2025年4月17日(木)号

LNG調達先を多様化=アラスカ開発事業に関心

 アジアにおける電力需要の増加とともに、液化天然ガス(LNG)の重要性が高まる中、タイは発電燃料の安定確保に向けた国際連携を強化している。3月下旬にはエネルギー省幹部が米アラスカ州知事と会談し、同州で進行中のLNG開発事業へのタイ資本の参画について協議した。アラスカの豊富な資源を活用するこの事業は、探査・採掘から輸出インフラ整備に至るまでを含む包括的な協力を目指すもので、タイ側は前向きな姿勢を示している。LNGを再生可能エネルギーへの移行期の「過渡的燃料」として位置づけるタイにとって、エネルギー安全保障と将来的なLNGハブ化の推進にもつながる。

ダンリービー・アラスカ州知事とウィラパット副次官


 発電燃料として使用される天然ガスは、タイ湾産が50%、ミャンマーからの輸入が10%、残りの40%は国際市場から調達している。シェルの予測によると、世界のLNG需要は2040年までに60%増加する見通しで、アジアにおける需要の拡大やAIなど先端技術の進展による電力消費の増大が背景にある。世界のLNG産出量は2030年までに1億7000万㌧増えるとされ、供給体制は当面の需要に対応可能とみられるが、新規LNG田の開発には不透明感も残る。
 3月24日、エネルギー省のウィラパット・キアッティフアンフー副次官は、タイを訪問したマイク・ダンリービー米アラスカ州知事一行を迎えた。会談にはエネルギー政策企画事務局、天然燃料局、タイ発電公団(EGAT)、国営PTT社の代表も同席した。知事はアラスカ州におけるLNG田開発事業へのタイ資本の参加を呼びかけ、トランプ大統領の対外経済方針を伝達。探査、採掘、パイプライン建設、分離・加工施設の建設・運営、アジア向け輸出インフラの整備に至る全プロセスへの参画を提案した。
 ウィラパット副次官は、同事業を「発電燃料の選択肢の一つとして注目している」と述べ、エネルギー省として前向きに検討する方針を示した。事業が実現すれば、タイのエネルギー安全保障に寄与するのみならず、LNGハブ化を推進する上でも重要な一歩となる。
 タイは、化石燃料から再生可能エネルギーを基盤とするクリーン燃料への移行を進めており、LNGはその過渡的燃料と位置付けられている。このためアラスカでの開発事業への参加は政府の重要関心事とされ、今後、両国の関係機関による具体的な協議が予定されている。
 タイは昨年、米国から原油、天然ガス、LNGなど総額30億㌦相当を輸入。さらに今後15年間にわたり、年間100万㌧のLNGを米国から輸入することで合意し、総額は75億㌦に達する見通し。また、PTT社は米国の石油化学産業に12億バーツを投資している。
 国際エネルギー機関(IEA)の年次報告書によれば、2022~23年にかけて供給危機に直面した世界のLNG市場は、2024年には構造的な安定を回復し、再び成長局面に入った。世界のLNG需要は過去最高を記録し、その伸びの75%以上は新興国と途上国によるものとされる。昨年の世界のガス需要は前年比2.7%増(1150億立米)となり、2010~19年の平均伸び率2%を上回った。2019~23年の平均伸び率1%と比較しても倍以上の伸びを示している。需要の75%は産業用途と発電用途によるもので、石油に代わる燃料としての重要性が高まっている。特に中国では、自動車用燃料として天然ガスへの転換が進展している。政府による排ガス規制の強化が背景にある。
 アラスカの豊富な天然資源の活用は、トランプ大統領が一般教書演説で示した政策の柱の一つ。米国がエネルギー安全保障における影響力を維持・拡大しつつ、国内の所得向上と雇用創出を図る狙いがある。一方、同大統領の関税政策により、タイ政府は対米貿易黒字の削減に向けた対応を検討しているが、アラスカへの投資は資本収支の均衡を図る新たな選択肢として浮上している。

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