2025年4月3日(木)号

米国がタイ製品に最大36%の関税=政府は損失70億〜80億㌦と試算

 タイ政府は、ドナルド・トランプ米大統領による新たな貿易戦争の影響を緩和するため、米国からの輸入拡大や関税の引き下げを含む包括的な交渉計画の策定を急ぐ。4月2日(米国時間)、トランプ大統領は、すべての貿易相手国に対し「共通の基本税率」として10%の関税を設けると発表。また、米国との貿易黒字が大きい特定の国には、これを上回る関税を課す。中国は最高で54%、タイは36%、ベトナムは46%、EUには20%が課される。米国はタイの輸出の20%を占める最大の輸出先であるため、関税措置の影響は軽視できない。商業省は70億~80億㌦の損失が生じる恐れがあるとしている。
 日本は24%、韓国は25%、インドは26%、カンボジアは49%、台湾は32%の関税が課される。基本関税が現地時間4月5日深夜に発効し、より高率の関税は4月9日午前0時に発効予定。すでにカナダとメキシコには、違法薬物取引や不法移民問題に関連して25%の関税が課されており、これらの関税は引き続き適用される。
 ホワイトハウスで演説したトランプ氏は、各国の関税率を記載した大型のパネルを掲げ、「勤勉な米国民は長年、他国の繁栄を見守るしかなかった。しかし今こそ我々が繁栄する番だ」と語った。「報復関税」とも言える今回の措置は、対象国が米国製品に対して課している関税や非関税障壁を基準に、米国が対等の関税を設定する仕組み。
 今回の発表により、米国の株式市場では主要な株価指数が2%以上下落している。トランプ氏が姿勢を軟化させるのではないかとの期待から株価が上昇していただけに、強硬な結果に失望売り広がった。タイ株式市場は3日、前場を11.95ポイント安で終えた。
 トランプ氏は、各国が米国製品に課している関税と同等の関税を米国側も課す方針を掲げており、世界各国が対象となっている。この動きに対し、インド、韓国、日本、台湾、ベトナムなどアジア諸国は、すでに一部関税の引き下げや米国製品の輸入拡大を進めており、タイもこれに続くかたちで交渉を進める。
 米国は中国製品への関税を2月4日から10%に設定し、3月4日からは20%に引き上げた。これに対し中国も、米国からの石炭、天然ガス、原油、農産物の輸入に高関税を課して報復している。
◇タイ政府と民間の対応策
 タイは1月6日にペートンターン首相がタスクフォースを設置している。米通商代表部(USTR)、米議会メンバー、その他の関係者との対話に乗り出している。USTRとの正式な会談はまだ日程が決まっていないが、ウティクライ・リーウィラパン商業省次官は、さらなる議論の機会を模索していると述べている。
 商業省によると、米国による一連の関税措置の影響を受ける産業として、鉄鋼・アルミニウム、電機・自動車部品などが挙げられ、すでに25%の関税が発動されたものもある。3月12日からは鉄鋼とアルミニウムの関税が従来の0~12.5%、0~6.25%から25%に引き上げになっている。自動車・同部品も0~4.9%から25%へと関税が引き上げられている。今後さらに、半導体、医薬品、木材・木製品などでも追加関税が課される可能性がある。
 タイは米国製品に平均して11%高い関税を課していた。米国がこれと同等の関税を課すことで、年間70億~80億㌦の損失が生じると試算されている。特に半導体、薬品、木材・木製品、米、エビ、タイヤなどが影響を受ける可能性がある。
 タイ側の対応としては、米国の農産物に対する輸入関税の引き下げが検討されている。トウモロコシ、大豆、肉類、アルコール、航空機などで米国からの輸入拡大も検討している。
 タイ航空は米国からの航空機のリースまたは購入を検討中で、エネルギー省も原油、石油化学製品、天然ガス、液化天然ガス(LNG)の輸入に関する協議を行なっている。民間企業の米国への直接投資を促進する案もある。また、米国が懸念している、中国製をタイ製と偽って輸出する原産地偽装については、商業省が監視体制を強化し、49品目をリストアップして対応を進めている。さらに、外務省、商業会議所、産業界とも連携し、5月にワシントンDCで開催される「SelectUSA Investment Summit 2025」や、5月20日にバンコクで開催される「Thailand-US Trade and Investment Summit 2025」への参加を予定している。
 エネルギー分野では、タイはすでに米国から原油やLNGを大量に輸入しており、PTTグループによる長期契約(15年間で75億㌦相当)も進んでいる。アラスカでのLNG共同開発計画も始動しており、2028年の生産開始、2031年の輸出を目指している。
 外務省のエークシリ・ピンタルチット次官は、タイと米国は長年の友好関係、条約上の同盟関係を持ち、安全保障、サイバー、麻薬、国際犯罪などで協力していると強調。双方にとっての経済的利益を確保しつつ、建設的な交渉を目指していく考えを示している。
 なお、米国のスコット・ベッセント財務長官は、米国の貿易相手国に対し、トランプ大統領が発表した関税措置への対抗措置を控えるよう呼びかけた。ブルームバーグのインタビューで、報復しなければ、2日発表の関税率が最も高い数字で止まることになるとした。また他国が米国に接触し、交渉を求めている中、ベッセント氏は米政府として、当面の間、事態を静観すると述べている。
 ブルームバーグの報道によると、ベトナムは今週末にもホー・ドゥック・フォック副首相を交渉団長として派遣する予定で、ベトナム航空、ベトジェット、ヴィナキャピタルといった主要企業の幹部も同行する。ベトナムの代表団は4月7日にニューヨークで開催予定の会議に出席し、ボーイング社や複数の米銀行関係者との会談を予定している。また、副首相はワシントンDCも訪問するもよう。

◇経済界の提案と今後の戦略
 タイの経済界は政府に対し、民間企業部門への影響を緩和するための2つの方策を要請している。一つは中小企業向けの短期的支援策で、金利引き下げや資金調達の容易化などが含まれる。もう一つは、米国の関税措置の影響を打ち消す長期的な戦略としてのEUなど複数の市場との自由貿易協定(FTA)の締結を求めた。
 タイ工業連盟(FTI)のクリアンクライ・ティアンヌクン会長は、自動車や鉄鋼業界を中心とする輸出品に対する米国の関税引き上げに備え、包括的なデータと計画の準備が必要だと指摘した。
 タイ商業会議所(TCC)のポット・アラムワタナノン会頭は、トウモロコシ、大豆、水産品、ウイスキー、ワイン、エネルギー製品などで米国からの輸入を増やすよう提言している。

タイ商業会議所(TCC)=米国の関税政策への対応準備

 タイ商業会議所(TCC)は4月2日午前、シリキット国際会議場で米国の貿易政策への対応に関する記者会見を行なった。ポット・アラムワタナノン会頭[=写真]は、トランプ大統領の貿易政策は、タイと世界経済に重大な影響を及ぼすリスクがあるとし、これに備えてタイ政府が迅速に対策を講じるよう求めた。


 TCCは「トランプ関税」によって外国製品がアセアン地域、特にタイに流入し、タイの輸出競争力を脅かす恐れがあることを懸念している。TCCはこれまで、政府や米国側の関係者と緊密に連携して立場を明確にし、対応策の議論を進めてきた。この日の記者会見は米国の発表前だったが、米国が貿易赤字を抱える上位国を対象に高関税を適用することは確実な情勢で、貿易黒字額が11番目に大きいタイが対象国になることは想定済みだった。
 そこで、TCCは、米国からの農産物、食品、エネルギーの輸入拡大を提言した。米国との貿易収支を是正すれば、交渉時におけるタイの立場を強化できると指摘した。例えば、農業・食品分野では、米国からの農産品の輸入を増やせば、タイの生産性の向上にも寄与する。タイの農産物・食品は、対米貿易で1426億バーツの黒字を有し、今後も成長が見込まれる分野。飼料用トウモロコシ、大豆などの飼料作物は、タイ国内の供給が不十分で、従来は近隣諸国から輸入していたが、焼き畑による煙害などの環境問題への懸念がある。米国産をオフシーズンに輸入すれば、飼料コストも下がり、畜産物の輸出と国内供給に貢献する。冷凍サーモン、ホタテ、米国船籍のマグロなどの水産品もタイ国内の水産加工業の原料として活用できる。
 ウイスキー・ワインなどの米国産のアルコール飲料も一定の市場規模を有しており、輸入増は消費者の選択肢を広げる。家禽類の内臓はペットフード加工などに利用可能で、プレミアム製品として輸出も見込める。
 トランプ政権の関税政策は、世界のサプライチェーンに大きな変化をもたらす可能性がある。中国、韓国、日本はすでに地域経済連携を強化しており、EUもカナダとの市場開放を進めている。この流れを受け、TCCは、自由貿易協定(FTA)の締結を急ぐべきだと主張している。特に、タイ・EU間、アセアン・カナダ間FTAや地域的包括的経済連携協定(RCEP)の改定は、2025年中に合意を目指すべきだと提言した。これにより、タイのGDPは少なくとも1%、輸出は10%以上の成長が期待できるとしている。

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