バーツで、前年比1.4%増加すると予測した。コンドミニアムは2983億6300万バーツ(前年比0.4%増)、低層住宅は6961億8100万バーツ(前年比1.8%増)と見込まれる。
 市場の回復の背景には、政府の景気刺激策、さらにはメガプロジェクト関連の資金流入(約2600億バーツ)が景気を押し上げることがある。また、金利の低下が住宅ローンの申請を促進する要因となりそう。2025年の住宅ローン与信額は5936億3400万バーツと予測され、前年比1.1%増が見込まれる。

セーナーが低価格住宅=潜在需要を掘り起こし

 住宅開発のSET上場企業、セーナー・デベロップメント社(SENA)は、販売価格300万バーツ以下の低価格住宅セグメントにおける主導的地位の確立を目指した販売戦略を展開する。


 ケサラー・タンヤラックパーク社長によれば、バンコク都内では月収3万バーツ以下の低所得層が全世帯の54%を占める最大の階層であり、住宅市場での構成比も高い。この層は、家計債務の膨張や高金利、銀行の与信審査の厳格化の影響を最も受けているが、住宅の潜在需要は依然として高く、デベロッパーにとって無視できない要素であるという。「住宅販売の鍵は、市場ニーズに本当に適した住宅を提供することであり、この階層の需要に応えることが不可欠だ」と強調した。住宅取得が困難なこの層に手の届く物件を提供することで、市場をリードする立場を確立できると考えている。
 同社は、低価格住宅セグメントにおいて30年以上の経験を持ち、この階層のニーズを熟知している。「Refined Focus」をキーワードに、低層住宅とコンドミニアムの両分野で潜在需要の掘り起こしを進める。さらに、先端技術を活用した「LivNex」や「RentNex Subscription」といった金融サービスを導入し、多様な住宅取得の選択肢を提供する。「LivNex」は、当初は賃貸し、一定期間後に購入へ移行できるオプション付きの新たな販売形態で、好評を博しているという。これまでにこの形態で賃貸された物件は976戸に上り、売上高は19億バーツに達した。
 現在、同社が手掛けるこのセグメントの住宅物件は1万2600戸で、販売見込総額は306億バーツとされている。ある調査によれば、首都圏における300万バーツ以下の住宅需要は360万人に上る。「市場の裾野は広く、この市場を獲得する意義は極めて大きい」と同社長は語る。2026年には新規事業12件を予定しており、そのうち11件がコンドミニアムで、販売見込総額は130億バーツと見込んでいる。
 同社は、多様な金融ソリューションを提供することで、住宅購入の資金調達手段を増やすだけでなく、購入、賃貸、リースといった選択肢を拡充し、より多くの需要を満たしていく方針だ。例えば、「バーンティーラン」住宅団地は、タウンハウスとツインハウスを組み合わせた住宅プロジェクトで、従来よりやや小規模な設計を採用し、価格帯を200万~500万バーツに設定。ラムイントラ、バンナー、バンブアトーン、ラタナティベートなどの近郊住宅地域を中心に展開する。
 今年の売上目標は155億バーツ、引渡額目標は100億バーツとしている。また、住宅販売以外の事業として、グリーンエネルギー関連事業にも取り組んでおり、EV販売や太陽光発電パネルの施工請負などを展開。同社長は「利益だけでなく、社会への貢献が重要」と述べ、環境保全を通じた生活の質の向上にも積極的に取り組む姿勢を示した。

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