医療保険の加入者一部負担制=3月20日からスタート
民間医療保険の加入者医療費一部負担制(コ・ペイメント)が、3月20日に正式に導入される。コロナ禍以降、医療費は上昇を続けており、医療保険加入者に対する保険会社の給付金負担額も増加している。保険行政当局は、保険事業の適度な成長を維持することを重視し、給付金負担の増加が経営に与える影響を懸念。この負担を抑えるための方策の一つとして、コ・ペイメント制の導入を決定した。
今年2月6日、タイ生命保険協会(TLAA)は、3月20日以降に更新される既存契約および新規契約に新制度を導入することを決定した。当初の見積もりでは、実際に適用されるのは加入者全体の5%程度にとどまる見通しだという。
適用対象となるのは、頭痛、インフルエンザ、下痢、筋肉炎、胃酸過多、胃食道逆流症などの一般的な疾病で、年3回以上給付金申請を行ない、その申請額が通年の支払保険料の2倍以上に達した場合。翌年の契約からコ・ペイメント制が適用されることになる。加入者の負担率は給付金申請額に応じて異なるが、30~50%の自己負担が求められる。ただし、重病や大手術には適用されず、従来どおり給付が行なわれる。
ウィリス・タワーズ・ワトソンの最新調査によると、タイの医療費上昇率は世界でもトップクラスで、昨年の世界平均上昇率が10%だったのに対し、タイは8~15%に達している。この上昇率はインフレ率を大幅に上回り、高齢化の進展、今後予想される新たな感染症の蔓延、大気汚染の悪化、医療技術の進歩、国のヘルスケアシステムが抱える構造的問題などを考慮すると、決して楽観視できる状況ではない。このまま放置すれば、8年間で医療費は倍増する計算だ。
◆コ・ペイメント制のメリットと影響
アリアンツ・アユタヤ保険のトーマス・ウィルソンCEOは、「コ・ペイメント制の最大の目的は、加入者に医療費の節約や効果的な支出管理の意識を啓発すること。皆が協力すれば、医療制度を長期的に持続可能なものにし、個々の保険料負担の軽減にもつながる」と指摘する。長期的な医療制度の持続には、政策担当者や医療業界関係者だけでなく、保険業界と加入者である一般国民の協力も不可欠だという。
イノベストX証券のアナリストによると、短期的には、医療費負担の増大を懸念した一部の加入者が契約更新をためらう可能性があるほか、新規契約の伸び悩みも予想される。しかし、長期的には不要な医療費の削減を促し、国全体の医療費上昇を抑えることで、民間医療保険制度の長期的な安定につながると予測した。
また、軽微な症状で頻繁に病院に通っていた加入者の数が減り、健康管理への意識が高まることも期待される。外来患者の減少が病院経営に与える影響も限定的とされる。また、コ・ペイメント制により保険料水準が低下すれば、これまで高額な保険料がネックとなり加入をためらっていた層の民間医療保険へのアクセスが拡大する可能性が高い。
◆他国の事例
CGSインターナショナル証券(タイランド)のカセーム・プルンラタナマーラー調査部長によると、シンガポールでは加入者が20%を負担するコ・ペイメント制が導入されており、国の医療保険制度にも適用されている。その結果、国民と政府双方の医療費負担軽減に貢献しているという。加入者は、民間医療保険と国の医療保険を併用することも可能で、自己負担額を抑えられる。同国の保険業界の試算では、コ・ペイメント制による医療費削減効果は25%に達している。
マレーシアでは昨年9月1日にコ・ペイメント制が導入された。直前の3年間で医療費が12.6%上昇し、当時の世界平均5.6%を大幅に上回っていたことが背景にある。同国ではコ・ペイメント制はオプションとして提供され、加入者が契約時に選択できる。また、イスラム法に準拠した共済保険制度も存在する。マレーシア中央銀行の統計によると、コ・ペイメント制を適用した契約の保険料は、適用しない契約と比較して19~68%低水準に抑えられているという。
◆導入期の課題と今後の展望
アリアンツ・アユタヤ保険のウィルソンCEOは、移行期には加入者とのコミュニケーションが重要で、同社ではコ・ペイメント制の長期的なメリットについての理解促進に努めているという。また、顧客のニーズに合わせた保険商品の多様化や、医療費負担の方法を柔軟に設計することも求められる。さらに、必要に応じてより多くの医療機関と連携し、保険適用範囲を広げるための提携先を模索することも効果的だと指摘する。
オンライン診療、保養プログラム、予防医療サービスの提供などを通じて、加入者の健康管理への関心を高めることも一つの選択肢になるという。
一方、タイ消費者連盟(TCC)のサーリー・オンソムワン事務局長は、国が医療費の上限額を規定すべきだと主張する。シンガポールでは私立病院の医療費上限が定められており、「タイもこれに倣うべきだ」と指摘している。
いずれにしても、コ・ペイメント制に対する正確な理解が普及していない現状では、導入前に駆け込みで医療保険に加入するケースが増える可能性も指摘されている。
グローバル・グリーン・ケミカル=バイオ・ケミカルに重心シフトへ
グローバル・グリーン・ケミカル社(GGC)は、「Transformation for Future Growth」を旗印とする事業計画を発表した。環境に優しいエネルギーの利用とケミカル製品の開発・販売を軸に、総収入200億バーツの達成と持続可能な成長路線の確立を目指す。
今年は生産力の増強により増収が見込まれる状況で、EBITDA利益率は前年並みの4%を維持できる見通しだ。また、2029年までの5か年中期計画では、15億バーツ以上の投資予算を計上し、持続可能な成長に向けた事業基盤の構築を進める。現在、同社は金融負債ゼロであり、財務状況は健全だ。
クリサダー・プラサートスコー社長は、今年も地政学的対立や貿易戦争などの影響により、国際情勢が不安定な状況が続くと予測し、世界のサプライチェーンに影響が及ぶ可能性を想定している。特に、米トランプ政権の発足、欧州森林破壊防止規則(EUDR)の導入など、欧米先進国の動向に注視する必要がある。また、気候変動の進行にも一層の配慮が求められるという。このため、コスト管理を重視し、既存資源の運用効率向上に注力する方針を示している。
いずれにしても、消費者の環境・健康意識が高まる中、環境に優しい製品の販売機会は拡大する見込みで、同社もこの点を重視していく方針。

こうした状況を踏まえ、従来の事業計画の一部を見直す作業も進めている。
「Transformation for Future Growth」では、強靭さ、成長力、持続可能性の3つを重視し、事業の重心をバイオ・エネルギーから、将来的な需要拡大が見込まれるバイオ・ケミカルへとシフト。同時に、バイオ・ケミカルの生産能力の増強を進める。また、利幅の大きい高付加価値製品の開発にも注力する方針だ。
EVの普及に伴い、バイオ燃料の需要が縮小に向かう見通しであることから、当面はコスト圧縮などによる競争力維持を図るとともに、バイオ・ケミカルへの段階的なシフトを進めていく。
バイオ・ケミカル部門では、既存の生産設備を活用した新製品の開発や新たな市場の開拓を進めている。特に、家庭用品やパーソナルケア製品におけるバイオ・ケミカル製品の需要は将来的に成長が見込まれる。この分野ではGGCは現在、国内に競合他社がなく、競争優位性が高い。昨年から生産ラインの改善や原料調達基盤の整備を進めており、今年はさらなる生産工程の改善と拡大に向けた準備の年と位置付けている。
健康志向や環境志向の高まりを受け、高付加価値製品の開発に着手した。財務改善のため、アセットライト戦略を重視するとともに、市場ニーズに基づいた柔軟性の高い事業対応力の構築を進める。市場分析を重視し、長期的な視野に立った事業戦略を選択していく。
現在、製品群は「食品・食品原材料」「化粧品・パーソナルケア製品」「医薬品」「特殊ケミカル製品」の4種類に分類されているが、これら既存の製品群から高付加価値製品を新たに派生させていく。2030年までに、高付加価値製品を含む新製品のEBITDA構成比を15%以上に引き上げることを目標に掲げている。
昨年は、「ニュートラリスト」ブランドのサプリメントをクリニックや病院向けに卸し始めたほか、「バイオソーベル」ブランドのバイオ溶剤や化粧品・スキンケア製品の新製品開発も進めており、今年の発売を予定している。
これらの新製品の販売が成果として顕在化するまでには3~5年、生産設備への投資の完成には4年を要すると見込んでおり、2029年以降の成長を見据えた戦略の一環と位置付けている。
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